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妖怪百科  作者: 玉藻
3/7

第3章泥田坊・川坊主

べとべとさんの去っていった、次の日のこと。

 「黒いネバネバ!?」

 思わず私は声を上げてしまった。

 「うるさいぞユーレイ。少し......というか、しばらく黙ってろ。」

 私が声を上げたのにはもちろん理由がある。

 っていうか、普通はこれを見たら、絶対逃げるか、声を上げるだろう......。

 だって、私達の目の前には.........

 田から上半身を突き出し、体全体が黒く、目玉がひとつ。そして、肌は滑りを帯びている謎の物体......いや、妖怪がこちらを向いていた。

 

 数時間前の事。

 

 「つまり、お前の家の田んぼから、黒いわけのわからないものが現れるから、それを退治しろ......という事か?」

 八城君は目の前に座る女性___つまりは今回の依頼主に内容を確認した。

 「はい。そうです。よろしく、お願いします。おれいですが、終わり次第、お渡しします。はい。では。お願いします。」

 そう言って、依頼人である夜口町子よるぐちまちこさんは帰っていった。

 

 「あの人、喋り方おかしいですよね?やけに分かりにくかったんですけど......」

 「いちいちうるさいぞ、ユーレイ。今から現場に行こうと思うが、お前も_____いや、聞くまでもないようだな。」

 テキパキと荷物をリュックに入れる私を見ながら、呆れた声で八城君が言った。

 「そういえば、天野先輩は?いなくなってますよ?」

 「ん?本当だな。天狐のヤツ、何処に行ったんだ?」

 私と八城君が周りを見ても、室内にはいないようだ。さっきまでいたのに......。その時だった。

 「お~い、2人とも~!!」

 私と八城君が声のした方を見ると、既に天野先輩は廊下で足踏みをして待っていた。

 「早く行かないの?」

 

 

 ___そんなこともありながら、今に至るわけなのだが......。

 「八城君、これって一体......」

 「恐らく、泥田坊......だろうな。江戸で発行された妖怪絵本『今昔鬼拾遺』に書かれていたものとそっくりだ。」

 八城君がそういった時だった。

 「た......た......田を......田を返せぇぇぇぇぇぇ」

 あれ、こいつ......

 「近づいてくるみたいだけど、どうする?鷹犖。」

 「ふむ、これは......」

 次の瞬間!さっきまでカタツムリ並みにゆっくりだった泥田坊が、猛スピードで動き出した。っというか、近づいてきた。

 「に......逃げろーーー!!!」

 八城君が叫び、私達は走り出した。

 「何でこいつ追いかけてくるのー!?八城君!どういう事か説明してよーー!!!」

 「俺が知るか!!」

 「仲いいねぇ。」

 「「うるさい!」です!!」

 なんて言ってる間に、少しずつ泥田坊が近づいているような気が......

 「どうします!?このままだとやばいですよ!!」

 「.....仕方ない、ものは試しだっ!」

 そう言って、八城君が何かを投げた。それが泥田坊の口の中にホールイン!

 「☆¥♯♭*......」

 泥田坊が声にならぬ声を上げ......消えた!?

 「一体どうして......」

 「川坊主という妖怪がいるんだ。川の近くにいる妖怪で、肌は滑りを帯びた粘液質。通りかかった人を襲うらしい。」

 「あれ、それって......」

 「泥田坊に似てるね。」

 「あぁ、川坊主は弱点とともに語られている妖怪でな。その弱点は『エンドウ豆』なんだ。無理に口に入れると、消えてしまったという話もある。」

 「えっと......つまり、さっき投げたのはエンドウ豆で、泥田坊と川坊主は同じ妖怪......ってこと?」

 「そうか、だから鷹犖の投げたエンドウ豆を食べて、泥田坊は消えたのか!」

 「一か八かの賭けだったがな。予想通りで助かった。」

 

 結局、今日は夜口さんに「エンドウ豆を植えておけば、もう出てくることはないだろう」とだけ行って帰ることにした。

 

 その後......

 「そう言えば、この前はなんで怒っていたんですか?」

 「この前って......あぁ、あの時の事ね」

 「別にお前には関係ない。」

 「僕は何で鷹犖が怒っていたか知ってるよ?なんで顔が赤くなっていたのかも。」

 「先輩!教えてください!!」

 「良いよー。って言いたいところだけど、鷹犖が怖いから辞めておくよ。」

 「えぇ~......」

 (又崎さんのこと、鷹犖が好きだから。なんてこと言えないしねぇ......)

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