032
自分自身もまたその輪を成すひとつなのだと、三凪は感じた。
「……ここまで詰めりゃ、後はアドリブでどーにでもなんだろ。頼りにしてるぜ、リーダー?」
「当然。そっちこそ、本番はよろしくな?」
「ったりめーだろ。目にもの見せてやんよ」
ひと段落着いた、三凪達チームの作戦会議。
その中でのやり取りが、三凪に再認識させたのだ。
時には桐葉達の意見を補足し、内容によってはまとめ上げ――逆に、三凪の意見にそれを受けることもあった。
廃案となったものも含めれば数え切れない。
これまでも、実際にはそうだった。
桐葉も衣璃亜も宏太も、つまはじきにするようなことはしなかった。
……少しばかり、勢いを追いきれないことはあったが。
ただ、三凪にとって今回の打ち合わせはこれまでと同じものではなかった。
迷いなくそう言い切ることができた。
三凪自身が内心で驚いてしまうほど、積極的になれた。
「今の言い方、まるで天条くんに見せつけようとしてるみたい……」
「心配すんなって。2811のやつらにしかやんねーから。天条にも見せっけど」
「そ、それって……」
「どこが大丈夫なんだよ。どうみても大丈夫じゃないだろ。それ」
もっとも、絶対の勝利をもたらすプランを立てられたわけではない。
再度対峙するその日は、今この瞬間にも着実に迫っている。
2811側もこの期間を最大限に活用するだろう。
少なくとも、前回以上に仕上げてくるのは確実視されていた。
事前に設置されることはなくとも、人数で見れば圧倒的に不利と言える。
それでも、4人とも諦めの表情を浮かべてはいなかった。
勝利が確約されていない程度のことなど、別に今に始まったことではない。
これまで4人が直面した事件の全てがそう。
親睦会に際した襲撃も、“光る蝶”を追った時も。
決して4人だけというわけではなかったが、先の見えない状況など慣れっこだった。
「あなたもその分、見せつけ返せばいいだけですよ ……やられっ放しというのは、あなたもいい気はしないでしょう?」
「ナイスアイデア。それいただき」
「て、天条くんまで……」
そうした状況を打破してきたのは、桐葉だった。
自分だけではないと、彼は言うだろう。
その考えが誤りでないというのは、三凪も感じていた。
しかし、彼の存在が大きかったのもまた事実だった。
(多分、2811の人も天条くんを最優先で狙って……)
それが逆につけ入る隙になる――それが4人の結論だった。
しかし桐葉への警戒を逆手に取った作戦が通じるのは、あくまでも2811側に気付かれるまで。
桐葉を一人に追い込もうと方針転換を行うに違いない。
前回、2811側は最終的に桐葉を捉えきれなかった。
三凪達の救出と離脱を、まんまと許した。
それが今回、どのように影響するか――そこまでは、4人も読み切れなかった。
「そういうわけだから、そっちの覚悟の方も是非よろしく、ってことで」
「うげぇ……よろしくしたくねぇ〜……」
「「先にあんなことを言う方が悪い」んですよ」
「やっぱ容赦ねーなオメーら!」
「か、完璧なタイミング……」
しかし不思議と、不安はなかった。
桐葉と宏太が、普段とそう変わらないのが一つ。
何より、今なら大丈夫という気持ちが三凪の中に確かにあった。
「っつーかなんだよ、ハモらせたりしてよぉ……。息ぴったりかよ……」
「あの状況で他に何を言えと」
「桐葉の考えている事くらい分かりますよ」
「…………息ピッタリでもなんでもねーな。やっぱ」
「「失礼にも程がある(ありますよ)」」
「マジでどっちかにしてくれよ!?」
三凪を待つ間も、桐葉と宏太は射撃訓練を続けていた。
封魔石等を主として戦うルールではあるが、無駄になるものではない。
……片手間同士の命中率は、雲泥の差だったが。
三凪も何もしなかったわけではない。
桐葉と宏太にとっては日課と化している肉体的トレーニングとは別の切り口。
体力も必要ではあるが、この短期間では間に合わない。
「助けてくれ東雲ぇ〜……。俺にはもうチーム唯一の良心のオメーしか……」
「まーたそうやって東雲さんに無理やり仲裁を頼もうとして」
「一番客観的なコト言ってくれんだろ。東雲なら」
それでも、やれることはやるつもりでいた。
全てを誰かに任せてしまうなど、それこそ桐葉の言った『一方的』そのものだ。
「……その……お互い様だと思う…………」
今の時点でも、まだ解決すべき課題は残されている。
三凪個人としても、このチームとしても。
全ての問題が解消されるなどまずあり得ない。
一つを解消してもまた別の課題が浮かび上がる。
「ほらな? だから言ったろ天条。なんとかした方がいいって。マジ」
「都合のいい部分だけを拾い上げるな」
次の模擬戦でも、また新たな改善点が浮かび上がるだろう。
まだまだ、チームとしては動き出して間もない状態。
終わりなどまだまだ見えない先のことだ。
もし戦いが終わったとしても――そんな願いも、確かにあった。
「肝心な部分が聞こえていなかったようですね。……もう一度、間近で聞けば理解するかもしれませんが」
「そ、そこまでしなくても……。小城くんも、ちゃんと分かってると思うから……」
「ぐぐっ……」
今回の出来事で知れたのは桐葉の、それもほんの一部分。
チームメイトとしても、友人としても、まだまだ知らないことだらけ。
いつか、きっと、三凪自身も明かすことになるだろう。
今はまだ第一段階。
しかし、いつかは。
「そ、そんなことより! 次は勝たねーとな、絶対に!」
そのためにも、今回の2811との模擬戦を避けては通れない。
決まっていたことであるのは勿論、それ以外にも。
たとえそれがどのような結果になったとしても、だ。
「こいつ、露骨に話題を逸らしやがった……」
「そんな、誤魔化さなくていいのに……」
小城がどうして頑なに認めようとしないのか。
「んなことねーし? 言いがかりは止めろよなー」
「よくもまあそんなことを……」
桐葉が半眼をした理由も、衣璃亜が溜め息をついたのも。
「で、でも、私も……次はあんな結果にしたくないな、って……」
「……まあ、それは同意」
「当然でしょう。あんなもので納得できる筈がありません」
彼らと接していく中、少しずつ影響された――自分自身のことも。




