相棒の理由
「行くぞ相棒」
「分かってる」
俺が持つのは二本の見た目上のグレートソード。
それを地面に突き立て擬似的なタワーシールドを形成する。シールダーのようなメインセイバー、それが俺の行き着いたスタイルだった。
一方の相棒はナイフの二刀流。
機敏さを生かしたサブセイバーだ。
セイバーしかいない偏り過ぎた編成。
だが草試合では無敗のままに進んだのだ。
俺たちの陣形は単横陣最強理論に基づき初手は横並びのスタート。
だが、そこからは俺のオリジナル。
相棒には俺の影に隠れて貰い敵が近付いたら遊撃、遊撃が終わり次第再び俺の影に隠れ、見た目上のグレートソード、ユニゾンソードからナイフを抜き取り手数を増やし時には投擲する。
アリスは役割上アーチャーも兼任している感覚に近い。
終盤は俺の大剣二刀流でタンクをこなしアリスがアサシン化して勝利。
これが黒猫隊のやり方。
ただ、この作戦を立案した時に…見えちまったんだよ。
昔の俺とセルファが。
…この作戦は昔の俺が作ったものだ。
だから、セルファとアリスの役割が近い。
だが、…数段落ちる。
想定したセルファが動く型をコンバートした作戦だがアリスを据えたら弱体化、とまでは行かないが見劣りする。
ここに来てまたセルファだ!
俺はまたセルファの幻影に囚われる!
過去の自分に囚われる!
なんて非力、なんて無力。
情け無さが込み上げて自然と唇を噛みしめる。
「なあ、相棒。お前、無理してるだろ」
何時もの河川敷、相棒は問い掛ける。
ザァッと風が吹き良くない雰囲気を運び込む。
「……」
「こうなった直接の原因は俺だ。だからお前が無理してる姿は頂けない」
無言。
「なぁ、相棒。俺を頼れよ。もっと頼れ、依存するくらいに頼れ。俺は意地でも拒んでやらねえからよ」
「…何で」
純粋な疑問。
今まで押し隠して来たものを吐き出す。
「何でお前は俺に固執するんだ?セルファの母親が悪いとは言え俺の完全な自業自得じゃねえか。勝手に嫉妬して陥れて。汚いったらありゃしない。なのに…それを知りながら何故俺に尽くせる?尽くそうとする?それに、ここまで来る為に使った金は幾らだ?その値打ちがあると本当に思ってるのか?俺には分からない…分からないッ!全然分からないッ!!」
一息で言ったものだから息が切れた。
ゼイゼイと息を吐きながら目頭を熱くしていた。
明確な答えが欲しい訳で言ったのではない。
俺は理由が欲しかった。
協力というポーズを取り続け理由を。
そもそも慣れない相棒呼びもその為だ。
疑念を掻き消してごまかすためのポーズの一つに過ぎず陳腐なカリカチュアのようなものなのだ。
「お前はまだ囚われてるんだな…」
「お前は忘れてるんだ。ナイツ・ゲームはスポーツだ。体を動かし、健康を保つ娯楽、遊戯。そう、gameだ。飽くまでゲームの域を出ない。難しく考えすぎだ。頭冷やせ、馬鹿。ただ…」
「そうだな。お前がそう言うなら俺は明確な理由を提示してやるよ」
フワリと漆黒の髪がたなびいた。
同時に腰に手が回され息が触れる程の近距離に顔が近付く。
やはりアリスも女の子なんだ、と。
そう感じるようなシャンプーと汗の混じった甘酸っぱいくて…若干しょっぱいそうな匂いが俺を包んだ。
「相棒…いや、アスレイ。お前が救ったのはセルファだけじゃねえんだ。俺もだ。俺もお前に救われてる。だから、俺はお前を尊敬してるし愛してる」
「な、にを?」
「俺がお前を助ける理由、親愛だ」
額に柔らかな衝撃が走った。
包帯の巻かれた細い指先で額を弾かれたのだ。
デコ、ピン?
「泣き言だったら幾らでも聞いてやる。側にいて欲しいなら幾らでもくっついてやる。俺だって一応は女だ。癒しの効能は保証するぜ?」
「はっ!」
何だよ、ソレ。
俺よりもずっとイケメンじゃねえか。




