第102話 仕切り直し
――――場面変わって、時は遡る。
再びベルリア学園に向けて出発したいところだが、今現在何処にいるのか分からない。
安全が確認出来たら、みんなで日本にいるアルシアの見舞に行く予定だが、それすら難しいかもしれない。何しろ近くに魔王軍がいるかもしれないからな。
「アルシアに会いに行くのは、安全な所に出てからにしよう。でも、俺はここが何処か分からない。2人ともベルリア学園の場所分かるか?」
「あの小屋に戻れば、道なりに行けば着くよ」
「うーん、やっぱりそうなるか……」
「もっといい方法があるよ。ミリちゃんのテレポートで行っちゃえばいいんだよ」
「まだベルリア学園が味方になると決まったわけじゃないから、到着直後にミリちゃんの魔力が無い状態は危険だ。それにどこまで監視されているか分からないしね」
そう言えば、ネスタリア学園も討伐隊が監視活動をしているのは、敵の動向を見ているとばかり思っていたけど、それ以外に敵にテレポートさせない為でもあったんじゃないのか?
テレポートが出来るのはSランクだけだから、テレポートした時点で最高戦力を失った状態になる。それでは他の討伐隊に負けてしまうわけだ。
まぁ、テレポートが2回ぐらい出来る、チートな魔力を持っていれば話は別だろうが……
……。
うん、一人いたな! あのネトゲ廃人カリバーが。
この世界に馴染む程、あのネトゲ廃人がいかに凄いやつというのが分かる……。
う、ううん、まぁ、あいつは規格外という事で……置いておこう。規格外と言えば、ミリちゃんもそうか。
そう考えるとSランクの魔法使いの動向は、双方注視するだろう。だからミリちゃんが討伐隊として出陣した時は、魔王軍は幹部で暗殺を嗾けてくるし、ベルリア学園は敢えて戦力外の討伐隊で、探りを入れてくるわけだし。
という事でミリちゃんは、魔王軍にもベルリア学園からもマークされている。
もしかしたら、今もどこかから監視されているかもしれない。さらに言えば、ダンロッパの刺客がまた襲って来る可能性もある。
でも、ダンロッパは『太助が率いる討伐隊と合流して、ベルリア学園に行け』と言いう指示を出していたけど、あれにもやっぱり罠があるのだろうか? うん、あるだろうな。
下手すれば全員敵って事も考えられる……。
うーん、ベルリア学園が味方になることが確定するまでは、ミリちゃんのテレポートはやめておいた方がいいだろう。
「マユリン?」
「ああ、ごめん。とりあえず、来た道から小屋に戻った方が良さそうだな。でも、ここまでの道のりの記憶がほとんど無いんだな」
「ふっふっふー、しょうがないねマユリン。あたしはちゃんと分かるよ」
「そうなのか? じゃあ頼むよ」
「あたしに付いてくるといいよ」
ちょっと怪しい気もするが、ここはミルネに任せて一旦戻ろう。テレポートするかは、戻った時の状況で考えよう。
こうしてミルネが先導して、俺とミリちゃんはすぐ後ろから付いていく事になった。
出発してからミリちゃんは俺の腕を掴んで終始離さず、ミルネは先導出来て嬉しいのか、心を躍らせながら歩いていた。
なんか前より、ミリちゃんが俺に懐いているような……。
しかし、道は険しく、木々の枝を屈んで通ったり、草木をバキバキと折りながら突き進んだりと、それはジャングルを探検しているようなものだった。
「この道で合っているんだよな?」
「大丈夫だよマユリン」
というような会話のやり取りを何回もしながら、ミルネ隊長は戸惑う事も無く突き進んで行った。ある意味頼もしいが……。
そして、出発したのが遅かったのと、ジャングルみたいに深い森のせいで日差しが弱く、日が落ちるのを早く感じる。
また、この辺りは起伏が激しく斜面ばかりで、さらに、木の根っこが一体に蔓延んでいた。流石にこんな所では休めそうにない。
「マユリン、ここで野営するよ!」
「ふざけんなー!!」
とてもじゃないけど、こんな所で寝れるわけがない。
そもそも平らな所は無いし、無理やり寝袋で寝ても、根っこや石の突起物で、朝起きたら身体中痛くなるだろう。
ていうか、こんな場所通ったっけ?
「もう少しマシな所無いのか?」
「だって、ずっとこんな感じだもん」
「でも、こんな道通ったかな……」
すると、突然ミリちゃんが何も言わず、孫の手のように前に片手を差し出すと、何処からともなくセロハンテープを取り出す時のビリビリという音がした。
「え? 何?」
ミリちゃんの突然な行動は、もう何度か経験したから今更驚かないが、何をしたいのかが分からないから、成り行きを静かに見守るように茫然とするしかない。
「ふんっ」
今度は手を握り、引っ張るな動作をするとビリビリ音が消えて、瞬間的に目の前に砂埃が広がり、衝撃波が俺を襲った。
「えー!! またこのパターンかよ!」
衝撃波で吹き飛ばされたと思ったら、今度は逆に吸い込まれるように反対側に飛ばされた。
「真由ちゃん、危ない」
「痛たたた……言うのが遅せよー!!」
「マユリン、大丈夫?」
俺はこいつに何回吹き飛ばされているんだ?
砂埃が舞う中、俺は服に付いた砂埃を落として起き上がると、全貌がだんだんと見えてきた。
「なんじゃこりゃー!! 森が消えたー!!」
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