30 ~修復~
シャーナvsリザ戦は決着したが・・・
武闘大会六日目、魔法の部の準々決勝の第一戦は、圧倒的な力の差を見せつけ、リザがシャーナを下した。
もっとも、その闘いを目撃した観客たちは、敗者であるシャーナを見下しはしなかった。
いやむしろ、仮身とは言え、火龍リグザールを相手に、一歩も引かない姿勢を見せ付けた、シャーナの評価は高い。
何しろ、シャーナが最後に放った魔法は、武闘台の表面を溶解させ、急遽修復工事をすることになった程だから。
本来であれば準々決勝の四戦は、若干の休憩時間を挟んで連戦となる予定だったが、修復工事のため、残り二戦は午後から開始と言うことになった。
ちなみに、工事の主力は十数体を数えるゴーレム達で、その指揮を取るのは、もちろんビステテューだ。
「うわぁ、面白いねぇ。」
ゴーレムの一体の頭上に立ち、工事が進むのを眺めていたデラが声をあげる。
見た目は幼い少女だが、その魔力の欠片を発揮しただけで、その場のゴーレム達の全てを一瞬で殲滅し得ることを、イヤと言うほど思い知っているビステテューには、デラの行動を止める術はない。
「デラ!邪魔するんじゃないよ~!」
ビステテューの隣で工事を眺めていたヨンネが声をかけると、
「はぁい!」
デラの、案外に素直な返事が聞こえてくる。
デラ曰く、師匠=ヨンネには一度も勝ったことがないらしいのだが、長い付き合いにも関わらず、ヨンネの強さと言うものがまったく実感できていない、ビステテューだった。
「さっすが、ビスちゃん。
すっかり手際が良くなったねぇ。」
突貫で進められた、武闘会場の全体工事に比べれば、武闘台のみの修復なら、鼻歌交じりでも粛々と進められる。
溶けた表面を剥がし、基礎部分を補強し、表層部分を再成形、硬化処理をして完成に至る。
順調な進捗に、ヨンネは満足げな吐息を漏らした。
「ビスちゃんには、ずいぶんと無理させたわね。
武闘大会が終わったら、特別手当を奮発してもいいかな。」
「えっ?
マジすか?」
「マジよ、大マジ。
今回は、それくらいの働きをしてくれたしね。
本当なら、せっかくのこの機会に、もっと戦闘術を覚えて欲しかったんだけど、どうもあんたには、そういう資質はないようだし。」
「わたし、落ちこぼれってことですか。」
ガックリと肩を落とす、ビステテュー。
「そんなに落ち込みなさんなって。
そもそも、あんたのゴーレム抜きにして、武闘大会開催なんて、考えられなかったワケだし。」
「ホントですかぁ?」
瞬時に笑顔に変わる、ビステテュー。
「・・・あんたって、意外とメゲない子よね。」
呆れ顔のヨンネと対照に、ビステテューはと言うと、満面の笑みを浮かべている。
(あんまり、人から褒められたことないのかしら?
不憫な子・・・)
師匠から残念娘のレッテルを貼られていることなど予想だにしていないだろうビステテューが、何気なく武闘台の方に目を向け・・・
「・・・へッ?」
変な声を出したビステテューの視線を追ったヨンネもまた、
「・・・うへッ?」
二人の目前で、蠢く物たち。
武闘台修復のために懸命に動き回っているゴーレムたち・・・と言ってしまえば、特に違和感はないだろう。
しかし、ゴーレムたちはもはや、見慣れた姿をしていなかった。
いや、ある意味見慣れた姿をしていることが問題だった。
「ちょ、おま・・・」
目ざとくデラの姿を見つけたヨンネが、観覧席の床を蹴る。
残されたビステテューは、あまりの光景に、あわあわとうろたえるばかり。
「わ、わたし、あんなに胸大きくないよ・・・」
目前で、ゴロゴロと音を立ててローラーを引いているゴーレムは、紛れもない、ビステテューの姿を写し取っていた。
しかも、着衣の無い、産まれたままの姿かたちだ。
その向こうで、四つんばいになって武闘台の表面を撫で付けているのは、ヨンネの形をしたゴーレムだ。
「あはははは~!」
「こら!バカ弟子!待ちなさいったら!
あたしの胸は、そんなに小さくないぞ!」
どっちもどっちな師弟鬼ごっこは、デラのお腹すいたの合図が鳴るまで、しばし続いた。
残念エルフのヨンネ:デラ・・・恐ろしい子!
もっと残念なビステテュー:なんで片目を隠してるんですか?
天真爛漫のデラ:あ~面白かった。ぐぅすぴぴ~
もっと残念なビステテュー:相変わらず、魔法切れみたいに寝ちゃうのね。
残念エルフのヨンネ:寝顔は無害なコドモなんだがな。




