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三つの敗因

勝てないと知っていた。


「じゃねえ…」


勝てないと分かっていた。


「じゃねえ」


勝てないと諦めていた?

バカな。

俺は諦めがつかなくて、いつまでも引き摺る女々しい男だ。

だが、それが寧ろ幸いした。


「諦めるんじゃねえぞ、俺」


自分を叱咤するようにセルファの超高速に挑む。

武器は捨てて残ったのは親から貰った固い手。

それを握り締め、セルファに向かって放つ。


「レイちゃん、そこどいて。アリスころせない」

「相棒を勝手に殺してんじゃねえよ馬鹿」


一度引く事を考えーやめた。

一歩だ。


『相手より一歩前に出ないと勝利の女神は微笑まない』


『進めば死ぬ、引けば老いる。ならば、死地に赴くが男の意地だ』


頑固で、寡黙な父の教えが脳を揺さぶる。

だから、俺は愚直にも正面を張り続ける。


「ハッ、魅せるじゃねえか。アスレイ」


ほら、女神はどうやら微笑むらしいぞ?

他ならぬこの俺に。


「やっと、でてきたね。これならころせるよ」


セルファはフィジカル・エンチャントアビリティーの効果で上昇した敏捷任せにナイフを振り抜く!


アリスは笑っていた。

悪戯好きな猫のような表情だった。

俺はその表情を知っている。


『お膳立てはしてやるから誤魔化し誤魔化しどうにかしてくれ』


全く、困った女神さまだこと。

でもその信頼には応えたい。


「足元がお留守だ!!」


以心伝心。

無理やり体制を変えたセルファの足を払い転倒させる。


「やりたい事を瞬時に理解されるとキモいな、案外」

「相棒ってそんなものだろ」


再び構える。


ヒュッ!!


静止していたリューザスの矢が放たれる。


「前は任せろ」

「そうか、じゃあ後ろは任せろ」


互いが互いの死角をカバーし合う。

ーこれこそバディの有るべき姿。


何物にも代え難い信頼の具現。


そこに、セルファは圧倒的な速度を以って肉薄する。


「なあ、気付いてるか?セルファ」


俺は再び前進、から拳を振り上げー。


「お前は確かに強い」


殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。


その悉くをいなし、受け流し、防ぎ切る。


「だがなッ!!」


「お前には欠落がある!致命的な欠落だ!!」


ピクリとこめかみが動くのを目視した。

それだけでも隙となる。


「お前は主人公足り得ないからだ!!」


「ああ、そうだ。週刊少年JANNPのテンプレ要素が綺麗に欠けてやがる」


アリスが言葉を継ぐように言った。


一つは努力。

初めから優越であるセルファは一つの物事に死にものぐるいで努力した事がない。要領の良さとは別に、完全であるが故に欠けている。


一つは友情。

セルファの圧倒的なスペックは他者を知らず知らず隔絶させた。嫉妬に狂わせた。故に自分が孤立し、友情は得られず欠損している。


最後ー、敗北だ。

勝利しか知らないセルファは挫折をも理解しない。他者を致命的に理解出来ない。弱者の傷の舐め合いという優しさを知らず、どこまでも残酷でいられる。

そして何より、敗北から得られる妄念、執念、モーチベーションと言ってもいい。それがない。完全故に限界を突破出来る燃料がない。



だが、俺には、俺たちにはそれがある。

幾度となく打ち拉がれ、挫折し、絶望し、嫉妬に狂いながら咽び泣いた日々がある。

敗北を知り尽くしたプロがいる。


心を病んだ、鼻摘まみ者がいる。

それも独りじゃない。

独り対お前一人なら負けていた。

だけど、二人ぼっち対一人なら。


「俺たちが一歩、先へ行くッッ!!!」

「な ん で ? 」


アリスがナイフを投擲した。

アリスはもうナイフが無い。


「 な ん で 、 こ の ぼ く が 」


「努力、友情、敗北!!これが無いのが…ッ!!」



「「テメェの敗因だッッ!!!」」


アリスの拳と俺の拳がセルファの顔面を正確に捉える。


「……」


「ナイスアシスト、相棒」

「アスレイ、ナイスだ」


「あははは」


「あはははははッ!!きゃははははッ!!あーおっかしー!お腹痛い!うははははッ!!努力?友情?敗北?が僕の敗因?成る程。僕は確かに負けた。負けたから…僕は勝てるよ!あはははははッ!!」


「なっ!?」


「馬鹿なの?レイちゃん。僕には一切ペイントはない。けど、アリスは?あと一回で退場。レイちゃんはあと二回で退場。ナイツ・ゲームのルール忘れてない?」




「さぁ、ナイツ・ゲームにようこそ」



それでも、俺たちは覚醒した天才の前に立つー。

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