第115話 一人で魔王城に突撃するバカ者は誰だ!?
今まさにミリちゃんが門に向かって歩き、蹴破ろうとしている!
俺は阻止しようとMPCで全力で地面を蹴り、ミリちゃんの元へ向かった!
ミリちゃんは扉の前に立って、手を伸ばした!!
あと一蹴り!!
あと僅かな所まで来た俺は、ミリちゃんを抱いて脇に逸れることを考え、手を伸ばした!!
するとミリちゃんは、何食わぬ顔でくるりと90度変え、ドアの横の方に歩いた。
「え?」
俺は絶対に扉を開けると思い込んでいたせいで、ミリちゃんの行動に気が取られてしまい、一瞬の反応が遅れてしまった。つまりそれは……。
ドォーーーーーーーン!!!!
「うわぁぁぁー」
そう、勢いよく魔王城の扉をぶち破って入った馬鹿者は、俺だったー!
しかもこの扉は思っていた以上に軽く、俺一人が城の中に入ってしまうと、再び扉はすぐに閉まった。
「やばい! 早く外に出て森に隠れないと!!」
俺はすぐに立ち上がり、扉を開けようとした。しかし!!
「あれ? 開かないだとー!!」
入る時はそんなに重い感じは無かったのに、出ようとする今はなぜかビクともしない。
しょうがない、ここはMPCを使って脱出するしかない。両手にパワーを集中させて一気に押した。
がっ! しかし!!
「あれれ? ビクともしないだとー!!」
するとその時、扉越しからミルネの声が聞こえた。
「マユリン、大丈夫? なんかこの辺りの地面がおかしいよ」
「おお、ミルネか。もしかしたら追ってが来るかもしれない。一旦隠れよ。ミリちゃん連れてさっきの森に隠れて! 俺も隠れるから!」
「分かったよ! マユリンも気を付けて!」
ここでミリちゃんに扉を壊してもらっても良かったかもしれないが、ミリちゃんが魔王城に居る事がバレると厄介な事になるから、すぐに隠れてもらった。
俺は扉側を見ながら、音で2人が離れて行くのが分かった。
さて、これからどうしたらいいものか……。
うーん、というのも、振り向かなくても後ろの状況が何となく分かってしまうから、これからどうすればいいのか分からない。
「おい!! そこで何をしている!? 貴様は誰だ!?」
多分、物音や声からして数人ってことはない。恐らく魔王軍の警備兵に包囲されているんだろう。
そりゃあ、そうだよな……。これだけ派手な事をしたら。
俺はゆっくりと振り返った。
「こ、こいつは、まさかあの時の金髪少女!?」
「まさか!? こいつはミリの討伐隊の下っ端だぞ!」
なんか酷い言われようだが、あの時の金髪少女というのが気になる。
「ミリの下っ端がここにいるなら、どっかにミリがいるんじゃないのか!?」
俺を包囲している魔王軍は、オーガのような怪物ではなく、体格は人間で狼のような顔をしている。
あまり強そうには見えないが、会話が出来る知性はあるみたいだ。
しかし、数が10体程で、時間が経つ程増えていきそうだから、これを全部相手するのは大変だ。ここは逃げて、別の所から外に出た方が得策だろう。
こいつらも魔力での戦闘になるから、魔力を使わないMPCで、意表を突いて逃げられるはずだ。
俺は有無を言わさずMPCで高速移動をして、城内の奥へと脱出した。
「なんだ!? 消えたぞ!」
「魔力も感じなかった」
予想通り、あっけなく包囲網は突破出来た。それもそのはずだ、幹部だって何も出来なかったんだから、門番の雑魚が対応出来るわけない。にしても、これで俺が城内に侵入したという情報は幹部の耳に入るのも時間の問題だ。
この先幹部に遭遇しないようにここを出ないと。
俺は城内の廊下を、慎重に端側を歩いて進んだ。この廊下も、怪物みたいなやつも通るのか、大きく作られていて、余裕で車でも通行出来そうな広さだ。
雰囲気はいかにもゲームである魔王城っていう感じだが、これもデザイン魔法が使われているんだろう。
しかし、窓があればそこから出てやろうと思ったが、全然無い。いくつか部屋のドアと別の通路だけだ。とにかく進んで早く脱出しなくては……。
そして、しばらく進んでいると、右手側に別の通路が交差する所に出ると、そこから警備兵2人が走って俺の方に向かって来た。
「見つけたぞ!」
こいつらだけだったら、追われ続けるより倒した方が早いな。
よーし! こちらから先に仕掛けてやる!
俺は敵の方に向かって走り、拳に剛性とパワーを集中させた。
でも今回は、敵に感知されたくないから、シンプルにパンチだけでいかせてもらうぜ。
「うごぉ!」
「ぎょえ!」
思った通り大した事は無かった。でも、調子に乗ってどんどん倒していったら、とんでもない怪物が出てくるかもしれないから、出来る事ならやり過ごす方がいいだろう。
そして、しばらく城内を進むと、上にいける階段を見つけた。
これだけ窓や出口を探しても見つからないなら、屋上まで行って、そこから飛び降りて、MPCで足に剛性を集中させれば着地出来る。これなら一発で脱出が可能だ。
俺は階段を駆け上がり、最上階を目指した。もちろん、途中に警備兵に遭遇することはあるが、パンチ一発で倒せるので、すべて排除した。
そして、5階ぐらい登るとこの階段でいける最上階に着いた。このまま屋上まで行ける事を期待したが、そんなに甘くは無かった。
なんか5階は、下の階に比べて空気が違うような気がする。妙に落ち着いた感じがするというか……。
それにしても、ここも広い廊下で遠くまで見通せるのに誰もいないな。気配すらしない。その方が助かるけど、ここまで静かなのはちょっと不気味だ。
ここはヤバそうだから、下に戻ろう。下手にここを彷徨ったら幹部の一人にでも遭遇するかもしれない。
俺は階段を降りようとした時、幼女のような可愛い声が俺を呼び止めた。
「待って!」
「え?」
俺はその声の方に振り返ると、そこにいたのは……。
「ま、ま、ま、魔王ー!!!?」
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