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異世界共存生活  作者: 暁 武尊
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第1章 ~出会い~

 

  見覚えのある風景―――懐かしい街の香り―――行き交う人や―――

「やっとだ。帰ってきたんだ……この世界へ……」

英司は大きく空気を吸い込んだ。

胸の中が懐かしさでいっぱいになる…吸い込んだ空気を吐き出すと、胸の中にある何かが抜けた気がした。

ここは丘の上。

夕方になると、街はオレンジ色で覆われる。

それはまるで、宝石のように美しい景色である……

ここから街を一望することができる。


英司――――浅井英司あさいえいじ16歳。

一見普通の青年で黒色のショートで短髪。端正な顔立ちで、細身だが貧弱さは感じさせないすらりとした体躯で、少し大人っぽい。どこにでもいる16歳の一人だ。 

今年からこの世界に転移してきた。元はこの世界に住んでいたのだが、訳あって異世界へと移り、またこの世界に戻ってきたはずなのだが、不思議なことに、数日前にいた元の世界の事は何も覚えていないのだ。

この世界に戻ってきた経緯もこっちへ来るための手段もなにもかも覚えていない。

こっちへ来たときはこの丘の上にだったらしく気づいたときにはここで横たわっていたのだ。

あったのは、この身とポケットの小さな紙切れと必要最低限の生活用品をまとめた大きめのバッグまるで修学旅行のような感じで少々焦った。

そこから紙切れを頼りに人に道と場所を訪ねながらなんとか住所を特定し、表札に記された名前を確認して鍵を開けて家に入った次第である。


「さてと、そろそろ行くかな」

英司は荷物を持ち、階段へと足を向ける。

――――――『転移魔法』を使えば一瞬なのになと思いながら最後の階段を下りたところで飛び出して来た謎の影と衝突。

転倒。

「きゃぁ!」

一瞬何とぶつかったかも分からなかった。考える暇もなく地面に頭を打ち付け、聞こえた悲鳴を余韻に意識が遠退いていった。






風の音が聞こえる……それに連れて木の葉が揺れる音も……それから聞き覚えの無い音も聞こる……

その音は意識が戻るに連れて、鈍い音からはっきりとした音へと変わっていく。

腹のあたりに物理的に重い何かを感じる。

「う……うぅぅ…………」

意識が戻り始めた英司は呻き声を上げる。

目を薄めると腹の辺りで英司にまたがった少女がこちらを心配そうに見つめている。

ああ、俺は天国に……?

直にしてこれが現実だということを認識した英司は目を見開いて物体を確認する。

すると、ロングヘアーで茶髪の女の子が英司にの上に堂々と座っている。

「どうなってんだ、これは……」

独り言を呟いた英司は必死に状況を呑み込もうとするさなか「大丈夫ですか?」と茶髪の少女が口を開いた。

「だ、大丈夫だよ。君こそ大丈夫?」

見た感じは問題なさそうだが、相手は女の子なので一応訊いておく。

「はい。私は大丈夫ですよ」

少女は満面の笑みで答えた。

わらった顔は幼く、どこかに遠い懐かしさを感じた。

それよりも、英司は今あるこの状況をイマイチ理解できていない。

それに加えて、さっきから触れている腹の感触のせいで、どうにも気が狂ってしまいそうなので、

「あの……この状況は……いったい……」

とりあえず訊くことにした。

「え……と。」

彼女は少し間をおいてから考える素振り(そぶり)をする。

あんたも理解してないのかよ!とツッコミたいの必死に堪える。

「私とぶつかって……あ!そうだ!」

「はぇ⁉︎」

いきなりの大声に驚き、変な声が出る。

「な、なんでしょう?」

英司は恐る恐る訊いた。

「……頭は大丈夫ですか?」

―――――― え?あ、そうか頭をぶつけたから心配してくれているのか。でも初対面でさっきの事を覚えてなかったら頭の中身の方を心配されてるのかと思ってしまった。

「大丈夫だと思いますよ」

「見せてください」

「え!? いや、大丈夫ですって……」

心配してくれてるのは素直に嬉しいのだが……

それよりも――――――この状況をなんとかしてくれー!!

明らかに半分以上悲鳴に近い心の叫びだった。

考えても見て欲しい。

一人の純粋な少年の腹の上に一人の純粋な少女がまたがって座っている状況を。

誰がどう見たっておかしいし、完全にヤバイやつにしか見えてこないだろう。

そんな状況に英司は、たった今直面しているのである。

いつまで俺の上に座っている気なんだろうか。

だいたい、この状況で『頭は大丈夫ですか?』って、聞く前に退()くだろ普通……

誰が見てるか分からないのに……

さまざまな不安を募らせている中、一向に退く気配がない彼女の目をじっと見つめる。

すると、彼女も同様に俺の目をじっと見つめ返してくる。

なんだこれ……ただの見つめ合いになってるぞー!!

上手く伝わらなかった事に追い討ちを掛けるように不満が募も、なんとかその感情を抑えて穏やかな表情で言った。

「あ……あの大丈夫なんで、退いてくれますか?」

「あ、すいません。」

無神経かよ!この状況なら尚更気づけよ!

やっとの事で退いてもらうも、腹には温かい感触が微妙に残っていた。もう少しで英司の理性が崩れるところだった。

よいしょ、と身体を起こすと片膝を立てて立ち上がる。

両腕を空に、ぐうっ、と身体を伸ばすと改めて彼女を見る。

英司の目線から彼女の目線まで5センチは低いだろうか。その目には何も迷いが感じられないほど、真っ直ぐにこちらを見つめている。後ろで一つに束ねてあるポニーテールが、風が吹く度に揺られ、神々しい太陽の光を散りばめている。

眩しい……

心のどこかで、そう思わずにはいられなかった。

胸は膨らんでおり、その大きさは制服を見たら分かるであろう大きさで、一般の高校生と比べれば少しばかりか豊富である。

スカートからは細く白くて綺麗な肌が見えていた。

誰が見ても文句なしの美少女である。

こんな美少女に俺はさっき何されてたんだ!?と自分を疑いたくなってしまう。

英司は頭のてっぺんからつま先まで彼女を見ると、とある事に気付く。

「あれ?制服が同じだ……」

透き通ったスカイブルーの制服に身を包んだ彼女は自分の制服を見る。

「確かに。同じ学校の方ですか?」

「そういう事になるのかな。」

胸に付けた校章であるバッチが英司達の疑問を確かなものへと変えたのは直後のことだった。

同じ学校だと分かるとさっきよりも安心感がある。

ところが、安心した直後に、再び英司の脳裏には疑問が浮かび上がる。

ん?まてよ……同じ学校……

風が英司の思考を遮るのを無視して考える事に集中する。

あー!!学校ぉー!!

考えついて思い出した結論、最悪の事態だという事に気付く。が、もう遅い。英司は分かっていながら、それでも少しの期待を寄せ、腕に付けている時計を見る。

時計の針は直角に午前9時を差していた。

あ…遅刻だ……完全に遅刻だー!!

転向初日に遅刻とか、きっといろんな先生にあいつはヤバイ奴だと噂され、常にマーキングされて先生たちのブラックリストに追加される悲しいパターンのやつじゃねぇか……

どうしよう……これからの学校生活に支障がなきゃいいけど……

ていうか、同じ学校ならもしかすると――――彼女もヤバくないか?

一人で絶叫していて、すっかり彼女の存在を忘れかけていた。

英司は我に返り、冷静に彼女に問う。

「あの……同じ学校なら……」

「学校…………」

しばらくその場に立ち尽くす彼女。

「あー!!学校ぉー!!」

放心状態から解放された彼女は大声を上げて叫ぶ。

「さあ、行きましょう」と、言って俺の腕を女の子らしいか弱い力で引っ張って駆け出す。

「うゎ!ちょ…まっ…」

引っ張られた英司はその力に任せて駆け出す。

そんなこんなで騒がしい朝を迎え、最悪のスタートダッシュをきめた俺の学校生活が始まった。




学校に着くと英司と彼女は職員室へ行き、なんとか事情を説明して受け入れてもらったものの、向こうの態度は明らかに半信半疑だった。

まあ、いろいろと道に迷ったりもしたのだが、(彼女の方向音痴さ故に)自分でも、しょうがないか、と納得するのも無理はなかった。

英司と彼女は同じ教室へ向かう。

偶然にもクラスが一緒だったからである。

これを(こう)と呼ぶべきものなのかはまだわからない。

そういえば、彼女の名前を聞いて無いなとふと思う。

「あのさ、君の名前――――」と、問いかけると同時に、

「あーそうだ。私の名前……」

俺の、彼女に対しての初めてだと思われる()()()質問は、あっさりと掻き消されてしまった。

「聞きたい?」と、問い詰められる英司。

まさか自分から言ってくるなんて……

どれだけ自分の名前に自信があるんだか、とうんざりした。

「あーなによ、その顔はー」

彼女は少し前かがみになると、後ろで手を組み膨れた顔でこちらをしきりに見つめると、彼女は英司に顔を近づける。

––––うわ!近い……

その距離僅か20センチ。

英司はあまりの近さに動揺を隠しきれなかった。

すぐに顔に出てしまうのも悪い癖だ。

英司は他人と接するのは苦手ではない。積極的な奴にも基本動揺はしない。が、今は動揺している。動揺しまくっている。消えて無くなりたいぐらいに動揺しているのである。彼女が異常なくらい積極的すぎて驚いてしまっているようだ。

「そんなに驚かなくてもいいのに……もう……」

彼女は俺に向かって、膨らんだ頰を一層大きく膨らませる。

彼女は姿勢を正すと、右手を左胸に当て、

「私の名前は神藤なつみです。よろしくね。」と、丁寧に自己紹介をする。

「じんどうなつみ……」

俺は口の中でボソボソと呟いた。

「どう?良い名前でしょう?」

「お、おう……」

そういうのって普通、自分で言うか?

やはり自分の名前には自信があったらしい。

「んじゃ、なつみでいいか?」

それまでは自信に満ち溢れていた顔は一瞬にして崩れ、ボッ、とマグマの様な色に変化する。

「ん?どうしたんだよ。顔真っ赤だぞ?」

「い…いや……いきなり名前で呼ばれたから……」

俯いてもじもじする。英司にはさっぱり訳の分からない行動だった。

俺は名前を呼んだだけなんだが……何か悪いことをしたか?

「びっくりしちゃったの……」

「え?何て?」

よく聞こえない……ボソボソ話すから聞き取りに非常に困難。「も……もういい!」

そう言ってスタスタと先を行くなつみ。

どうやら俺は彼女を怒らせてしまったようだ。

多少の反省をしつつ「ふーん」と、適当な返事を返して後ろから彼女を追った。

しばらく歩くと、なつみは英司に訊いた。

「君の名前は?」

そういえば、まだ自分が名乗っていなかったことをすっかり忘れていた。

「俺の名前は……」

そこまで言って言葉が詰まった。

俺…あっちの世界では何て呼ばれていたんだろう。思い出せない……

思い出そうとすればするほど黒い靄が掛かる。

幾ら考えても思い出せなかった。忘れたくない、忘れてはいけない大事な何かがあったはずなのに――――――――

「どうしたの?」

すぐ隣で声がした。

「あ……いや……」

それでもこちらにいるときの名前は覚えている。それを頼りに家を探したのだから。

浅井英司(あさいえいじ)だ」

「英司君か……かっこいい名前だね」

「ありがとう」

それでも、彼の意識はどこか遠くにあった。

遠い、今はもう無くした記憶の中で何か大事なものを探すように、それでもそこにあったものをもう一度掴もうとするように。

ふと、今まで視界に入らなかった校舎に目を向ける。

見る限り、まだ新しい学校のようだ。

綺麗な廊下には、一面にワックスが塗られ、光に反射する。目立つ傷も見当たらない。廊下中にワックスの匂いが広がっている。開いた窓からは爽やかな風と、心地よい太陽の光が差し込んでいた。



朝は始業式ということで体育館に全校生徒が集められた。

さすがに全生徒が集まると、広い体育館も狭く感じてしまう。

恒例の通り、ステージの上には校長先生とが話をしている。

話にたどり着くまでが長かったのに、今から話を始めるとなるとさすがに長い。

皆、尻を浮かすなど、それなりの対策で話を聞く。

こういう場合、しっかり練って来たと思われるメモを片手に起承転結をつけて、分かりやすく、はっきりと話す。簡単に言えば親切心なんだろうが、その親切心故に、こちらにとってはものすごく苦痛なものの一つとして捉えてしまう。

例えるなら、学校行事の大きなメインイベントの一つ。と言っても過言ではないだろう。

「先生の言いたいことは三つ。」

いやいや、三つで終わらんだろ。

『三つ』と言いながら四つや五つは普通に話すのがお決まりだ。最初にした宣言を無視して。

少しは座っている人の気持ちも考えて欲しいものだ。

 

「…………………………‼︎」

今、突然何か嫌な気配を感じた……

校長の話が長くなりそうだとかそういう感じではない。

この世のものではない異界の雰囲気。

周りの生徒は何も気づいていない様子で話を聞いているだけ。反応しているのは自分だけか……

それにしてもなんなんだこれは。まるでこっちに来たときに倒れた原因にもなったであろう目眩(めまい)とも違う、ぐらぐらと脳が揺れる感覚。

――――――まさか!

俺は気配のした方を見上げる。感じたのは体育館の上、けれど屋根より更に上の場所。

ゴゴゴゴゴゴォォォ––––––––

雷とも違う轟音が体育館中に反響する。

轟音が鳴り止まない中、音につられて体育館が左右に大きく揺れる。

さすがに生徒達も気付かないわけがなく、突然の異変に混乱した様子で動揺している。

先生の指示か生徒の判断かは不明だか、素早く自分の身を守るための姿勢をとる。

先生や生徒もその場に小さくなって伏せる。

その時、天井の一点に小さな穴が空き、そこから天井が崩れ、およそ人が当たれば即死であろう大きな瓦礫が一部の集団生徒に襲いかかる。

「逃げろ!!」

英司は必死に叫んだが、遅い。このままでは間に合わない。

「ワールド展開!!」

直後、体育館中に閃光が駆け抜ける。

だめだ!間に合わない!

そう思った瞬間、何かが目の前を横切り、瓦礫の方へ飛んでいく。その何かは岩に当たると、岩と共にその場で砕けるように、けれど音もなく破片が残るわけでもなく。完全に()()()()()()()()()()のだ。

『消滅』に近い形で。

いったい誰が……

英司は()()が辿った軌道の元を目で追う。

そこにたっていた当事者を見て英司は目を見開いた。

「まさか……」

そこに立っていたのは……

 

 

 

皆さん初めまして。

今回は異世界共存生活を読んでいただいてありがとうございます。

今回が初めての小説なので、心配な所も多くありますが、これからこの物語の連載をしていこうと思います。

この物語の特徴はなんといっても異世界ものということなのですが、僕は少し考え方を変えて「現代日本」を「異世界」という形で結びつけました。

そんなもの異世界でもなんでもないじゃないかー!!

という人もいると思いますが、僕の考え方はこうです。

僕らから見る宇宙人を宇宙人と呼ぶように、宇宙人からみる僕らもまた宇宙人ではないかと。こんな子供の頃に話題にしたようなものをこの物語で活用して、異世界からみる世界、即ち現代日本もまた異世界と呼ぶことができるのでは!?と考えた結果に生み出されたものです。

そんなの言い訳だー!!

全くもってその通りですねw

否定はしません。

確かに問題だらけで半分現代で半分異世界という中途半端なストーリーにしたが為にいろいろ困っておりますねw

しかし、自分が好きで書いていて悩むのもまた楽しいのでこれからも頑張っていこうと思います。

皆さんにとって面白いと思える作品なら幸いです。

また、感想なども受け付けます。

簡単でも、感じた感想などを教えてもらえると嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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