24 ~石礫~
武闘大会五日目本戦の七戦目、戦うのは・・・
「そう言えば、ボクらが対峙するのは初めてだね。」
「ああ。」
普段通り、柔らかなエンゲの言葉に、ゴドーは短く応えた。
武闘大会五日目、剣術の部本戦の七戦目。
武闘台の上に対峙するのは、エンゲとゴドーだった。
「さて、ボクらも何か、勝利条件を設定しようか?」
「そうだな・・・そちらの希望はあるか?」
「う~ん。
遠距離攻撃のみとか?」
「ああ、それで構わない。」
「それじゃ、始めるよ!」
言いざま、エンゲは素早く矢を番え、
(いないッ?)
エンゲの首の後ろに、チリチリと刺激が奔る。
「くッ!」
横に転がるエンゲの視界の端に、武闘台の表面で爆ぜる石礫が捉えられる。
ほとんど勘に任せて、エンゲは愛用の長弓から矢を放った。
幻影のように揺らめき、地を滑るゴドーの気配。
実はこの時、観客からは、最初の場所から一歩も動かないゴドーと、明後日の方向に射掛けるエンゲの姿が見て取れる。
つまり、エンゲの独り相撲の様相だ。
とはいえ、ここまで五日間、様々な戦闘を見守り続けてきた観客たちは、武闘台の上に見えている景色がすべてとは思っていない。
『あれは実像なのか?』
『エルフには、何が見えているんだ?』
走り回りつつ、エンゲは気がつくと、舞台の縁近くに追い込められていた。
(逃げ道を断った?
いや、向こうも動きが限定される筈だが・・・)
そう思ったのもつかの間、エンゲを押し包むように、三方から放たれる礫。
(逃げ道は上だけか!?
いやッ!)
武闘台を蹴るエンゲ。
その身体は、武闘台の外に飛び出したが、
(見えたッ!)
やはり、ゴドーの術は効果範囲があるようだ。
武闘台の反対側の縁に跪いているゴドーの姿が一瞬見えて、すぐに消えた。
(人型に魔力を放って、感覚を惑わせているのか。)
魔力に敏感なエルフ故に、どうしても魔力の流れに過敏に反応してしまう。
その一方で、実体の方の気配を消しつつ移動すれば、エンゲには、ゴドーの姿を捉えることができない。
(一旦捉えたなら、もう、逃しはしない!)
魔力の流れを注視するのではなく、魔力も実体も同時に感知しつつ、すべて対応する。
(ボクにできるか?
いや、できなくてもやるッ!)
ゴドーの動きとは対称に、エンゲは走る。
(来る!?)
先刻の倍の数、そして速さを増した石礫が迫り来る。
(瞬間加速!)
エンゲが身につけている、無音詠唱可能な魔法の一つが、エンゲの足を加速する。
(回避したッ!)
反撃の矢を放とうとする、エンゲ。
しかし・・・
(何ッ!?)
空中で弾ける、石礫。
それを砕いたのは、後を追うように放たれたダガーだった。
「うわっ!」
何とかすべてをかわしきったエンゲの目前に、魔力を帯びたダガーの先端が煌く。
「もう少し早く、決着がつくと思っていたんだがな。」
動けないエンゲに、もはや戦意が皆無であることを見て取って、ゴドーはダガーを引いた。
「ま、参った!」
遅れて尻餅をつく、エンゲ。
戦意とともに、足腰の力が抜けてしまっている。
「ふむ。
負傷はしていないようだな。」
「そう言う君こそ、無傷って言うのは、ちょっと癪だな。」
「一応、冒険者としては先輩の俺が、そうそう無様な醜態を晒すわけにはいかないだろう?」
そう言って差し出すゴドーの手を取り、エンゲが立ち上がる。
「これでも、少しは腕を上げていると、自負してたんだけどね。」
表情も口調も、いつものエンゲに戻っている。
どんなにへこたれていても、立ち直りだけは異常に早いエンゲだった。
残念エルフのエンゲ:うん。悪くないじゃないですか。
恋する中年のゴドー:素材はいいんだから、工夫は大事だよな。
毒舌魔法使いのシャーナ:~♪
男前ドワーフのニナ:なんだよ、気に入ったんなら、怒ることないのにな。
天然神官のリーリア:いろいろ微妙な年頃なんですよ。シミジミ
エンゲ・ゴドー・ニナ:(そう言うお前もな。)




