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鉄壁のギルガⅣ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
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18 ~騎士~

鍛錬に励むゴドーとクーナだが・・・

 騎士と冒険者、どちらが強いか?

 太古より、その(たぐい)の議論が無数に続けられてきたものの、いまだに完全な結論は得られていない。

 騎士は、こと対人戦において、無類の強さを発揮する。

 その中でも、特に精鋭たる王宮騎士ともなれば、たとえ数騎であっても、合戦の結末さえも左右すると言われている。

 所属する国家や、冒険者組合の規模により幾分の差異はあるものの、辺境の領地に所属する騎士が、おおむね中級冒険者相当と評価されている。

 王宮騎士であれば、上級冒険者と同等、さらに、王宮騎士筆頭ともなれば、特級冒険者と同等以上の実力があるというのが、世間一般の評判だ。

 上級冒険者たちとの組み手において、苦もなく相手を翻弄(ほんろう)するクーナ。

 その姿を見つめるゴドーの眼差しは、知らず彼女の実力を計る度合いが強まってゆく。

「・・・ふぅ。

 いい汗かいた。」

 歩み寄り、ゴドーの隣の椅子に無造作に腰を下ろしたクーナの、上気した顔がひどく魅惑的だ。

「そうかな?

 物足りなさそうな顔をしているが。」

「そう見える?

 まぁ、無手で魔力抜きなら、こんなものよ。」

 そう言って、革製の籠手(こて)の具合を確かめるクーナ。

「拳闘部門でも、そこそこやれそうだがな。

 二部門掛け持ち出場でも、問題はなかったはずだ。」

「そうね・・・

 うん、それもいいかも・・・と、言いたいところだけど、残念ながら、まだ組合の職員という立場としては、掛け持ちって言うのは、ちょっと無理だと思う。

 せっかくのお祭りだもの、とことん楽しみ尽くしたいところだけど。」

 クーナの飾らない笑顔が、素晴らしく眩しく感じたゴドーだった。

 心を奪われたあまり、返す言葉を失ったゴドーに気がついているのかいないのか、

「・・・あら、アルフくんが来たわ。」

 クーナの視線を追うゴドーに、アルフは目礼を返すと、

「遅くなってすいません。

 ついさっき仕上がったので、持ってきました。」

 そう言ってクーナに差し出したのは、先のデーモン戦でクーナの所有となった長剣だった。

 さらに、

「今回は使わないと思いますが、長槍もいくつか用意してみました。

 長さはこれから調整していきましょう。」

 全長の異なる槍を三本、クーナの足元に横たえる。

「これは・・・」

 鞘に収められている長剣を椅子の上に置き、クーナはもっとも長さのある槍を手に取った。

 ゴドー達から距離を取り、くるくると槍を回し始めるクーナの姿を眺めつつ、

「やっぱり、長めの方がお好みのようですね。

 クーナさんぐらいの地力があるなら、それで問題ないとは思いますが。」

 そう言って、アルフは残りの二本のうち、短い方を手にして、

「せっかくなので、少し打ち合ってみますか?」

 ひとしきり槍を振り回していたクーナが、槍を携えつつ近づくアルフを見て取ると、ほぅと感嘆の表情を浮かべた。

「アルフくん、あなた、槍もなかなかできるようね。」

「一応、主だった武具は、一通り(かじ)ってますが・・・」

「それで齧ってる程度って言うなら、たいがいの騎士は、お役御免よねッ!」

 クーナの長槍の先端が、グンと加速してアルフの眉間を狙い、しかしそれはアルフの長槍に逸らされる。

 達者の長槍は、生き物のように振舞うと言うが、まさしくクーナの槍はそれ自身が意思を持つが如くアルフを狙い、しかしそのすべてがアルフの槍によって阻止される。

 いや、阻止するだけでなく、間段なく繰り出される槍頭の隙を縫って、アルフの槍撃が放たれている。

 手数のクーナに対して、一撃必殺のアルフという印象だ。

 もっとも、フェイント織り交ぜて手数に勝るクーナの攻撃はすべてアルフにいなされているし、手数では及ばないが確実に急所を狙ってくるアルフの突きは、ことごとくクーナに見切られている。

 いつしか二人の周囲には学園生や冒険者、さらには学園の教師までもが見学という様相だ。

「クーナさん、とられちゃいましたね。」

 二人の闘いに集中していたゴドーは、背後からかけられたリーリアの声に、ハッとして振り返る。

「さすがに、元騎士だけあって、お二方の槍術は見ごたえがありますね。」

 落ち着いた、柔らかな声音はギルガのものだ。

 武闘大会への出場のため、『鉄壁』パーティとしては組合からの依頼案件対応は休止しているものの、他のパーティからの応援要請には対応しているギルガとリーリアだった。

 そもそも、『鉄壁』パーティはこの二人で始めたものだったから、応援主体という方針も含め、原点に帰ったと言っていい。

「他の連中は、どうしてるんだ?」

「シャーナは、デラさんに連れて行かれてしまいました。

 ニナさんとエンゲさんは、それぞれ別行動のようです。」

「別行動?

 あの二人が?」

 不倶戴天(ふぐたいてん)の種族同士にも関わらず、ちょくちょく仲睦まじい姿を見せ付ける二人だ。

「元から別々に活動してましたからね。

 それに、何か思うところがあったようですし。」

 ギルガの脳裏に、エンゲの、素晴らしくご機嫌な笑みが思い出される。

 エンゲの、ニナに対する想いは疑うところはないけれども、だからと言って自分のすべてを捧げ尽くす気持ちはさらさらないらしい。

 もっとも、ヒト族の十倍とも、百倍とも言われているエルフ族の一員たるエンゲにしてみれば、武闘大会まで半年にも満たない間、ニナと一緒にいられないことなど取るに足らないことなのかもしれないが。

「皆さんが、何を得て戻ってくるのか、とても楽しみですね。」

「ああ、そうだな。」

 他意のないギルガの笑みに、ゴドーは素直に頷いていた。

天然神官のリーリア:投げやりな槍投げ。ボソッ

恋する中年のゴドー:何か言ったか?

熱血剣士のクーナ:うっ、ぷぷぷッ。

恋する中年のゴドー:(・・・ツボったのか。)

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