第110話 スク水姿で一緒に寝る?
ようやく、俺は拘束魔法から解放された。
2人とも妙にテンションが高く、今真面目な話をしても聞いてくれないだろうから、落ち着くまで言う通りにしておこう。
俺は2人に引っ張られる形で小屋のドアまで行き、そして、中に入った。
すると……。
「宿泊料取れそうだな」
部屋の中は結構広くて、メルヘンな雰囲気が漂わせていた。お菓子みたいなテーブルに椅子が4脚あり、この椅子の数はアルシアの分も入っているんだろう。
そして、隅っこには荷物が置いてあり、微妙なサイズのベッドが1つあった。
なぜ微妙かと言うのは、ベッドが3台あれば1人1台なんで広々と使えるが、ここに3人が寝るとなるとかなり身を寄せないと厳しい。もちろん、計算通りに設計しているのは言うまでもない。
「マユリン凄いでしょう!」
「ミリも頑張った」
うーん、褒めて欲しいのか、2人とも目をキラキラさせながら俺の反応を見ている。でもここはちゃんと言わないといけない。一応俺は討伐隊隊長なわけで……。
「うーん、凄いけど……一応俺達は討伐隊なわけだし、今もまだ任務中で……しかもここは魔王軍領域だから、あまり目立つようなことは――」
「マユリン、ミリちゃんの眼を見て話さないと」
「ヒィッ、い、いや、うん、はっはっはー、凄いよ、よく頑張りました。今晩はいい夢が見れそうだ」
またスク水姿で拘束されるのはもう御免だ。それにミルネに言われなくても、すでにミリちゃんの圧を感じ取っていたからね。
「マユリン、あそこのテーブルで夕食にしよ」
「そうだな、俺もお腹空いた」
全然着替えようとしない2人を見るとやっぱり、この恰好で食事をするのね。
俺は鞄からジュレを取り出し、テーブルに並べて行った。
しかし……。
「何か物足りないよな?」
「また塩焼きが食べたい」
そう、それなんだよな。
最近はジュレにすっかり慣れてしまっていたから、特に気にしなくなっていたけど、昨日の塩焼きを食べてしまった事で、この世界に来た頃みたいに物足りなくなってしまったようだ。
でも今から釣りは流石に面倒くさい。
「うーん、気持ちは分かるが今日はジュレだけにしよう。このジュレだって、アルシアが作ってくれたものだから、ありがたく頂こう」
「そうだね」
ここで不満を言ってしまっては、アルシアに申し訳ない。このジュレがある限り飢える事は無いからありがたく思わないと。でも、アルシアが戻って来た時には、塩焼きをご馳走したいなぁ。
きっと驚くに……いや、今頃美味しい物を食べているかもしれないな。
元気を取り戻して俺の世界を楽しんでくれたらいいんだけど。
そして、夕食も済ませていよいよ就寝の時がやって来た。もちろん、まだスク水姿だ。
「なぁ、本当にこの恰好で寝るのか? 風邪引くぞ」
「大丈夫だよ。それよりマユリン、なんかお腹がまだ満たされないよ」
「ミリも」
「うーん、それは俺も同じだ」
2人ともベッドの上で座って、寝ようとしなかった。確かに何か物足りなさはあるが、どうしようかな?
そういえば、鞄の中にまだ乾パンが残っていたはずだ。3人で分けるには物足りないかもしれないが、無いよりましだろう。
俺は鞄の中から乾パンを取って、ベッドの上に体育座りしているミルネと、布団にもたれかかっているミリちゃんに差し出した。
「これ食べるか? 少ししか残ってないが、これも俺の世界の食べ物で、乾パンというやつだ」
「何これ!? 食べる!」
「ミリも!」
ミリちゃんも珍しく、乾パン欲しさに声を上げ、2人とも貪るように食べた。
余程美味しかったんだろう。
「俺の分もやるよ」
「ありがとうマユリン! これ美味しいよ!!」
「ミリも!」
ミルネはまだ座ってるからまだいいが、ミリちゃんは布団にもたれて食べてるせいか、水着の上に乾パンの破片をボロボロと零している。慣れない食べ物だから仕方ない面もあるが、行儀悪いから注意した方がいいだろう。
「ミリちゃん、座って食べようよ。乾パンがこぼれてもったいないよ」
「じゃあ、真由ちゃんにあげる」
「へっ?」
どういう思考回路しているのか? 姿勢を注意したはずが、俺がこぼれた乾パンを欲しがっていると勘違いしたのか?
「いや、そう言う……こ……とでは……な」
段々とミリちゃんの眼が、例の『ジト目』になって行き、俺に対するプレッシャーは相当なものになって来た。いつかちゃんと“駄目なものは駄目”と言わないといけないが、今はこんな格好だし、怖いし、止めておこう……。
……。
ううっ……。
「真由ちゃん、早く」
ミリちゃんは、お腹辺りにこぼれた乾パンの破片を食べろと言ってきている。でも、それを食べるのはちょっと屈辱だぞ……。
「分かったよ……」
やっぱりミリちゃんはドSだ。
そして、いよいよ寝る時が来たが、やっぱりこの格好で寝るらしい。しかも……。
これはハーレムなのか?
俺を真ん中に挟んで抱き付くように寝ている。
スク水の独特の肌触りと、普通のパジャマに比べて露出度が多いと、なんかこう……うん、悪くないね。
って、何言ってるんだ俺!
なんとかこのスク水をやめさせないと。
この格好で、ベルリア学園に行きそうで怖い。
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