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鉄壁のギルガⅣ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
23/34

22 ~防御~

何とか予選を勝ち抜いたリーリアの、本戦のお相手は・・・

「あー、もう、クジ運が悪すぎです!」

「そうかな?

 わたしはむしろ、当たりだと思うが。」

 リーリアの魂の叫びに、落ち着いたクーナの声が応えた。

 武闘大会五日目、剣術の部の本戦の一戦目。

 武闘台の上に対峙するのは、リーリアとクーナだ。

「そりゃ、わたしは弱いです。

 でも、それを当たりって言うのは・・・」

「うん?

 もしかして、誤解してるのかもしれないけど、わたしにとって君は、この上ない好敵手だと思っているのだがな。」

「う~ん。

 なんかそれって、嬉しいような~、嬉しくないような~。」

「さて、前置きはそのくらいにしておいて、ぼちぼち始めようか。」

 クーナが、長剣を振りかぶる。

 同時にリーリアも、錫杖(しゃくじょう)を掲げる。

 クーナの口から、静かな高速詠唱が(つむ)がれる。

 リーリアの口元は動いているが、声は聞こえない。

(無詠唱?

 ・・・いや、無声詠唱か!?)

 クーナが、後方に跳び退(すさ)る。

 それを追うように、リーリアを中心に瞬時に防御結界が展開、固定化される。

(なるほど。

 これ程の結界なら、中級程度の冒険者では、話にならんか。

 だが、こちらは一応、特級相当以上と言われているのでな。)

 クーナの長剣の表面が、白熱化する。

 リーリアの錫杖は、見た目の変化はない。

 だが、クーナの魔力感知は、錫杖を中心に魔力が集中しているのを認識している。

(錫杖まで、防御特化なのか!)

 クーナの剣技なら、リーリアの防御結界を破ること自体は、そう難しいことではないだろう。

 だが、アルフ謹製の錫杖自体に防御魔法を付加しているのであれば、その防御を突破することは難しい。

(なるほど。

 決して得意とは言えない杖術で、どうやって予選突破できたのかと思っていたのだが、そういうことか!)

 現時点ではまだ、冒険者組合職員の立場にあるクーナは、武闘会の運営要員であるため、武闘会参加者への対応に忙殺(ぼうさつ)されており、自分が参加した予選以外の試合はほとんど見ることができなかった。

 鉄壁メンバとは鍛錬を供にしていたこともあり、それぞれの能力はおおむね把握していたが、正直言って、ギリギリ予選通過できるかどうかぐらいと予測していた。

 個々の実力は上級程度ではあるが、アルフ特製の武具、防具による底上げもあり、武術の特性や魔法属性によっては、特級と言っても十分通用する可能性はある。

 そういうクーナ自身も、剣技については特級以上と自負してはいるが、むしろ未知数なのは、自身の魔力の方だった。

 騎士を辞め、剣を捨てた後は、暇さえあれば魔力を練る事を続けてきたクーナだった。

 冒険者組合の職員故に、冒険者であればどのくらいの階位に相当するのか、ざっくりとは分かるのだけれども、実際のところ、全力で魔法を行使したことがないので、いまだに実力は不明のままだ。

 騎士の頃でさえ、王宮魔術士でも互角以上の者はいなかったが、現在では、魔力総量で言えば、一階位以上は上がっていると思われる。

 ところで通常、リンゴールと同等規模の都市であれば、冒険者組合所属の冒険者は、特級パーティが一つあれば上等というところだ。

 リンゴールの場合、常駐ではないものを含め、特級パーティが複数所属している。

 武闘大会開催にあたって、特級パーティのほとんどが、リンゴールに戻ってきているらしい。

 もっとも、全員が武闘大会に出場するというわけではなくて、一般客に混じって観戦側に廻っている者も多いようだ。

 また、特級の冒険者以外にも、リンゴール近隣には強者が多数住まっており、その全員というわけではないけれども、武闘大会に参加を表明している。

 運営側のクーナは、出場者の顔ぶれを把握しており、予選を通過するためには、恐らく特級以上の能力が必要であると考えていた。

 そういう意味では、鉄壁メンバの全員が予選通過できた時点で、上級への昇級要件は満たしているだろう。

 昨日、本戦の一戦目を勝利したニナは、ほぼ昇格確実としても、問題は、攻撃力に見劣りするリーリアとギルガを、組合がどう判断するかだ。

 パーティの仲間として考えるなら、リーリアの防御力はかけがえのないものだ。

 パーティ全体を対象とした領域防御障壁と、パーティメンバ個々を対象にした個体防御障壁は、同時かつ多重展開が可能なため、後衛全体を守りつつ、前衛担当を個々に防護することが可能だ。

 もちろん、リーリア以外のメンバも自分で防御魔法を展開することは可能ではあるが、ニナのように近接戦闘主体の場合には、自分の魔力をすべて攻撃力の上乗せに使える方がありがたかった。

 その一方でリーリアを、一人の冒険者として見た場合には?

 上級冒険者の水準を遥かに超える防御力を有するリーリアだが、いわゆる攻撃魔法と呼ばれるものは、ほとんど身につけていない。

 例外は、死霊系の魔物を相手にしている場合で、アンデッドやスケルトン、デーモンと言った魔物と対峙した時には、祓魔師(ふつまし)としての本領が発揮される。

 もっとも、武闘大会では、相手はヒト族やエルフ、獣人がほとんどで、稀に知能の高い魔物が含まれているくらいだが、リーリアの攻撃が通用する相手は、ほとんどいない。

 つまり、魔法は防御のみ、錫杖に付加する魔力も防御特化・・・となると、残るは純粋な武術のみだ。

 クーナが、剣の構えを解いた。

 対するリーリアは、錫杖をかざしたままだ。

「せっかくの祭りだ。

 大会ルールに加えて、我々も新たなルールを設けよう。」

 クーナの言葉に、ようやくリーリアも錫杖を下ろした。

「これから、全力で剣技を放つ。

 こちらの一撃を受け切れれば、そちらの勝ち。

 武具が破壊されるか、手から離れれば、こちらの勝ちだ。」

「う~ん。

 でもそれって、わたしの方が、ずいぶん有利じゃありませんか?」

「特級候補と上級候補が、同じ条件で戦うってわけにはいかんだろう?」

「それもそうですね。

 わたしも、怪我したくありませんし。」

「うん?

 その言い方、防御に徹すれば、怪我すらもあり得ないと言っているように聞こえるが?」

「そ、そんなこと、一言も言ってないじゃないですか!」

「自分の力に自信を持つ事は、悪いことじゃあない。

 実際のところ、君ぐらいの魔力があれば、王宮魔術師としても、十分通用すると思っているが・・・」

「えっ?ホントですか?

 今からでも、転職を考えた方がいいですかねぇ。」

 腕を組み、考え込む仕草をするリーリア。

「誘うような事を言った手前、心苦しいが、君のように素直で心根の優しい人は、作法や格式ばかりが優先される宮廷勤めは向いていないだろうがね。」

「あれ?なんか、話が違う。

 でも、クーナさんは王宮騎士だったんですよね?」

「まぁ、田舎育ちとは言え、一応、貴族の家に生まれ育ったからな。」

「クーナさんができたんなら、わたしにだって・・・」

 リーリアの言葉に、クーナの片方の眉が、ピクリと動いた。

「さっきの言葉は、撤回した方がいいかも知れないな。」

 クーナの裡に、怒気が高まる。

「えっ?なんで?」

「問答無用!」

 クーナの足が地を蹴る。

「え~ッ?!」

 慌てて錫杖を構えるリーリアだが、その時にはすでにクーナの剣は目前にあった。

 二人の武具が交錯し、キン!と、涼しげな音色が大気に溶けた。

主役をさらうギルガ:面白い勝負ですよね。

恋する中年のゴドー:どっちが勝つと思う?

主役をさらうギルガ:余計なことをしなければクーナさんでしょうね。

恋する中年のゴドー:クーナは意外に大人気ないところがあるからなぁ。

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