表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リヴァイバー・ゼロ  作者: 風降よさず
First Match
322/596

039

 突き出された天条桐葉の右手が、突如として光を放った。


 それを真正面から受けたから彼には、はっきり見えた。

 天条桐葉の右手から強烈な光線が放たれる瞬間が。


(今度こそ、魔法……!?)


 そして彼は、自らの目を疑うこととなった。


 攻撃魔法の使用はルールで明確に禁止されている。

 絶大な衝撃となって自らを襲ったそれを攻撃魔法でないと言い張るなど不可能だと、彼は確信していた。


 誤魔化せるようなものではない。

 それぞれに貸し与えられた測定装置は、本人が受けたダメージだけを記録するものではないのだ。


「違いますよ」


 そして、天条桐葉は――予想通りの否定の言葉を口にした。


(それはそう……。そうでなければならない……。いや、しかし……)


 その通りだと頷く一方、あり得る筈がないと否定した。


 封魔石のものとは思えない威力。

 何より、天条桐葉の右手から放たれたという事実。


 どう考えても、天条桐葉が自らの魔力を用いて魔法を放ったとしか思えない。


(違反の判定は……未だになしか)


 しかし試合を止める声は聞こえてこない。


 今の時点でそれが出されていない時点で、天条桐葉が反則を行っていないことは確定したも同然。

 本当に使っているのであれば、とっくに誰かの声が聞こえている筈だ。


(一体、どういうことだ…………?)


 そんな現状に、困惑は膨らむ一方だった。


 審判の目を潜り抜ける手段などある筈がない。

 が、正規の手段とも思えなかったのだ。


(いくら物理攻撃に及んだとはいえ……さすがにそんな、都合のいいものがあるとは……)


 ――そんなものはない。その筈だ。


 しかし記憶を呼び起こしてみても、見当たらない。

 この状況を説明できるようない代物など、ひとつもない。


「こいつです、こいつ。あなた達も使ったじゃないですか」


 ――しかし答えは、桐葉の手の中にあった。


「それは……!」

「さすが、ご存知なんですね。やっぱり、どこかで使う予定があったとか?」

「いいや、逆だ。……いま見てようやく思い出した」


 前回、2811の全員が活用した設置型。


 事前に設置する都合上、大型となるものが多い代物。

 しかし決して、大規模なものしか存在しないわけではない。


 ごく僅かだが、手のひらに収まるほど小型化されたものも――存在していた。


 小型化するため、威力はかなり抑えられている。

 巻き込める範囲も小さく、模擬戦では有効打になり得ないと却下されたものでもあった。


 天条桐葉はそれを右手に仕込んでいた。

 勢いよく突き出した瞬間、それを発動させたのだ。


「小型にした分、威力は控えめになったって聞いてましたけど……やっぱり反動は中々ですね。二度も三度も使えるものじゃなさそうです」

「……そんなことまで考えていたのか」

「そんなことって、これ一発でそちらを全員倒すなんてそれこそ無茶な話じゃないですか」


 天条桐葉がさも当然の様に言っていることが、信じられなかった。


 確かに、線状の魔法の扱いに近いものはある。

 しかし天条桐葉が身をもって味わったように、反動はかなりのものだ。


 使いで次第ではあるが、本人が衝撃で吹き飛ばされてもおかしくない。


 本人の魔法とはわけが違う。

 もし仮に思いついたとしても、普通なら誰も実行に移さないような手段だった。


「……さすがは神堂零次の教え子というわけか」

「さすがにそろそろ止めてもらえませんかね。その言い方。俺、別にあの人の付属物じゃないので」


 実際、素直な賞賛などではなかった。

 こればかりは天条桐葉の言う通りだと、認めざるを得なかった。


 神堂零次が天条桐葉を鍛えていたのはこの3月までの話。

 両者がエリア547に在籍していた頃のことだ。


 噂に聞く神堂零次が、今回の件で助言を与えるなど考えづらい。


「それに、これを思いついたのはあの人に教わったからじゃないですよ? 2943(おれたち)で決めたことです」

「………………なんだと?」


 しかし天条桐葉の答えは、予想の斜め上だった。


 あの人に鍛えてもらってなかったら受け止め切れたか怪しいのは間違いないですけど――そんな声が聞こえたが、全て右から左へと流れて行った。


(決めた? 自分達で? あんな内容を?)


 納得のいかなそうな表情を浮かべた天条桐葉の証言は、あまりに衝撃的だった。


 候補のリストなど、確認する必要のないものの筈だった。

 過去2年、2811の一員として2943との試合に望んできた。


 申請するものなど最初から決まっている。

 あとは何をどれだけ持ち込むかの相談だけでよかった。


 選択肢の中に、今回天条桐葉が用いた小型の魔法陣など存在していなかった。

 頭の中からすっかり抜け落ちていた。


「あのデカいのを使われた時の対策を話しているときに、小型のものもあるって、東雲さんが思い出してくれたんです」


 だからこそ、その言葉に、見通しの甘さを指摘されたと感じていた。


 天条桐葉におそらく、その意図はない。

 ただ、事実を突きつけられていく中で、そう感じてしまったのだ。


「それからああでもない、こうでもないって相談していく中で小城が『持って撃てるんじゃないか』って言ってくれて」


 あくまでも、桐葉は落ち着いた声色で語り続けた。


 今日という日に至るまでの出来事の一部を。

 下手に隠すこと無く、堂々と明かした。


「それから、イリアに協力してもらいながら調整したんです。少しでも実際の感覚に近付けられるように」


 そう。天条桐葉はただ、事実を提示しているに過ぎない。


 2943のメンバーたちが手を取り合い、作り上げた一手。

 失礼な想像を否定するべく、そこに至るまでの過程を明らかにしているのである。


 確かに、そこには神堂零次の存在などほとんど感じられなかった。


「だから、いい加減にその考えは改めてくださいね。そっちの先生にも言うつもりですけど」

「…………そのようだ」


 その言葉には、さすがに白旗を挙げざるを得なかった。


 目の前の下級生一人に負けたわけではないと、天条桐葉の言葉に痛感させられた。


 ――そうして、とうとう、2811側は4人目の脱落者を出すこととなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ