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第103話 ミルネ隊長は突き進む!

 砂埃が落ち着き、俺の周囲数メートルは斬撃で切られたような切断面になっており、逆にミリちゃんの居る側の後ろの方は、木や岩などの残骸が無残に散らかっいて、まるで土砂崩れでも起きたような状態だった。



「痛たた……一体何が起きてこうなった!?」

「マユリン、大丈夫?」

「お前はこうなることを知っていたのか!?」

「えっへん!」



 何が起きてこうなったのか分からないが、とても恐ろしい魔法だ。以前にミルネが剣で斬撃を飛ばした事があったけど、そういう類のものではない。


 でも、今ので周囲に俺たちの存在を知らせてしまったんじゃないのか?

 アルシアが前に言っていたけど、討伐隊は臨戦態勢を維持する為、出来るだけ魔力を温存して、敵に察知されないように魔法の使用は控えるだった。

 あ、あとは大きな声でツッコミを入れない……。


 全然守られてない……。



「今ので敵が周囲にいたら、一発でバレると思うけど大丈夫か?」

「大丈夫」

「ほら、ミリちゃんが大丈夫って言ってるから問題無いよ!」

「その根拠を教えてくれ~」



 もし監視されていたとしても、いきなりのこの行動にはビックリしただろうな。

 それにミリちゃんを倒そうとするなら、Sランクや幹部クラスでないと無理だから、いきなり襲ってくる事はないだろう……。やるなら計画的に来るはずだ。


 まぁ、これでキャンプ場を運営出来るぐらいの場所が出来たわけだ。



 ――こうしてこの必要以上に広くなった平地で食事を取り、一つの寝袋を広げて寝ることになった。



「せっかくこんなに広くなったんだから、寝袋を並べて寝た方が快適じゃあないかな?」

「……」

「げっ」



 俺が言った、社会通念上相当な意見に対してミリちゃんは、ジト目で俺を見つめて、不満そうな表情を浮かべた。



「い、いや、別にいいんだよ。こういうのもありかと思って、あー!!!」

「ふんっ」



 時すでに遅かった。俺はミリちゃんの取説の注意事項を守らなかったせいで、ミリちゃんの拘束魔法が発動され、手足を魔力で動けなくされ、そのまま寝袋の中へ入れられた。

 

 傍から見れば、これは誘拐の現行犯だろ!



「マユリン、それ本当好きだね」

「いや違うだろ! ミリちゃんに言ってくれ!!」

「真由ちゃん、もう一人にさせない」

「ありがとう……いや違う! やり方がおかしい!」


「あたしも今日は一杯モフモフしてあげる!」



 こうして、俺が真ん中で両側にミルネとミリちゃんが寄り添うように……いや、絡みつくようにして床に就いた。


 こんな状態で寝れるわけない!




 しかし、それでも、いつの間にか朝はやって来た。

 もしかしたら、俺は眠ったんじゃなくて、気絶してただけだったりして……。

 

 それとも、安心して爆睡してしまったのか? いやいや、それはないか。




 ――こうして、今日も明日も明後日も、ミルネ隊長が張り切って先導して、道なき道を突き進み、時々ミリちゃんが居なくなったりする事もあったが、魔物に遭遇することも、刺客が来ることも無く、平和な日々が続いた。


 そんな数日たったある日、ミルネがいつものように先導して、原生林のような深い森を突き進んでいると、そこにはとても綺麗な数百メートル規模の湖が広がっていた。


 はっきり言ってこんな所絶対通ってないぞ。



「マユリン、湖に着いたよ」

「ここが目的地みたいに言うな! どこだよここ?」

「ちょっと早いけど、今日はここで野営するよ」

「おい」



 うーん、もう迷って分からないなら、そう言ってくれればいいんだけど……。

 まぁ、実際、俺もさっぱりだから、あまりミルネを攻めることは出来ない。

 一応、ここまで無事平和にやってきているわけだし。


 ……。


 しかし、平和すぎる……。


 ちょっとぐらい魔物が出てきてもいいのだが、全然遭遇しない。しないに越したことはないが、ミリちゃんはいいとして、俺とミルネの実戦経験値が稼げない。

 ミルネなんてまだ戦った事ないのでは?


 俺の場合は、いきなりS級の魔物だったり、魔王軍幹部だったりで絶体絶命の状況ばっかりだけど、少しぐらい弱い魔物で魔法を磨きたいんだが。


 これもミリちゃんの魔力で寄ってこないせいか……。



「マユリン? どうしたの?」

「あ、いや、魔物に全然遭遇しないから、実戦経験が積めないな~っと思って」



 すると、突然ミリちゃんは両手を開いて、俺の方に手を伸ばした。



「げっ!? 何?! 気功法?」



 俺は何か打って来ると思い、とっさにミルネの後ろに身を隠した。しかし、前回みたいな事は起こらない。



「マユリン、何やっているの?」

「あ、いやミリちゃんがまた何かすると思って……」

「ふーん、今あたしを盾にしたね」

「違う! ここが一番安全だと思っただけだ」



 ミリちゃんはまだ両手をパーにして、今も伸ばしたままだ。一体何がしたいんだろう。



「マユリン、ミリちゃんは9体の魔物を倒したって。凄いね」

「はぁ?? そんな情報どこにあった? うん?」



 一見、両手をパーにしているように見えるけど、よーく観察すると右手の親指だけ閉じているな。

 俺が魔物の遭遇とか、実戦経験の話をしていたから、ミリちゃんは、自分は9体倒したよっと言いたかっただけなのか?


 という事は、時々居なくなるのは、素材探しだけじゃなくて、魔物を退治してくれていたのかな?



「ミリちゃん、そうなら口で説明してくれないと! いや、その前に倒した時に報告してくれ.....あ、何も無いです」



 ミリちゃんは両手を降ろさないまま、俺をジト目で見つめていた。

 

 これはまずい……。

 

 このままだと、ミリちゃんに理不尽に拘束魔法を掛けられてしまう。しかも、両手を降ろさないまま俺を見つめているところを考えると、何かを要求しているようにも見える。


 それは一体なんだ!? 

 早く正解を見つけないと ……。



「マユリン、ちゃんと褒めてあげないと」

「え!?」



 俺があたふたしていると、ミルネが正解を教えてくれた。 もしかして、ミルネはミリちゃんの考えている事が分かるのかな? 



「ミリちゃん偉いねー。俺の知らない所で9体の魔物を倒してくれたんだね。でも、よく気づかれなかったね。どうやったの?」



 ジト目は解除され、少し頬が緩んだように見えた。そして、片手だけを降ろしたかと思えば、もう一方の手が一瞬光ったように見えた。


 

「うん?」


 

 何か魔力が発したかと思えば、俺の後ろ側にある湖から、水柱が立ち上った。



「今、何かやりました?」



お読み頂き、ありがとうございます。


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