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鉄壁のギルガⅣ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
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28 ~強さ~

揃って負けたクーナとゴドーは・・・

「くっそ~。

 全然、歯が立たなかった~。」

 治療台の上で胡坐(あぐら)をかき、腕組みをしつつ、クーナは(うめ)いた。

 すぐ隣の治療台に腰掛けていたゴドーが、

「そっちはまだいいさ。

 アルフのヤツ、中途半端に手加減しやがって・・・」

 いたたた・・・と、自分の胸を押さえている。

 ゼルムンドの拳は、クーナの意識を刈り取ったものの、後に残る傷はなかったようだ。

 それは即ち、ゼルムンド側には十二分に余裕があったことを証明している。

「あと数合は打ち合えると思っていたんだがな~。」

 ぼやきつつ、無意識に爪を噛むクーナ。

 リンゴールに来てから、ほとんど消えつつあった悪癖が、ぶり返している。

「それは俺も同様だ。

 アルフめ、寸分違わず急所を突いてやがる。」

 上半身裸のゴドーが、ほとんど贅肉のない自分の胸から腹にかけて目を落とす。

 心臓、鳩尾、喉のすべてに青い痣が浮かび上がっている。

 いずれも防具で保護されていたはずだったが、アルフの高速連撃が穿(うが)った印だ。

 いや、普通に剣で突かれたのなら、ゴドーがここで息をしていられるわけがない。

 アルフは、ずいぶんと鈍らを使ったようだ。

「まったく、こっちは本気で勝負を挑んだ積もりだったんだがなぁ。」

「子供相手に、大人気ないな。」

「子供って・・・アルフは、ゼルムンド氏に勝ったことがあるらしいぞ。」

「ゼルムンド殿に?

 剣でか?」

「あの二人が、剣以外での勝負があり得るかよ。」

「それはまぁ、そうだな。」

 ふぅと、ため息をついたクーナが立ち上がり、ゴドーの隣にストンと腰を落とした。

「・・・もっと、強くなりたいな。」

 思わずつぶやいたゴドーの言葉に、

「ああ。」

 真っ直ぐに、前を見つめたまま、応えるクーナ。

 その揺らぎない瞳の力を、ゴドーはこの上もなく美しいと思った。

「ん?なんだ?」

「・・・いや、なんでもない。」

「そうか。」

 足元に目を落としたゴドーが、ふたたびクーナに顔を向けると、クーナの端正な顔立ちが、目前にあった。

「!?」

「人は、一人では強くなれない。

 何か、守るものがあるからこそ、強くなれる。」

「それは・・・」

 クーナの、蒼空(そうくう)の瞳の奥に、いったい、どんな感情が込められているのだろう?

「以前、騎士団長に言われた言葉だ。」

 何を思い出したのか、クーナはクスリと笑って、

「今思えば、あれは求婚(プロポーズ)だったのかもしれないな。」

 感慨深げなクーナの眼差しから、ゴドーは知らず目を逸らした。

「どうして、受け入れなかったんだ?」

「自信が、なかったのかもな。

 強さも、(こころざし)の高さも、人として、何もかも負けてた。

 ・・・いや、負けてると思い込んでた。」

「・・・。」

「でも、人はみな、同じじゃない。

 素質も、境遇も、努力の方法も、その結果、至る場所(ところ)も・・・」

「そうだな。

 だから強さも・・・クーナの求める強さと、俺の求める強さは違うんだろう。」

「ゴドーの求める強さとは?」

「・・・折れない、心かな?

 クーナは?」

「わたしは・・・守りたかった。

 それは、王国であり、民衆であり、騎士の仲間だった。

 でも、わたしは王国から追放された・・・」

 心の中の言葉を探るクーナを、ゴドーは静かに見守っている。

「騎士でなくなったわたしにはもう、何かを守る資格なんて、ないと思ってた。

 守るべきものを失ったわたしには、生きる意味なんてないと思った。

 でも・・・」

 自分を見返すクーナの眼差しは、ひどく優しげに、ゴドーには思えた。

「裏方に徹して、若い冒険者を補佐する貴方を見ていたら、そういう生き方もあるんだなと思った。

 仲間を失っても、立ち直り、また仲間を集め、誰かを守るために戦い続ける鉄壁のみんなを見ていたら、こんなわたしにもまだ、できることがあるような気がして・・・」

「気持ちがあれば、何だって出来るさ。

 いつでも、どこにいても。

 それに・・・」

 真剣にクーナの語りを聞いていたゴドーが、表情を緩め、

「もう、進む道は決めてるんだろう?」

「わたしって、そんなに分かりやすい顔してる?」

 顔をしかめるクーナでさえ、可愛らしいと思う、ゴドーだった。

男前ドワーフのニナ:じれったいな!そのまま押し倒しちまえよ!

残念エルフのエンゲ:クーナは、前の男が忘れられないんだね。

男前ドワーフのニナ:今はいない男よりも、目の前の男の方が大事だよ!

残念エルフのエンゲ:そういう君は、目の前の男を大事にしてるのかな?

男前ドワーフのニナ:四の五の言わず、剥いちまえ!

残念エルフのエンゲ:そんな、ご無体な・・・

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