23 ~敗北~
リーリアvsクーナ戦の結末は・・・
(!?・・・)
目が覚めた時、最初に目に入ったのは、クーナの心配げな表情だった。
気品がありながらも、親しみも感じる、すっかり見慣れたはずのクーナの顔立ちだが、今は心の中の不安が、ありありと表に出ていた。
思わず差し出した手を、クーナは優しく握ってくれた。
「・・・そうか、負けちゃったんですね。」
「そう、ガッカリしなさんな。
正直、僅差の勝負だった。
と言うか、わたしの提示していたルールでは、こちらの負けだった。」
「あっ!」
「まさか、君が体術も身に付けていたとは思わなかったな。」
「あれは・・・」
振り下ろされたクーナの必殺の剣を、リーリアの錫杖が受け流した。
その勢いを利用したリーリアの蹴りを掻い潜ったクーナの当て身が炸裂、リーリアを台上から吹き飛ばした。
しまった!と、言いたげなクーナの表情で、リーリアの記憶は途切れている。
「一撃で決着できなかったから、わたしの負けだ。
でも、結果的に君を倒してしまったので、わたしの勝ちと判定された。
準々決勝は午後からだから、今から棄権する事は可能だが・・・」
そこまで言って、ようやくクーナは、リーリアが笑みを浮かべていることに気がついた。
「クーナさんて、生真面目ですよねぇ。」
「し、しかし、自分で仕掛けたルールを、自ら破るというのは・・・」
「戦いって、流れみたいなものがあるじゃないですか。
一撃というのは、剣を一回だけ振るのと、同じ意味ではないですよね?」
「いや、しかし、わたしは・・・」
「戦ったわたしが納得してるなら、それでいいじゃないですか。
それに、たとえクーナさんの代わりに次の試合に出たとしても、まともな試合になるとは思えませんし。」
「いや、それは、やってみないと・・・」
「だいたい、予選通過できたのだって、出来すぎです。
これ以上欲張っちゃったら、きっと罰が当たりますよ。」
「ううむ。」
それでもまだ、不満顔のクーナに、
「それじゃ、こうしましょう!
クーナさんが賞金を貰ったら、鉄壁のみんなと、なんか美味しいものを、お腹いっぱい食べにいきましょう!
もちろん全部、クーナさんの奢りで。」
「そ、そんなことで納得できるのか?君は。」
「せっかく、ここまで勝ち進んで来たんです。
次を勝てば、金貨二百枚ですよ!
だったら、勝てそうな人が戦った方がいいじゃないですか!」
まるで自分が大枚を手にしたような笑顔を浮かべるリーリアに、ようやくクーナは表情を緩めた。
「わたしが出ても、必ず勝てるとは限らないが、まぁ、やれるだけのことはやってみよう。」
そう語るクーナの顔は、すでに戦士の顔だ。
「わたしが男の人だったら、ぎゅっと抱きしめてるところですよね。」
「わたしには、同性愛の趣味はないぞ!」
そう言うクーナの頬が、あからさまに紅い。
「同性愛だなんて、酷いなぁ。
でも、そういうクーナさんて、ちょっと可愛いですよね。」
「わたしは、可愛くなんてない!」
「そういうところが、可愛いって言ってるんですよ。」
「知らん!」
プイと横を向いたクーナの視線が、シャーナにぶつかった。
シャーナの、軽蔑するような眼差しが痛い。
「大人のクセに、いちいち動揺しすぎ。」
「うっ。」
「まぁまぁ、そんなに落ち込まないでくださいよ。」
ガックリとうな垂れるクーナを、リーリアが慰める。
「どっちが勝ったのか、分からない。」
追い討ちをかけるシャーナの口調は、あくまで冷酷だ。
「ふなぁお。」
不意に、クーナの肩に感じる、温かみ。
「フィノは、優しいな。」
「ふみぃ。」
「優しいフィノに免じて、今日はこのくらいで勘弁してあげる。」
「今日はと言わず、いつでも勘弁してくれないかな?」
「それは、クーナ次第。」
口調は厳しいままだが、心なしか、シャーナの表情は緩んでいるように、リーリアには思えたのだった。
天然神官のリーリア:あれ?静かだと思ったら、寝ちゃってましたね。
熱血剣士のクーナ:寝顔は、年相応に可愛いんだけどな。イジリイジリ
天然神官のリーリア:何やってるんですか?後で怒られますよ。
熱血剣士のクーナ:昔、後輩騎士の髪を、こうやって編んだものさ。
天然神官のリーリア:リボンとか付けたらどうでしょうかね。
・・・後で、シャーナにしこたま怒られたクーナとリーリアだった。




