表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
323/596

040

(……凄いよ。本当に)


 ただただ、その一言に尽きた。


 モニターを通じて流れてくる試合の経過。

 それを見た二葉は、教え子たちの奮闘ぶりに感動していた。


「な、なかなかやるではありませんか……。まさか、こちらばかりが4人も立て続けにやられるとは……」

「さっきも言いましたよ。皆がこの前の負けをバネにしてくれたおかげです」

「い、いやぁ、それにしたってですよ……」


 選ばれた審査員達の間にも、小さくない動揺が起きていた。


 前回の不正疑惑を把握している者も、そうでない者も。

 2943側が脱落者を出すことなく、ここまで追い込むなどとは思っても見なかったのだ。


「特に、負けず嫌いの子達もいますから。少し強引なところもありましたけどね」

「あ、ああ……さっきのあれですか」


 これまで、小型の魔法陣が全く使われなかったわけではない。


 ただ、勝敗を分ける大きな一手にはならなかった。

 封魔石より威力があるとはいえ、中途半端になりかねないのだ。


「……驚きましたよ。まさか、あれほどあっさり投げ飛ばされるなんて」

「それに関しては私から謝罪します。……あまり危ないことはしないよう、彼らにもしっかり指導しておきますよ」

「いえいえ、そんな。文句などありません。ルールを破ったわけでもないんですから。驚かされはしましたが」


 まして、投げ飛ばす瞬間が映し出されるなどとは二葉以外、誰も思っていなかった。


 前回の時点で天条桐葉の身体能力は十分に評価されていた。

 野性的とも言える桐葉の動きには、大勢が驚かされた。


「むしろ、こちらももう少し基礎体力のメニューを増やした方がいいと思ったくらいです。かの人物には及ばないとしても」

「それなら、私の方は皆の全体的な底上げからですね。今回のような方法ばかりでは、いざという時が怖いですから」

「勘弁してください。これ以上強くなられてはいよいよ勝ち目がなくなってしまう」


 仮にあの状況で戦闘を続けたとしても、勝てる見込みはあったという意見さえあった。


 二葉もその意見を否定するつもりは無かった。

 他でもない桐葉本人がそれを否定することを知っていた。


 ――『あいつらを相手にそんなことをしていたら、何をされるか分からないじゃないですか』


 自身を標的とした罠。

 攻撃を受けてしまった仲間達の安全。


 威嚇はしても、倒せるまで深追いをしない――そんな風に桐葉が口にしていたからだ。


 実際、罠に関しては前回も仕掛けられていただろう。

 離脱を試みている際にも、何度か魔法が直撃しそうになったことはあった。


 なんとか乗り越えられていたものの、気を抜いていい理由にはならない。


(……皆、頑張れ。あと少しだ。無理なんてしなくていい。このままのペースで行くんだ)


 とはいえ、二葉も、このまま勝てるだろうという想定があることは確かだった。


「せめて今回だけは……なんとしても、勝たなければなりませんね」


 まして早々に脱落者が出るなど、思っても見なかったのだ。






「…………あっ??」


 何が起きたのか、分からなかった。


「……えっ…………」


 突如として聞こえてきた音を、すぐには受け入れられなかった。


(今の、え? なんで、どうして……だって、今、何も……)


 前回、自身の時も含めて3度も聞かされた音。

 いい印象を抱ける筈のない音が聞こえてきたという事実を、三凪はすぐには受け止めきれなかった。


「離れますよ!!」


 そんな中で突如として手を引かれて、抵抗などできる筈がなかった。


 手を引かれるままに走らされ、ようやく状況を理解した。

 遅れて、呑み込む間も自然と足が動いていた事実におどろいた。


(天、上……さん……)


 幸い、相手チームではなかった。


 手を引かれた時点では、それすら判別のしようがなかった。

 左腕に込められた力に三凪の全身はそのまま引っ張られてしまった。


 その時の声が、衣璃亜らしからぬものだったことなど関係ない。

 走り出したその時点で、味方か否かということに思考を巡らせる余裕がそもそもなかった。


「て、天上さん……。今の、一体……」

「分かっていて隠すようなことはしません。何が起きたのか私が教えてもらいたいくらいですよ。……今はひとまず、離れるしかありません」

「で、でも……まだ、小城くんが……」

「あのままでは私もあなたもやられるだけです。桐葉と合流するのが確実でしょう……っ」


 三凪の手を引く衣璃亜の力は、いつにもまして強かった。


 衣璃亜の腕力を三凪も正確に把握しているわけではない。

 体育の際にペアを組むことはあるが、そんな場面で全力を発揮する筈がない。


(天上、さん……)


 ただ、それでも、衣璃亜の手に普段以上の力が込められているのは、なんとなく分かった。


 普段の、令嬢のようにも思える振る舞いなど全くない。

 ただひたすらに、全力で走って逃げていた。


「これで人数はまた互角です。桐葉の側にもう誰もいないのであれば、私とあなたで三人を相手にすることになります」

「そ、それは……」


 それでも声色は、普段と変わらなかった。


 衣璃亜が何も感じていないなどとは三凪も思っていない。

 ただ、話す様子だけは普段と変わっていない。


 そのことに三凪は内心、ほっとしていた。


「正面から組み合えない以上、先程の方法で数を減らすこともできません。あの場に残るなど悪手以外の何物でもありませんよ。助けに戻るのであればなおさらです」

「わ、分かりました……っ」


 しかし追手がないというのは、不気味だった。


 宏太を撃破した手段は三凪にもまだ分からない。

 ある程度の冷静さを取り戻した今でさえ、皆目見当もつかなかった。


 2811側に新たな脱落者を知らせる音が響いてほどなく、突如として聞こえてきた。


 近くに相手の姿は確かになかった。

 三人がかりで一人を撃破した時点で、三凪達もそれだけは念入りに調べていた。


(一体、どうして……っ)


 にも拘らず、小城は脱落させられてしまった。


 誰が、どのようにして条件を達成させたのかは分からない。

 三凪の目にはそれ程までに強力な一撃が放たれた痕跡は見つけられなかった。


「厄介なものですね……。あの怪物であれば、多少力任せに突破も出来たものを……」

「そ、そう言うルールにはなってないから……」

「そのくらい分かっていますよ。……言ってみただけです」


 ただ、少しでもその場を離れるしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ