27 ~激突~
クーナの次のお相手は・・・
圧倒的だった。
それは強大な、揺るがぬ力が具現したものに思えた。
格の違いとは、こういうものかと、クーナは改めて思い知った。
クーナの知る騎士の頂点は、王宮騎士団の元団長だ。
また、魔術師の頂点は、王宮魔術団の現団長である。
いずれも、冒険者であれば特級以上に相当すると言われていた。
様々な環境下で、雑多な種類の魔物を相手にする冒険者と、戦場で人を相手に戦う騎士団とでは、単純な強さの比較はできない。
敢えて言えば、基礎戦闘能力は騎士が勝り、状況対応力で冒険者が勝るのではないかと思う。
クーナ自身はと言うと、騎士団時代は、剣技において団長と同等との評価を得ていた。
武闘大会への参加を決めてからというもの、学園の闘技場にて、様々な相手と剣を交えてきたが、クーナと互角以上の剣技を有すると思われている者が、少なくとも二人、存在している。
一人は、前の試合でゴドーを下したアルフ。
そして今一人が、目前に立つ黒甲冑の騎士、ゼルムンドだった。
「ふむ。
良き闘気である、な。」
ゼルムンドの呟きは、率直な感情の発現だった。
幾度となく剣を交えているクーナだったが、その真っ直ぐな剣筋は、ゼルムンドにとっても好ましいものだ。
「存分に、持てる力を振るおうぞ。」
全身甲冑で表情は見えないはずなのに、高ぶる喜びが伝わってくる。
「参る!」
武闘台を蹴り、瞬時に距離を詰めるクーナ。
アルフが鍛えた剣に、常時魔力を通じること。
即ちそれは、クーナの体内に常に魔力が巡っていることを意味する。
それは同時に、剣を託されてから数ヶ月、休みなく魔法の鍛錬を続けてきたということでもある。
アルフをして、『扱いは慎重に』と言わしめた魔法剣の力は、今や完全にクーナの制御下にあった。
騎士の基本技でもある身体強化、知覚強化、耐性強化をかけるのと並行して、剣に魔力を注ぎ込む。
人の限界を超えた加速により、瞬時、景色が止まって見える。
観客のほとんどは、クーナの姿が消えたようにしか見えなかったろう。
閃光となったクーナの動きを追随できたのは・・・
「うむ。
良い踏み込みである、な。」
重量がある筈の黒い甲冑が、クーナの速度に反応し、剣戟をいなす。
「さすが、ゼルムンド殿ッ!」
剣を弾くゼルムンドの力を利用し、宙に飛ぶクーナ。
「むんッ!」
地を蹴る、ゼルムンド。
交錯する、刃と刃。
魔力を帯びた刀同士の激突は、ほぼ互角と思えた・・・が、
武闘台に、膝をついたのはクーナ。
ふわりと降り立つゼルムンドの体勢に、揺らぎはない。
「剣速、威力、精度は、まずまず。
しかし、身体がそれに対応できておらぬようである、な。」
そう語るゼルムンドの口調には、しかし弛緩はない。
「つまるところ、まだまだ鍛錬が足らぬということか。」
「剣の道に果てはなし。
我もそなたも、道半ばを歩み続ける者であることに変わりはなかろう。」
語りつつ、受けの構えを取る、ゼルムンド。
その意図に気がつき、クーナは改めて全身に魔力を巡らせてゆく。
また、同時に今度は剣の切っ先に、意識を集中してゆく。
(恐らく、今のわたしではゼルムンド殿の足元にも及ばない・・・が、それは最初から分かってたことだ。)
クーナの呼気が、無意識のうちに魔力に同調してゆく。
待ち受けるゼルムンドの思念が、それにわずかに反応する。
その刹那、先刻より一段と速さを増した踏み込みで、クーナの剣が、ゼルムンドに肉薄する。
敢えて反応を遅らせたゼルムンドの剣が、クーナの剣の刃を滑り・・・
「でぇいッ!」
「ふんッ!」
クーナの、剣を握った拳が、ゼルムンドの鎧の腹を掠め、
ゼルムンドの、剣を握った拳が、クーナの頭上に振り下ろされる。
「ぐぅッ!」
兜越しとは言え、激しい衝撃をくらったクーナの意識は、そこでプツリと途絶えた。
求道鍛冶師のアルフ:さすがゼルムンドさん。ああいう手も持ってたとは。
毒舌魔法使いのシャーナ:アルフと、どっちが強い?
求道鍛冶師のアルフ:試合ならともかく、実戦だと分からないな。
毒舌魔法使いのシャーナ:それは・・・魔力の差?
求道鍛冶師のアルフ:それも含めて、色々だよ。
毒舌魔法使いのシャーナ:ふぅん。
リーリア・ニナ:(意外とこの二人、いい感じかも。)




