6 ~骸王~
鉄壁vsスケルトン軍団。
その勝者は?
「取り付いた!」
エンゲの声が、頭上から降ってくる。
「敵の数は・・・三百とちょっと!」
スケルトンに囲まれている教会まで距離があるせいか、シャーナは、正確な数が把握できないことが不満のようだ。
「敵がどんなに多かろうと、殲滅すれば問題ない。」
マイペースを崩さないギルガだが、珍しく闘志を表に出している。
「広域滅魔魔法、術式開始します!」
いや、ギルガ以上に気合の入っている人物がいた。
普段は防御魔法や治癒魔法ばかりで、表立って戦闘には加わらないリーリアの、気迫のこもった詠唱と、演舞。
それは思わず、他のメンバーが見とれる程に。
「聖輪滅波!」
地を打ったシャーナの錫杖から、四方に衝撃波が放たれる。
ギルガたちを透過した衝撃は、しかし、その進行の途上でスケルトンたちを粉砕してゆく。
静寂が戻った時には、スケルトンは、ただの一体も残っていなかった。
あっけに取られる一行の、静寂を破ったのはニナ。
「エンゲ! 生きてるかい?」
「大丈夫だ・・・けど?」
不審げな顔をするエンゲに、
「邪な者を滅する術だから、あんたが無事なら、他のみんなは大丈夫そうだね。」
「それは・・・どういう意味だい?」
「どういうも何も・・・危ない!」
不意にニナの掌底が、エンゲの背中を打った。
「うげッ!」
つぶれた蛙のような声を出して吹っ飛んだエンゲが、つい一瞬前までいた空間を、剛剣が切り裂く。
「リーリア!
下がれ!」
ギルガの指示の前に、リーリアを背後にかばっていたのは、シャーナ。
「炎弾連撃!」
視覚では紅い閃光としか捉えられないシャーナの魔法を、剛剣が最小の動作のみで弾くのを見た時には、全員が教会に向かって走り出していた。
「あ、あれって?」
「スケルトンの親玉だよッ!」
「あれが召喚主か!」
緊迫した状況の中、納得という口調のエンゲだった。
(何ッ?)
すべてのスケルトンが粉みじんに粉砕されたその一瞬後に立ち上がったのは、巨大なスケルトンロードの姿だった。
教会の屋根とほぼ同じ背丈の骸骨に追われ、『鉄壁』パーティの一行が教会に向かって駆けてくる。
「スケルトンロードってヤツか。
あんなバケモノ相手じゃ、こんな教会なんて、守りきれないぞ!」
スケルトンロードの特徴は、上級冒険者以上の体力と魔力を有しているところにある。
下位のスケルトンでさえ、中級冒険者以上の体力、魔力を持ち、魔力強化された骨格から繰り出される剣技や弓技は、並みの冒険者では歯が立たない。
『鉄壁』一行が大量のスケルトンを一網打尽にできたのは、リーリアの光魔法で弱体化できたからだ。
体力でも魔力でも格上のスケルトンロードが相手では、いくら上級並の実力を持つあいつらでも・・・
「!?」
ニナとギルガが、足を止めた。
少し遅れて、エンゲも教会に背を向ける。
リーリアとシャーナは、そのまま走り続けている。
いや、教会にたどり着く寸前で、二人は振り返った。
「まさか・・・」
「あの子たち・・・」
ギルガが盾を掲げ、剣を構える。
ニナが、手甲の拳を互いに打ち付ける。
エンゲが、わずかに腰を屈めて長弓に矢を番える。
リーリアの周囲を、黄金の輝きが包み込む。
そしてシャーナと、フィノの周囲を紅蓮の炎が巻いてゆく。
「いや、お前らの力では・・・」
ゴドーは、もはや制止するタイミングを失したことを悟った。
天然神官のリーリア:もしかして、最初で最後の活躍かも・・・(泣)
毒舌魔法使いのシャーナ:それはない・・・かな?
天然神官のリーリア:どうせいいんです。わたしはダメな神官ですから。メソメソ
毒舌魔法使いのシャーナ:・・・うざッ。