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セイラ・マイルズ子爵の一日。~侯爵令嬢様、私が子爵だからと言ってあまりバカにされない方がよろしいかと思うのですが~

作者: 山口瑛史


バシャッ!


冷たいっ!

イリーナ侯爵令嬢に飲み物をぶちまけられたらしい。

「あなたのような方、この場には相応しくありませんわ!」

侯爵令嬢は叫ぶ。そして周りを見渡して、私を退場させるように促そうとする。

あ、でも無駄かな。


飲み物が私の顔にかかり、髪とドレスを濡らす。

あーあ、喉渇いたって言うから、せっかく持ってきてあげたのにな。


まぁ、でも詰んじゃったな。私じゃなくて、この娘。この場で、こんなことしたらね・・・。

イヤミ言ったり、パシリにするくらいなら許してあげたんだけどな・・・。

私は子爵で、侯爵よりも格は下なのだけど。…まぁ私だし、相手も悪すぎたよ。



…時を戻そう…


その日は、王都で王太子主催のパーティーが開かれる。

私は、その会場へ向かう馬車に揺られていた。


この景色も久しぶりだなぁ。

王都に来るのは、何年ぶりだろう。10歳の時に子爵家に養女に入って、跡を継いでからだから・・・

6年か。長いようで早い。その間、元の家族っていって良いのかな。お父様やお母様、弟や妹達は、お忍びだったり、視察とかいって何度か来てくれたけど。私から実家に来るのは本当に久しぶり。


年をとると、年月が流れるのが早くなると言うが、私はまだ16歳。若い、とは思う。

まぁ、前世の記憶。みたいなのがあるから、精神年齢はわかんないけど・・・。


この異世界であるリーレント王国に転生したのだけど、中世ヨーロッパのような世界観のこの世界、貴族制があり、前世とは全然違う世界であったものの、貴族の身分で、赤ちゃんから開始できた。それで世界の常識や言葉の理解は、ゆっくり時間をかけてできたのは運がよかったなと思う

前世の記憶を頼りに、領地の改革を進めて、6年。改革の道半ばとは言うけれど、まぁまぁ、形になってきたかな。農地改革、商業改革、インフラ整備を進めて、最近では余裕もできて、隣の侯爵家や伯爵家の領地への支援なんかもできるようになってきた。


小娘の言うことなんかを、よく聞いてくれたと思うけど、自分で領地を歩いて、問題を見て、話を聞いて、問題点を一つずつ解決してきたのがよかったのかなと思う。領民の皆さんも少しずつだけど生活に余裕もできてきて、今じゃ「ひめさま。ひめさま」って呼んでくれて、領民達からは、それなりに慕ってくれていると思う。


最近ではね、馬にも乗れるようになった。

そういえば前世では、乗馬マシーンでダイエットしてたけど、本物はすごいね。すごくカロリー使う。それに、領地経営っていうけど、領民の皆さんと農作業や魔物退治とかで、一緒に汗をかくのよ。

おかげで、引き締まった令嬢らしくない体つきになっちゃった。でも、出るところはちゃんと出てるのよ。脱げばすごいんだから・・・。って今のところ誰にも見せんけどね。


そんなわけで、今日はコルセットも着けずに参加です。決して

「あんなモン着けるくらいなら、参加しません」

なんて言ったわけじゃないよ。あ、嘘です。めっちゃ言いました。

そのかわり、ドレスはメイド長の言うこと聞きました。紫のフリフリのドレス。

「おきれいですわ。この辺で妥協します。セイラ様は元がよろしいので・・・」

鏡をみるが、これ、あれだな、馬子にも衣装ってやつかな?括れは自前ですっ!


黒髪だし、顔つきも派手じゃない。前世の日本人っぽい顔つきではある。元が良いってのは、まぁ、精一杯のお世辞かな?


あまりにも、親に似てないから、養女に出されたのだろうか。でも、育ての親は、優しく愛情かけて育ててくれた。今でもお忍びで訪ねてくれる。


そんなことを思い出していた。馬車が止まる。あ、着いたみたい。距離はなくても馬車での移動。貴族の令嬢は歩かないものね。


「行ってらっしゃいませセイラ様。くれぐれも自重してくださいませ。」

「わかっているわ。まぁ、久々でもあるしね。」

執事のセバスさんが、会場である王家の別宅まで送ってくれた。自重ってなに?

次長なら、中間管理職ってやつ?あ、それってあなたのことじゃないの執事長セバスさん?


護衛を兼ねたの騎士隊長のリードさんにエスコートされて、どうでもよいことを考えながら、歩を進める。

「お嬢なら、護衛なんていりませんよね」

「何言ってるの。か弱い少女にむかって・・・」

「くっ、どの口が言う…って、入り口に近づいてきました。そろそろ貴族モードですね。」

「そうね。おほほほっ!」

醒めた目線を感じる…。呆れて物も言えないのか?

リードさんとは、子爵領の騎士隊長として、気心がしれている。


王太子主催のパーティー。王太子であるアルフレッド殿下の婚約者候補を集めて、婚約者選定の機会の場。それになぜか呼ばれた。


私は、まぁ、童顔であるけど、アルフレッド殿下は14歳なので、2歳年上だし、子爵家の当主だし、事情もあるので、婚約者の候補にはなりえない。まぁ、でもアルフレッド殿下も目的があって私を呼んだのだろう。私も、アルフレッド殿下には、会いたかったし。


入り口で、一人の暗めのドレスを着た令嬢が立ち尽くしている。

後ろ姿からその令嬢をみると、背は高く、女性特有の丸みもない。成長はしたが、女性としては、まだ発育途上というところかな。でも、守ってあげたいオーラがでてる。


背は、私よりも少し高いけど、かわいい少女は好きよ。お友達になれれば、退屈な夜会が少し楽しくなるかな。よし話しかけよう。

「どうなさったの?」

「あ、ね、いえ、あの招待状は頂いておりますので、参りましたものの・・・」

振り返った令嬢は、中性的な顔立ちであるものの美形である。

「入り・・にくいの?」


王家の別宅だもんね。そして大事なことだ。もう一度言う、美形である。招待されるわけだ。背も私より高く、美形である。良い。


「ええ、あ、申し遅れました。わたくし、ローラ・トンレーリと申します。」

ローラと名乗った少女は、スカートをつまみ会釈をする。

お、ちょっと、タイミング遅かったけど、貴族の作法は知っているのね。

「セイラ・マイルズです。よろしく。ってトンレーリ家?あまり聞いたことがないのだけど・・・」

婚約者候補になる公爵家や侯爵家、伯爵家の家名は、勉強させられたので覚えてし、子爵家だって大体覚えてる。あ、ということは子爵家もこのパーティーでは、底辺な訳か?

アイツ、その辺が狙いか?あ、いえ…。


「・・・男爵家ですの。」

あ、そうか、それで肩身が狭いと。

男爵家から婚約者候補というのは、滅多にない。婚約者となる王妃候補だ。くそったれな身分制度がこの世界にある。あ、なにか、不適切な言葉が出てきましたわ。私は、貴族ですの。くそったれなんて言葉、夢にも思いませんわ。ほほほほっ。


「そっか。そりゃ入りにくいよね。でも招待されたのならいかないと実家に迷惑がかかる・・・か」

「あ、その、そうです。」

「あ、ローラちゃん。敬語はいいよ。同じ立場な訳だしね」

一応この場に呼ばれた婚約者候補ってことで。

「ローラちゃ、って。でも、マイルズ子爵様に向かって・・・」


「あー、そういうの良いから。テキトーに姉さんとでも呼んでくれて良いよ。ま、パーティー会場では、気をつけないと目をつけられるか・・・」

「はい。そうなります。お姉様」

ん、お姉様。いいわ。良い響き・・・。


ローラちゃんと会場に入り、少しお話をする。

エスコートしてくれていた従者の方とはぐれて、途方にくれていたらしい。

話してみると、ローラちゃんはよく笑う、そして笑顔が可愛くて、ちょっととぼけてて、抱き締めたくなる女の子だった。


貴族令嬢だって、こんな娘ばっかだったらな。私も貴族社会で生きていけたんだろうけど。

「可愛いブローチだね。」

ローラちゃんは、何か見たことがあるブローチをしていた。私には、わかる。これ魔道具だ。しかもこれ男爵家の持ち物じゃない。このレベルの魔道具だと、侯爵家でも持っているかどうか。強い魔力を感じる。


「あ、とても大切な人に貰いましたの。」

まぁ。もしかして婚約者からかな。余計な虫が付かんようにって、お守りかな。

昔似たようなブローチを弟にあげたっけな。こんな風に大事にしてくれていると嬉しいのだけどね。


「それでね。ずっと会ってない弟がいるんだけどね!」

「弟様?どんな方ですの?」

「とってもかわいいよ。」

何故か、嬉しそうなローラちゃん。

「それで、それで?」

ん?エピソードトーク必要か?

「まだちっちゃかった時だけど、私、お昼寝してたときに、オネショしたことがあってね。」

「まぁ、そんな。」

貴族令嬢にする話じゃないか…

「弟が隣に寝てたから、弟のせいにしてやったのよ!」

「えっ、それって…。酷いですわお姉さま!」

あれ、ここで笑うとこだよ。怒らないの。

ここで笑わないと、もう笑うとこないよ!


「まぁ、お下品なこと!」

少し意地が悪そうな声とでもいうのか、聞こえるように、というか私達に言ったのか?


振り向くと、ザ貴族令嬢がいた。

金髪縦カール。若いのに厚化粧の顔、肉付きの良いと言えば聞こえが良いが、コルセットで無理やり作ったくびれに、上半身中のお肉を集めたであろう豊満な胸元。同じ様な風体の取り巻きたち。この世界の貴族の美醜の判断がわからん。


これ、関わらない方が良さそうだな。

ローラちゃんを連れて、場所を移そうとするが、別の令嬢に進路を防がれた。


ぶん殴って行くわけには…いかないか。

少し怯えてるローラちゃんを見る。

どうしようか。


「イリーナ様に挨拶しなさいな!」

取り巻きの令嬢が私達に注意する。

いや、関わりたくないんだって……。逃げるか。


「トンレーリ男爵家のローラと申します。」

あ、ローラちゃん。挨拶しちゃったか。

「セイラ・マイルズです。」

仕方ないな。スカートを掴み礼をする。


「トンレーリ男爵?マイルズ家は子爵ですわね。」

「まぁ、そんな家格の方でも、こちらにいらっしゃるのね。」

なんか上からイヤミだな。まあ、どうでもいいわ。

「では、ごきげんよう。」

この場は去ろう。

「ちょっとお待ちなさいな。わたくし、ロードスト侯爵家のイリーナと申しますわ。」

聞いてないんだけど……。

ロードスト侯爵と言えば、隣の領地だな。広さはウチの5倍くらいあるか。まぁ、格上の家柄ではある。


「あぁ、どうも」

もう良いや。早く帰りたい。

「まぁ、イリーナ様に向かって何て失礼な。」

「この場は、わたくし達のような伯爵家以上の家柄のアルフレッド殿下の婚約者候補しかいないはずですわ!」

取り巻きも伯爵家の令嬢であるらしく、プライド高いのね。

でも、アルフレッド殿下だったら平民からでも、王妃にしちゃいそうだけどね。


「あぁ、喉が乾きましたわ!」

唐突にイリーナ嬢が言う。取り巻きの令嬢が、メイドさんを呼ぶのかと思えば、

「あら、貴女方が取っていらしてよ。」

えっ、耳を疑った。子爵や男爵といっても、貴族の令嬢である。パーティーの場で給仕をさせるなんて嫌がらせ以外の何物でもない。

「えっ、なんと?」

今、この場には、貴族の格だけでいえば、侯爵が一番上。でも、なあ。

「お姉さま。私が行きます。」

ローラちゃんだけには、行かせられないよね。

「あ、良いよ。私も行くし…。」

飲み物が置いてあるテーブルに向かおうとすると令嬢の一人が、足を引っ掛けようとしてきたので、サッとかわした。蹴ったろか!と思ったら、

ローラちゃんが見事に引っ掛かる。

やばっ。


先回りしてローラちゃんを受け止める。

柔らかい女の子の感触を楽しむの……。

このコ、まだ硬いな。筋肉質っていうか……。

まだまだ、お子様ということかな?数年後に期待するしかないか。モデル体型の美しい感じになるかな。



飲み物を選びながら

「ローラちゃん。大丈夫?」

ローラちゃんは、顔色は悪くない。ん、意外と大丈夫なのか?

「私、こんな経験初めて。面白いですね。それに、お姉様に助けていただいた。」

ぽっと顔を染めたローラちゃん。

天然美少女?超プラス思考?

ちょっと見習いたいメンタルだな。


「どうぞ。」

持ってきた飲み物を、ローラちゃんと手分けして配る。

あ、しまった。ローラちゃんをイリーナ嬢の方へ行かせてしまった。ってか、自分から行った?


「イリーナ様。どうぞ。」


「ええ、それにしても貧相な体格ですわね!」

む、ローラちゃんは、まだお子様なだけですぅ。

「それに、まぁ、この場には相応しくないドレスですわね。」

そうか?暗めの配色で可愛いけどね。

「何そのブローチは?まぁ、貴女の貧相な体格にはお似合いの安物ですわね。」

何故か、その言葉にイラッとした。私が以前、弟にあげたブローチに似たデザイン。私のセンスをバカにされてる気分になった。


それに、ローラちゃんは、そのブローチをとても大切にしていた。それを貶されるなんて……。


ローラちゃんが、怒って侯爵令嬢に手を出したら大変だ。私なら…。まぁ、良いって訳じゃないんだけど。


「世間知らずのお嬢様は、物の価値を知らないと見える」

会場中響き渡るような大きな声で言った。

「なんですって!」

あ、イリーナ嬢がキレた。短気は損気ですよ。

「あなたが身に付けているモノ全部足したって、そのブローチの足元の価値にしかなりませんわ。」

これは、多分ホント。

「何を根拠に!」

あー、顔が赤くなってきたよ。怒ってるねー。

でも、私だってキレてるんだ!

「世間知らずのお嬢様には、わからないかもしれませんが、あのブローチは魔道具ですわ。しかも最高級ランクの!」

唖然とするイリーナ嬢。畳み掛けるか

「侯爵だ、伯爵だといっておられますけど、貴女方は、ただ貴族の家に生まれただけただの小娘。いえ、物の価値もわからないようじゃ、ただのクズね!」


クズは言い過ぎ?

でも、本当のことだよね。


で、冒頭の事件がおこったのね。



バシャッ!


冷たいっ!

イリーナ侯爵令嬢に飲み物をぶちまけられたらしい。

「あなたのような方、この場には相応しくありませんわ!」

侯爵令嬢は叫ぶ。そして周りを見渡して、私を退場させるように促そうとする。

あ、でも無駄かな。飲み物が私の顔にかかり、髪とドレスを濡らす。

あーあ、喉渇いたって言うから、せっかく持ってきてあげたのにな。


まぁ、でも詰んじゃったな。私じゃなくて、この娘。この場で、こんなことしたらね・・・。

イヤミ言ったり、パシリにするくらいなら許してあげたんだけどな・・・。

私は子爵で、侯爵よりも格は下なのだけど。…相手も悪すぎたかな。



ローラちゃんに促されてソファーに座る。

まぁ、あの侯爵家って、隣の領地でウチが援助してるとこだし、そろそろ反撃するか。

「お姉様。少しお待ちください。」

ローラちゃんがそういい残すと、去っていった。

タオルかなんか持ってきてくれるのかな?

魔法で乾かせるから良いのに……。


ローラちゃんが待ってと言われたから、待ってた。

「まだそんなところにいるんですの?」

イリーナ嬢。もう良いよ。それに、会場の護衛達が私を退場させない時点で、察した方が良いよ。


この場で、誰が一番かってね。


「アルフレッド殿下が参られました。」

お、やっと来た。遅いよ。


「アルフレッド様。ご機嫌麗しゅう。」

何事もなかったかのように、イリーナ嬢は、満面の笑みで、アルフレッド殿下に向かっていく。


凄いな。あんなことがあった後で……。

貴族のかがみだよアンタ!


でも、まあ、当然のように、イリーナ嬢を無視して、やっぱりこっちに来た。


「姉様。お久しぶりです。逢いたかった!」

「ええ、お久しぶりです。アルフレッド殿下。」

立ちあがり挨拶する。

「姉様。以前のようにアルって呼んでください。」

「ん、わかったわ。アル!」

久しぶりに会う弟は、すっかり大人になっていて、背も抜かれて、やはりと言うか、カッコ良くなってる。


「ねぇさま?」

「アルって」

「どういうこと」

ザワザワと青ざめる令嬢たち。

イリーナ嬢は、青ざめてフルフル震えている。


「でも、姉様。久しぶりに会ったと思ったら、また、楽しそうな感じで……。」

びしょ濡れの私を見てアルが笑う。

「ええ、まぁ、いろいろありまして。まあ、でもこの中には、貴方に相応しい人はいませんわね。」

「ははははっ。そうでしょうね。あ、姉様。話し方へんだよ。」

そうなんだ。私たちは王族だけど、特別なんだった。アルには私の転生者の知識を、物心つく前から全部与えた。だから、この世界の常識だけではなく、私の元の世界の常識も持っている。

「それを言うならアンタだって、姉様って!」

「やっぱ、変だよな。姉さんで良いよな!」


元々仲の良かった姉弟である。話は尽きない。

令嬢たちは、固まったまま。…どうしようか?


そうしているうちに、数人のおじ様達が、会場に入ってきた。

ロードスト侯爵を初めとする令嬢の親御さん達だった。


「アルフレッド殿下、ウチの娘はどうでしたか?あ、セイラ姫もいらしてたのですね。いつもありがとうございます。」


「あー、貴方の娘さんね。私の敬愛する姉に、給仕させ、暴言を吐き、挙げ句に飲み物をぶっかけていましたね!」

アルが答えて、こっち見て、片目を瞑る。ウインクはこの世界になく、私が教えた。


え、アンタ見てたの?じゃあ、早く来なさいよね。


慌てる侯爵。

「イリーナ!どういうことだ。」

「あの、その方が子爵で…、侯爵より低い身分なのに生意気で……。」

「なんという愚か者だ。身分で人を見るなと言っておろうが、それにその方は、王女様ではもうないとはいえ子爵なのだぞ!」

「王女様…。いえですから、侯爵家のわたく」

「馬鹿者。侯爵家に生まれただけのお前と子爵家の当主。どちらが力があるか、比べるまでもないであろうが!」


侯爵はこちらを向き頭を下げた。

「セイラ様。本当に申し訳ありませんでした。」

まぁ、このおじ様には、領地に赴任した頃、助けていただいたし。

「頭を上げてください。侯爵様に罪はありませんわ。でも教育の方がね。」

「申し訳ない。つい可愛くて甘やかしてしまっていたようだ。そうだ、イリーナはグレイル修道院へ送ることにする。」

あ、聞いたことある修道院。厳しい修業は、刑務所の方がずっとマシな環境らしいね。朝は4時とかに起きてお祈り。夜寝れるのは12時過ぎるらしいし。


青くなってたイリーナの顔が更に青ざめる。

「そんな、お父様。何でもいたしますので。」

「えい、うるさい。もう決めたことだ。」

他の令嬢達も、それぞれの親に怒られて、似たような感じになってる。


あ、でも、修業を修めた女性は、聖女様と崇められて、男性からモテモテらしいから、イリーナ嬢にとって良いことなのかもしれないね。

殆どが、脱走、または過労で倒れちゃうけど……。


「あ、そうだ。アル。」

「何?、姉さん。」

「紹介したい、ご令嬢がいたんだけど。」

ローラちゃんを探す。えっと、アルと同じくらいの背で、アルと同じ金髪のぉ。で、アルにあげたブローチに似た……っ!


えっ、アルの顔を見る。ローラちゃんと同じ顔してる?何で気づかなかった。


アルは、あのブローチを見せながら、いたずらな笑顔を見せる。

「やっと気づいた!ひどいよ。僕はこんなに大事にしてたのに忘れるなんて!」

「いや、あのブローチ。魔道具って、そんなわけ…。」

魔道具の効果は、アルを他の人って認識しちゃう認識阻害か。暗殺防止の効果あるやつね!


「それにさ、女装男子を男の娘って教えてくれたのも姉さんじゃん。」

「く、アルがまさか女装するなんて…。」

「ヒントも一杯あげたのにな!」


「このパーティって?」

「うん。まぁ婚約者候補の顔合わせって意味もあったけど。僕的には、姉さんへのどっきり企画。」

な、なんだと!


「それにさ。婚約者候補っていらないじゃん。」

結婚しないの?女装してBLに目覚めたの?

あ、じゃあ、私の護衛のリードさんガチだから紹介しようか。って違うか!


「何でよ。」

「だから、気づいてよ!姉さん以外考えられないって!」

そうだった。コイツ、重度のシスコンだった。

まぁ、私もブラコンだからしょうがないか。


ちょっと会わないうちに、カッコ良くなっちゃって、ドキドキしちゃうよ。あんなに可愛かったのに…。


「あ、姉さん。あのおねしょの件。ちゃんと聞かせてほしいな!」

ゲッ。ローラちゃんにそんな話しちゃってた。


パーティーは、解散。

私以上に、唖然としてるイリーナ嬢を残して、姉弟で話しながら帰路につくのだった。

今日は、久しぶりに実家(おしろ)に帰るか。



久々の家族団らんだったけど、私を子爵にしたのは、アルと結婚できるようにするためだったんだって!

で、なんか聡い私に領地与えてみたんだって!


まぁ、私のことも本当の娘だって言ってくれてるけど、この王家って、姉弟婚も前例がない訳じゃないんだって。


だから問題なしって。

いや、大有りでしょ!


でも、まぁ、カッコ良くなったアルを見ると人並みにドキドキしちゃうし、なんか幸せの予感がするのね。


「なんかさ。姉さんって、セイラさんって言うより、黒髪の日本人顔で、ミライさんって感じだよね。知らんけど。」


ん、そんな話したことあったっけ?



最後のほうは、蛇足だったとは思いますが、万が一に連載化した時の伏線になっています。


血のつながっていない弟王子との恋愛を描こうと思いましたが、少しざまぁな展開を練習してみました。


よかったら下の星の評価お願いします。いまいちでしたら、星1つでもかまいませんので。


感想などで意見書いていただけると、次回作に生かしていきます。

もし、この登場人物で他のエピソードを読みたいとか思ってくださったらお知らせください。

頑張って考えてみます。



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― 新着の感想 ―
[一言] 女装子がローラで、セイラとかミライとか……。 ちょっとプラモ屋行ってくる。
[気になる点] 女装男子王子が気になります…これ男じゃね?とは思いましたが、王子とは! どこで修行したその立ち居振る舞いと言葉遣い…と思うとwww
[一言] アルが女装しローラと名乗っていて、早着替えをしてアルとして登場したって事で良かったですか?そこまでして早く会いたかったんですね。 リアーナでしたっけ?父の侯爵は素晴らしい人柄のようですが、…
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