最悪の連鎖
最悪は連鎖するものか。
俺は退院して初日で思い知らされた。
先ず、授業の進度に追いつけない。
これはリューザスにノートを借りる事でどうにかした。
次に視線。
どうやら噂では俺がチンピラに喧嘩を吹っかけて自爆したところを白馬の王子よろしくセルファが喧嘩を諌めたとか何とか。
ふざけるな。
また俺が悪いのかよ。
またセルファかよ…クソ。
そのせいで俺はリューザスとセルファ以外近づく同級生はいなくなった。
リューザスもその煽りを受けているようで心苦しい。
最後に、セルファが俺を勝手にナイツ・ゲーム部に入れていたのだ。
体験から僅かに三日間が入部届けの受け付け期間だから二週間の病院生活では帰宅部に直行するはずだった。
なのにセルファが本人の意思を汲むとの事で入部届けを代筆したのだ。
クソ。
俺、そんなに許されないのか?
朝練は必ずサボり部活にも最低限顔を出す程度のルーチンワークをこなす。
視界にはセルファ、セルファセルファ。
勘弁して欲しかった。
◆◆◆
「対戦相手が見つかったんよ」
メギア先輩が告げた。
ナイツ・ゲーム部は生徒の自主性を重んじる為、夏季の大会に必ず出場する事を除けば基本自由だ。その中でも対戦相手を見つける、と言うのがどれほど困難な事かは言わずども分かる。
…まぁ、地元のクラブチームやらは沢山あるが。
ナイツ・ゲームの競技人口は魔物と戦う訓練も兼ねる為異様に高い。
もしかしたら身内を引き込んだのかもしれない。
メギア先輩がミーティングを行う。
リューザスはメモを取り、セルファは目を輝かせながら一言一句聞き逃すまいと聞いている。
俺はドロドロとした目でそっぽを向く。
「ほいじゃ、ミーティングは終わりやけど…アスレイ、話聞いとったか」
「…はい」
「んじゃ質問。今回あんたはどこのポジションやるか言うてみ」
「……ベンチスタートのサブセイバーです」
「陣形は?」
「セルファと先輩のツートップ。後方にリューザスです」
「十分や。アスレイは心情的に難しいやろうけど朝練も来てや」
「善処します」
◆◆◆
翌日。朝から防具をつけてグラウンドを走った。
…簡単過ぎる。
ずっと前からもっと長い距離を防具と重りで鍛えて来た。
全てはセルファに追いつく為に。
「気分は、晴れないか?」
「リューザスか。…まぁな」
隣で走るリューザスに声をかけられる。
「…リューザスお前結構鍛えてたんだな」
「お前こそ」
フッと微かに笑う。
「二人とも早いね」
一周先回りしているのは…セルファ。
何だか意味合いに「二人とも(僕には劣るけど)早いね」というのが隠れてはいまいかと邪推してしまう。
「試合、勝てるかな」
「…勝てたらいいな」
「そうだな」
こうしてー試合の日がやって来る。