7 ~強敵~
スケルトンロードと対峙する鉄壁メンバだが・・・
ブンと、空を切り裂いて、剣の切っ先が目前に迫る。
ガツンと、鈍い音をたててスケルトンロードの斬撃は盾で逸らされ、その力を空しく散らす。
盾の持ち手であるギルガは、わずかに呻く。
(さすがは特級。
気を抜く余裕は与えてくれないか。)
ゴゥンと、地の底から聞こえてくるような低い響きとともに、スケルトンロードの大剣が爆ぜる。
ギルガの前方に割り込んでいたのは、ニナの逞しい背中だった。
「格上って言っても、ナイトゴーレムの時ほどじゃないね!」
敢えて軽口を叩くのは、自身を鼓舞するためだ。
大剣の切っ先が遠く離れるのを見て取ると、ギルガは一気に距離を詰め、盾ごとスケルトンロードの足に体当たりをかませる。
ガンと弾かれつつも、スケルトンロードがわずかにバランスを崩す。
「でぇいッ!」
ニナの蹴りが、スケルトンロードの膝の内側に打ち込まれる。
「いたたたたあッ!
なんて硬さだよ、コイツ!」
蹴った方の足を抱えて、ピョンピョン跳ねるニナ。
「結界の効果が薄いのか?」
「魔力の練りが足りないってことかい!」
そう言って、両の手甲を打ち合わせるニナ。
ニナの体内の魔力が急速に高まる。
紅色の揺らぎを纏いつつ、ニナの拳がスケルトンロードの剣を迎え撃つ。
ゴッとくぐもった音、飛び散る火花。
スケルトンロードの懐に潜り込んだニナの拳が一閃、きらめきを放つ。
「効いてるような、効いてないような・・・」
「余計なことは考えるな!
手数で圧倒するッ!」
蒼い揺らぎを纏ったギルガの盾が、スケルトンロードの背中を打ち付ける。
「鉄壁防御!」
リーリアの声と同時に、パーティ全員の身体が光に包まれた。
「炎熱爆砕!」
シャーナの叫びとともに、スケルトンロードを中心に、火炎が弾ける。
「にゃおうッ!」
詠唱?、そしてフィノ自身が、灼熱の砲弾となって、スケルトンロードの頭蓋を貫いてゆく。
「フィノのやつ、いいとこ持っていきやがった!」
悔しそうに地団太を踏むニナに、
「も、もう、大丈夫・・・かな?」
落ち着きなく、周囲を見回すエンゲ。
「みんな、無事か?」
リーダーらしく、仲間たちの無事を確認する、ギルガ。
「ふぅ、さすがに五人分はキツいですねぇ。」
汗を拭う仕草をする、リーリア。
「フィノ!」
シャーナの呼びかけに、フィノはふわりと右肩に降り立つ。
だが・・・
「別のスケルトンロード!?
いや、何か、違うものが・・・」
全身の毛を逆立て、シャーナの方に爪を食い込ませる、フィノ。
「まさか・・・いや、あっちが本当の召喚主?」
「みんな!とにかく防御を!」
リーリアとシャーナを背中にかばいつつ、魔力を高める、ニナ。
防御魔法はリーリアの方が専門だが、ニナの方が手は早い。
『鉄壁』と出会う前まで、正直、専門外の技を重要視していなかったニナだった。
だが、『鉄壁』メンバとともに学園で強者たちと闘い、思い知った。
得意な技は、もっとひたすらに、鍛えた方がいい。
一芸に秀でることは、自信にもなるし、他の者から頼りにもされる。
一方、不得手な技は、不得手なままでも構わないが、無理しない範囲で、更なる技術向上に努めるべきだ。
武闘試合なら、単純に強い者が勝つだろう。
だが、実戦となれば、ことはそうそう単純なものではない。
強さは有利ではあるが、絶対ではない。
剣を振らせない。
弓を引かせない。
魔法を詠唱させない。
いや、完全に封殺できずとも、十全に力を発揮させなければ、それでいい。
ニナの防御結界で確保したわずかな時間の間に、リーリアの防御結界が、新たに生成されている。
「このまま、教会に向かいます!」
すかさず、ギルガが走り出す。
その広い背中が、仲間たちを導く。
「慌てず、急いでついてきなッ!」
ギルガと、肩を並べるようにして走る、ニナ。
「二人はまだ、生きてるようだ。
でも・・・」
エンゲが言い淀む。
敵を目前に、かろうじて息をしているということと、戦える状態にあるということは、もちろん同じ意味ではない。
「大丈夫!きっと無事よ!」
「うん、きっと、そうですね!」
迷いなく断言するシャーナに、リーリアにはそう答えるしかなかった。
男前ドワーフのニナ:まさかの伏兵だったね。
天然神官のリーリア:あんな魔法、いつの間に?
毒舌魔法使いのシャーナ:そんなの、わたしだって知らないわよ。
炎猫のフィノ:にゃ~お。
ニナ、リーリア、シャーナ:(なるほど、わからん!)