4 ~殲滅~
戦いの中で、信頼を深め合う鉄壁一行だが・・・
「おりゃッ!」
ニナの剛拳が、飛び掛ってきたスケルトンの肋骨と背骨を粉砕して突き抜けた。
「むんッ!」
ギルガの盾の一閃で、粉みじんになりながら吹き飛ばされるスケルトン。
ほとんど駆け足の二人と、それに負けない速度で追いかける、エンゲ、シャーナ、リーリア、そしてゴドーの四名。
進路を遮る生き残りのスケルトンは前衛の二人が蹴散らし、殿をゴドーが担当している。
(前衛二人の体力はともかく、魔法担当の嬢ちゃんたちが、なかなかにタフだな。)
散発的に飛び掛ってくるスケルトンをいなしつつ、ゴドーは、前を走る二人の少女たちの足取りが乱れていないことに、いたく感心していた。
「やっぱり!数が多いと!取りこぼしも!多いねっ!」
生き残りのスケルトンを蹴散らしつつぼやくニナだが、シャーナに文句を言っているというよりは、それなりに手応えのある敵を次々と屠れるという状況を楽しんでいるらしい。
「エンゲさん!残りは?」
「七・・・いや、八体かな?」
「一体でも残すと厄介です。殲滅しましょう!」
「殲滅って、お前らなぁ。」
あきれたようなゴドーのつぶやきに、
「魔法組は、魔力を温存しておいてください。
エンゲさん、援護よろしくお願いします!」
あくまでマイペースを崩さない、ギルガ。
「一つ!二つ!残り六つ!」
ニナの拳が、豪炎を纏いつつ、二体を葬る。
「取り逃がすと、後が恐ろしいですからね。」
軽口ながら、遠方で蠢くスケルトンの仙骨を射抜く、エンゲ。
「流石はエルフの弓術だな。」
感心げなゴドーだが、エンゲに少し遅れて放った礫が、動きを止めたスケルトンの両肩を打ち砕いている。
「ゴドーさんこそ。
やっぱり、実力は特級並みって言う噂は、本当だったんですね!」
エンゲの言葉に、一瞬、虚を突かれた表情を見せたゴドーだったが、
「そう言うお前さん方こそ、なんでまた、中級で足踏みしてやがんだ?
それだけの実力があれば、上級はおろか、特級以上を目指してもおかしくないだろうに。」
最後のスケルトンを脳天唐竹割に両断したギルガが、
「これで最後ですか?」
「ああ、立ち上がってる奴はね。」
「えいッ!」
エンゲの返事と、上半身だけで地面を這いずっていたスケルトンの頭蓋を、リーリアが錫杖で叩き割るのとが、ほぼ同時だった。
「今ので、完全終了かな。」
「フィノも、掃討完了って、言ってる。」
フィノを頭の上に頂いたまま、シャーナがボソリと呟く。
「ふん。
上級冒険者一人と中級冒険者五人のパーティで、上級の魔物百体以上を、一刻も要せずに殲滅か。
悪い冗談にしか思えないな。」
「あたしらにしてみれば、長らく冒険者稼業を続けている人が、ずっと実力を隠しているっていうのも不思議だけど。」
近づいてきたニナが、パンパンと手を叩いて骨の欠片を落としている。
「ボクらの場合とは、違う理由だとは思うけどね。」
そう言って、エンゲは愛用の長弓を頭上に翳してみせる。
「まぁ、そりゃそうだ。」
ニナもまた、手甲のはまった手を突き出し、エンゲの弓に、コツンと当てる。
「実際のところ、ウチらの素の力なんて、中級の上位ってとこだしね。」
「まぁね。
その点、ボクはそんなに自惚れてないよ。」
「何言ってるのさ。
弓の腕は月並みだけど、魔法付加に関しては、ずいぶんマシになってきたじゃないか。」
「どうせ褒めてくれるのなら、褒めるだけにしておいてくれないかい?」
「愛の鞭と呼んでもらいたいね。」
そう言って、カラカラと豪快に笑うニナだった。
残念エルフのエンゲ:やっぱりニナは男前だなぁ。ホレボレ
男前ドワーフのニナ:あんたがそれを言っちゃあ、おしまいだろうに。
残念エルフのエンゲ:だって、ボクはヒロイン枠だし。別にそれで問題ないだろ?
男前ドワーフのニナ:開き直るなッ!