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セルファの弱点

あれ、これスポ根モノだよね…?

何か様子がおかしいぞ?

「リュー、ザス?」


俺は唖然とした。

当然だろう。リューザスは退部という解を示したのだ。


ナイツ・ゲームは最もポピュラーな娯楽である。

だが、ナイツ・ゲームにも欠ける部分もある。

金だ。

ナイツ・ゲームには専用の武器代、防具代、塗料代、コートの使用料。

湯水のように金は飛んで行く。

部活には部活用の一式が揃っているが公式の大会でそれを使う訳には行かない。

ましてやリューザスは頑固な祖父との二人暮らし。

収入は乏しく貧乏なのは疑いようがない。


「…まあ、俺は金銭面が望めないからだけどな。良い機会だと、思わないか?」

「……」


俺はきっと疲れている。

縋ってしまいたいくらい俺は疲れている。


「俺は…俺は…」


その時、俺は視界の端にそいつを認めた。

そいつは口に手を当てて驚きを露わにしている。


「ッ!!」


俺はそいつの方に向き直り言った。


「…よう、セルファ」

「レイちゃん、嘘だよね。リューザス君と一緒にナイツ・ゲーム部を辞めちゃうなんて」


聞かれていた。


「少なくとも、俺は…祖父との折り合い的にも金銭面でも続けられないんだ」

「じゃあ僕が金銭面をフォロー出来れば続けてくれる?」


セルファ・クリストファー。

見た目は端麗。

内面も他者を疑う事をせず清廉。

運動なら瞬発力にかけて右に出るものはいない。

でも、セルファには致命的に足りない部分がある。

敗北だ。

決定的にセルファは敗北が足りていない。


『やっぱり、僕が原因だよね。レイちゃん。後で牛丼屋さんにでも行こう?僕が奢るし僕で良ければ相談にも乗るよだから…』


敗北を知らない故に傲慢なのだ。

思うに『本当の優しさ』は敗北、失敗から生まれるべきなのだ。

自分が失敗して苦しんだ経験を他人に重ねるから人間は優しくあれる。

逆に失敗を知らない人間は…残酷だ。


そうだろう?

俺はセルファの失敗なんて見てはいない。それを自分のせいと断じるのは、自意識過剰だ。

その上、実際俺は俺が惨めでセルファが憎かったから下を向いていた。

なのに元凶は牛丼を奢ると、相談に乗ると言った。

ああ、本人でなければ最適解だった。

本人でなければ。

セルファは俺が憎んでいることを知らない。

だから簡単に側にいようとする。

だからセルファは敗北無しに傷付く。


今もそうだ。


「セルファ…やめてくれ…」


特に金銭面はそれが顕著に現れる。

危うい二人暮らしを続けるリューザスと、金持ちの家で不自由無く育ったセルファ。


立場が違えば考え方も違う。


リューザスの額に血管が浮き出る。


「おい、リューザス落ち着け!!」

「……ゥ」


リューザスは物凄い視線でセルファを睨みつけていた。


「あ、あれ?僕、何か駄目な事を言っちゃった」

「セルファは黙れよ!!」


勢い任せに言ってしまった。

然るべきだともやり過ぎとも、どちらとも言える。


ただ、その時の俺の反応はこの上無く不味かった。


「あ…」


傷付けたと思ってしまった。

瞬間、セルファに嘘を吐いた記憶がリフレインする。

溢れ出るのは罪悪感。

動悸が早まり足元がふらつく、視界はチカチカと明滅して俺の所在が分からなくなる。

間違いない、発作だ。

そのまま力無く地面にへたり込み…乾いた音が響くのを聞いた。


『このクズ野郎!』


意識が遠のく刹那、リューザスは奇しくも俺を断罪した少年と同じ言葉を言いながらセルファを平手打ちしたのを見た気がした。

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