26 ~剣技~
ゴドーの対戦の相手は・・・
その所作は、古馴染みであると同時に、最近も良く目にした光景だった。
略式ではあるが、正式な騎士の試合開始の儀式だ。
アルフの長剣が、天を突いて自身の眼前に翳される。
知らず、ゴドーもそれに応えていた。
(あれから、二十年以上も経ってるのか・・・)
ゴドーの脳裏に、壮年の騎士の顔が浮かんでくる。
回想に沈みかけた意識を、切り裂く殺気。
「くッ!」
仰け反るゴドーの胸元を、アルフの長剣の刃が煌めき、通り過ぎた。
遅れて叩きつけたゴドーの長剣を、アルフの長剣の鍔が受け止める。
間近で交錯する二人の視線が、静かな火花を散らした。
ほぼ同時に、二人は後方に飛び退る。
「やっぱり、剣も相当使えるんですね。」
「そう言う君こそ、かなりの鍛錬を積んだ剣筋に思えるが?」
「残念ながら、僕のは我流です。
ゴドーさんの方は、クーナさんと同じ、王宮剣技の流れを汲んでいるように思えますが・・・」
「古い話さ。」
「せっかくの機会です。
このまま、もう少しやり合いませんか?」
「そうだな。
まぁ、いいだろう。」
改めて、構えを取るゴドー。
「騎士としてのゴドーさんを想定して打ってみた剣ですが、どうですかね?」
「長さ、重さとも申し分ないが・・・」
軽く剣を振ってみせ、
「重心が、手元寄りになってるんだな。」
「打突力よりも、取り回し重視です。
もっと軽くもできますが、扱い慣れた重さに近い方がいいかなと。」
「うん、悪くないな。」
試合の直前、いきなりアルフから手渡された長剣だと言うのに、しっくりと手に馴染む。
まるで、長らく使い込んできた相棒のようだ。
(なる程、クーナが肌身離さず手元に置きたがるわけだ。)
今となっては、長剣は武具の一つでしかないゴドーとは対照に、生粋の騎士だったクーナであれば、尚更だ。
たまさか騎士との縁を得たゴドーとは違い、王国を守る剣となることを目指し、短期間ながらもそれを実現させたクーナの、武具への思い入れは深い。
自ら望むところではなかったものの、再び剣を手にすることになったクーナを、可能な限り助けていきたいと願うゴドーだった。
それ故、今まで敢えて回避してきた特級冒険者への昇格を目指しているのだ。
そのためには、武闘大会で実力を発揮しなければならない。
優勝は無理としても、できれば本戦を勝ち上がり、四傑に残ることができれば・・・
ゴドーの目前に立つアルフは、特に目立った特長もない、どこにでもいるような普通の少年だ。
だが、武闘大会本戦のこの場に立っていることが、そんな見かけの平凡を裏切っていた。
もっとも、アルフの非凡なる才能の特異の部分は、卓越した剣技などではなく、鉄壁メンバに連日提供されている武具や防具に、より強く発揮されている。
実際、目立たぬように装備されているゴドーの手甲や脚絆、帷子などは、武闘大会に先立って、アルフ手ずから渡されていたものだった。
さらに、ゴドーが普段から愛用している蛮刀やダガーは、もっと前に設えてもらったものだ。
アルフという少年を、信頼はしているが、依存はしたくないゴドーとしては、何もかも頼り切ることは避けたいところだった。
しかし、気がつけば、主な装備や武具は、ほとんどアルフが用意したものに置き換わっていた。
もっとも、アルフ曰く、『理想の防具、武具に到達する手段の一つ』なのだから、気にすることはないとのことだが、ゴドーが今まで稼いできた金貨のすべてをもってしても入手不可能と思われる業物を、こともなげに他人に預けるということの価値を、本人だけが分かっていないように思われる。
我知らず浮かんだゴドーの笑みを、アルフはどう解釈したものか。
「気に入って貰えたなら、何よりです。」
アルフの瞳に、静かな闘志がゆらめいている。
誘われるようにゴドーの剣が翻り、アルフの剣に交錯した。
数合の打ち合いの裡に、ゴドーの雑念は、武闘場の大気に霧散していった。
毒舌魔法使いのシャーナ:(アルフくん、すごい・・・)
天然神官のリーリア:(シャーナって、意外とオジン趣味だったり?)ウフフフ
男前ドワーフのニナ:(まさか、思わぬライバル出現か?)ワクワク




