表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄壁のギルガⅣ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
22/34

21 ~強敵~

本戦で一勝したニナの、次のお相手は・・・

 武闘大会三日目を終了し、『鉄壁』パーティ全員が、予選を無事通過していた。

 拳闘の部のニナ、剣術の部のクーナ、ゴドー、リーリア、エンゲ、そして魔法の部のギルガとシャーナだ。

 その翌日の午後、武闘台上にはニナの姿があった。

「さて、もう一段、賞金を上乗せできるかな?」

 武闘大会に参加するにあたって新調した・・・正確を言えばアルフが新しく準備してくれた手甲を、胸の前で打ちつけあわせる。

(さらに軽くなって、強度も向上か。

 さっすがアルフ、いい仕事してくれるねぇ。)

 『鉄壁』最年少のシャーナと同じくらいの年齢のはずだが、パーティ全員の信頼を勝ち得ているアルフだった。

 今回の武闘大会参加にあたって、『鉄壁』パーティメンバの武具や装備はすべて、新調、あるいは改造されているはずだ。

 ある程度付き合いの長いギルガやリーリアはともかく、本来であれば他人が触れることさえ忌諱(きい)するエンゲの長弓でさえ、アルフの手によって、初期の頃とは別物に仕上がっていた。

 そもそも、武器の類は持たないニナだったから、他の『鉄壁』メンバがアルフの(わざ)を語る言葉に、若干の胡散臭(うさんくさ)さを感じていたりしたのだが、『鉄壁』パーティに加わってすぐ、アルフから何気なく手渡された手甲を使い始めると、程なくアルフの手腕の異常さに気がついていた。

(何だこれ!

 おっそろしく、馴染みがいい。)

 丹念になめされた革が丁寧に縫い合わされ、ニナの動作を阻害することがないのは序の口だった。

 内部の緩衝材は少なめだが、肌の延長が防具の理想であるニナにしてみれば、それはむしろ具合が良い。

 そして何より、

(びっくりするほど、魔力が馴染む。)

 アルフが言うには、魔力を込め、使えば使うほど、使用者自身の魔力との親和性が高まるらしい。

(スケルトン戦で、完全に自分の身体の一部になった気がしてたけど・・・)

 マキネ村に向かった時点で、ニナとしては十分満足していた装備だったが、提供元のアルフは、全然納得してはいなかったらしい。

 もっとも、アルフとしては、あくまで防具を拵える練習だから・・・みたいなことを言っていたのだが、そんな上辺(うわべ)の言葉など、実際にニナが装着した手甲の仕上がり具合が、すべて弾き飛ばしていた。

(本戦の一戦目は、手甲の感触を確かめているうちに終わっちまったからな。

 二戦目は、もう少し歯ごたえがある相手だといいんだが。)

 そんなニナの願いは、十分以上にかなえられることになる。



(こいつ、できるッ!)

 見かけはアルフと変わらないくらいの年頃の、獣人の少年だ。

 ドワーフにしては長身のニナと正対しても、頭一つ分、余計に上背がある。

 だが、いかにもやんちゃな見かけに反して、その物腰は落ち着きを有していた。

 両の瞳を伏せるようにして、試合開始の合図を待っている。

(明らかに格上の相手を、どう攻略するか・・・)

 近接戦闘担当ということもあり、猪突猛進(ちょとつもうしん)の戦闘スタイルと思われがちなニナだが、存外にその思考は細やかだ。

(毛並みや顔つきからすると、虎人、あるいは派生種か。

 速さも馬力もある上に、魔力も同等か、それ以上・・・ね。)

 生き物としての基本性能は、相手から見れば歯牙にもかけぬ格差がある。

 その一方で、ニナ側が有利な点は三つ。

 アルフ謹製の装備の優秀さを、相手が知らないこと。

 相手は若年、こちらもドワーフとしては若年だが、少なくとも数倍の年齢(経験)差があるということ。

 女性が相手と言うことで、無意識に手加減してくれるかもしれないこと。

 もっとも・・・

(獣人の血がいくばくか混ざっているとは言っても、基本はドワーフ族だからね。

 変わり者のエンゲじゃあるまいし、三の線は期待できないか。)

 エンゲの端正な顔立ちを思い浮かべていたら、何だか腹が立ってきた。

(別行動すると分かったら、妙にウキウキ顔になりやがって・・・)

 少しは寂しげな表情をしてくれたら、可愛げがあるのだが。

 そんな感傷も一瞬で、ニナは戦う女の顔つきに変化した。

 厳しい戦いの予感が、ニナの魂を貫く。

 我知らず獰猛(どうもう)な笑みを浮かべ、ニナは(はし)る。



「いやぁ、完全に負けた負けた。」

 金貨入り皮袋を(もてあそ)びながらニナの口調は、口惜しさとは無縁のものだった。

「相手のリーズド君と言うのは、ファングの従兄弟(いとこ)なんだって?」

 酒盃(しゅはい)を傾けつつ、尋ねるゴドー。

「ああ。

 元々の素質は、俺なんかよりずっと上の筈なんだが、とにかくやる気のない奴でな。

 叔父貴殿(おじきどの)も、ずいぶんと心配していた。」

 応えたのは、つい先刻までニナと戦っていたリーズトと似た姿の、獣人の若者だ。

 ファンゲルドという名のその青年とは学園の闘技場で出会い、幾度となくニナは組み手の相手をしてもらっていた。

「ふむ。

 そうすると、そのやる気なし君をその気にさせた、何かがあったということか。」

「何か・・・人か?経験か?

 優秀な師匠に出会ったのは、確かなようだけどね。」

 ニナが、自分の拳に目を落とす。

 拳闘とは、拳と拳で語り合うこと。

 リーズドとの一戦で、ニナは確かに、リーズドの決意を感じ取った。

 もっと、強くなりたい。

 いや、正しく語るなら、強くなろうとすることを()めない。

 ニナから見たリーズドは、素質は上、現時点での戦闘能力は格上以上。

 今から追いかけても、追いつくことは決して構わないのかもしれない。

 だがそれは、ニナにとって、追いかけないことの理由にはならなかった。

(リーズド君の熱気が、こっちにも伝染したみたいだ。)

 元々ニナは、強さに対する執着はさほど強くなかった。

 冒険者になったのは、生まれに縛られず、自由に世界を歩きたいがためだった。

 だから、他者の評価には無頓着に、長らく気楽な初級冒険者のままでいたのだ。

 転機は、エンゲとの再会。

 守り、守られるために、ニナは強さを欲した。

(もう、大事なものを失くすのは、イヤだからね・・・)

 握り締めた自分の拳を見つめる瞳には、強い光が宿っていた。

純情獣人のリーズド:兄貴、強さってなんだろう?

従兄弟のファンゲルド:強くなれば、分かると思うよ(知らないよ、そんなもの)。

純情獣人のリーズド:さすが兄貴、深いぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ