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鉄壁のギルガⅣ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
16/34

15 ~落下~

武闘大会出場のため、各自鍛錬を開始する鉄壁パーティ一行だが・・・

全部で十五回連載の予定でしたが、三十三回に変更します。

「いやぁああああああああああッ!」

 十数年の人生の中で、こんなに喉を酷使した記憶のない、シャーナだった。

 恐ろしい速度で、雲が後方に流れてゆく。

 ゴーゴーという風切り音が、耳孔(じこう)内を荒れ狂う。

 手がかりになる物をまさぐる腕は空を切り。

 踏みしめる大地を求める脚は、(むな)しく大気を掻き分ける。

 心臓はバクバクと脈打ち、頭の中が真っ白になっている。

 とめどなく噴き出す涙で、前も良く見えていない。

 狭窄(きょうさく)し、グルグルと廻る視界の端を、二つの影が過ぎってゆく。

 理性はそれが、デラとジジの名を持つ者と認識していたが、感情がそれを受け付けない。

 なぜなら・・・

「う~む。()せぬ。

 なぜに、さかしまになるのだろう?」

 頭を下に、空中で胡坐(あぐら)をかきつつ、落ちてゆくデラ。

 もう一方のジジはと言うと、両手を広げ、まるで羽毛布団の上に寝そべっているかのように、穏やかな表情を浮かべている。

 涙と鼻水と(よだれ)を盛大に撒き散らしながら、キリキリ舞いをしているシャーナ。

 そして、幼き者たちが、急速に大地に向かって落ちてゆくのを遥か上空から見守る、優しい瞳。

(もうダメ。

 わたし、ここで死ぬんだ。)

 シャーナの脳裏に、懐かしい光景が浮かんでは消える。

(これって、もしかして走馬灯(そうまとう)・・・)

 輝く天使が、シャーナに向かって、そっと手を差し延べてきて・・・

「うわーっ!

 すごい顔だねぇ。」

 人懐(ひとなつ)っこい笑みを浮かべた天使が、シャーナの両手をしっかり掴む。

 クルクル廻っていたシャーナの姿勢は安定し、広大な大地が視界の半分を占めていることに今さら気づく。

「防御魔法で、身体の廻りに薄い空気の膜をつくるんだよ!」

 天使=デラがそう言うと、不意に呼吸が楽になった。

 暴力的だった空気の流れが、今はそよ風の如く、シャーナを優しく包み込んでいる。

「これは、デラの力?」

「ううん、シャーナを守っているのは、自分自身の魔力だよ!」

 確かに、言われてみれば、自分の身体から放たれた魔力が、シャーナの周囲を緩やかに巡っている。

「もう、自分で操作できるはずだよ!」

 デラの手が離れても、魔力の流れは変わらない。

 自分の思惑(おもわく)通り、魔力が働いていることが感じられる。

 今までも防御魔法は使っていたが、魔力の制御の細やかさや出力が段違いだ。

 その上、体表に触れながら魔力が循環しているため、維持のための魔力は極小で済むのがありがたい。

 冷静に状況把握できるようになった一方で、すごい勢いで地面が近づいてくるのが目に入る。

「どうやって、地面に下りるの?」

 尋ねるシャーナに、デラは邪気のない微笑を返し、

「このまま、ドーンって!」

「・・・えっ?」

「大丈夫。

 えっと、まずは『身体強化』、それに『身体強化』を重ね掛けして・・・」

「え、いや、そうじゃなくて・・・」

「急がないと、間に合わなくなるよ!」

 デラがそう言う間に、低い雲を一瞬で突き抜けた。

「『身体強化』って、どうすればいいの?」

「あ、もう、間に合わないかな?」

「え?う、ウソでしょ?」

「ウソなんかついてないよ!

 ほら、馬が美味しそうに草を食べてるのが見えるよ!」

「あ、あ、あ、いやぁああああああああああああッ!」

 シャーナの悲鳴が、ドーンという、地面が爆発するような音に呑み込まれた。

天真爛漫のデラ:すんごい顔だったね~。

毒舌魔法使いのシャーナ:・・・・・・

天真爛漫のデラ:空飛ぶのって、気持ちいいよね。

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