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紫苑穢国のエトランジェ  作者: 葛葉狐
第三章    天帝の御世    《紫緋紋綾》
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第二七五話    在るが儘に Ⅰ




「状況は不鮮明です、今後も待機が命じられるでしょう」


 待機時の諸問題への対応事項を告げるクレアは、内心で現状の推移を図りかねていた。


 皇州同盟軍総司令部の長距離通信によって、皇都憲兵隊司令部へと集められた皇都駐在の皇州同盟軍将兵……とはいえ、その数は百を下回る。大部分は北部に帰還しており、残存する者達は組織間の連絡や連携を担う者達であった。故に士官ばかりである。


 無論、それらは非公式で活動する情報部や憲兵隊の将兵を別にした総数である。


「情報参謀、陸軍総司令部からは?」


 幾ら考えども分からぬ現状に、クレアは陸軍にも片足を突っ込んでも尚、臆する場面を見せない紫苑色の短髪の少女へと問い掛ける。


「特には。現状の皇都は安定しています」


 短く切り揃えられた紫苑色の髪は、以前にも増して活動的な印象を抱かせる。現にアリアベルと共に居る姿が皇都の要所各地で確認されている。


 最後の確認を装ってリシアに問い掛けたのは、クレアからの忠告でもある。


 皇都はヨエルの息の掛かった航空歩兵達による治安維持活動によって安全が保たれている。寧ろ、犯罪は展開以前より減少傾向にある。数千の空からの視線は犯罪を酷く困難と成さしめた。無論、地下都市に関しては例外である。


 陸軍〈北方方面軍〉情報参謀であるリシアも北部に近しい者としてこの場にあるが、彼女は余りにも特異な立場であるが故に、各勢力にとり手出しし難い存在であった。


 ある意味、皇都で一番の不確定要素と言える。


 軍神を支えて内戦と今次戦役を優勢に進め、戦後はクルワッハ公と友諠を結び、陸軍大佐の階級を得て、大御巫を補佐している気配もある。曖昧な関係も多いが、無視し得ない勢力や人物との交友があり、敵にとするにも味方とするにも悩ましい人物と言えた。


 これ程に手を出せば何処で誰に恨みを買うかも分らぬ相手は皇都でも珍しい。


 無論、そこには、かつてリシアと懇意にしていた商会の会長を含めた一家が皇都擾乱で死亡しているという理由もある。懇意にしていたというのは、商会によって作られた風評であり、実情としては商会自体がリシアが皇都を去る理由となっていた。


 その経緯を知る者達の中には報復であると見る者も少なくない。


 証拠はない。


 そもそも、皇都擾乱での不審死は多い。


 皇州同盟軍情報部による暗躍の結果であろうとクレアは見ているが、皇都擾乱による混乱を奇貨として蠢動した勢力は多い。下手に下手人を断定できない殺人であれば良い方で、恐らくは濡れ衣を着せられた事件も少なくないと皇都憲兵隊も見ており、警務府も立件には慎重であった。


 酷く手の出し難い数ある死の一つに過ぎない。


 だが、個人的な問題から曖昧な死を齎す事のできる立場にあるとリシアを見た者は少なくない。


 手を下したのは誰か?


 陸軍か皇州同盟軍の情報部が協力したのか、或いはクルワッハ公は案じて一手を講じたのか。若しくは主席政務官や剣聖という可能性も捨て切れない。


 複数の可能性……それも強大な権勢を持つ名が幾つも出るリシアは政治的脅威の一言に尽きる。


 クレアとしても、確たる立場を得ている訳でもないにも関わらず、好き勝手に振舞えるだけの状況を獲得したリシアに空恐ろしいものを感じていた。


 憶測や思惑を悠々と超え、リシアは自由気儘に振舞う。


 それを羨望し、嫉妬もしたが、今となっては些事に過ぎない。クレアは願うものを手にし、リシアも求めていた権力に寄り添って栄達の道を邁進している。


 美貌の憲兵総監と紫苑色の情報将校の視線が交錯する。


「では、問題ありませんね」


 続いて指摘と申告を問い掛け、些事ばかりであると確認したクレアは憲兵隊将校以外の者達に解散を命じた。


 自身の階級が最上位である為、言動への注意を払う必要はないが、後の事を思えば気が重いクレアは残った憲兵将校達醒めた瞳で一瞥する。


「閣下、我らへの御用命を」副官であるアヤヒが問い掛ける。


 副官であるアヤヒには前以て伝えている故の余裕であるが、それは事前情報のみに依る所ではない。


 見かねた様子を見せているが、クレアはアヤヒが神州国系として軍刀拵えの太刀を愛用している事を知っている。現に今も腰に軍刀を佩用しており、それも長身である事を生かして大太刀に迫ろうかという全長を誇る軍刀であった。挙句に運用は剛剣と呼ぶに相応しい扱いである。


 クレアには叶わぬ太刀筋を見せるアヤヒに教えを乞う事はできない。


 何より、クレアは屋内戦闘で柱諸共に切り捨ててしまえと言わんばかりの剣技を望まない。


 トウカの様に最小限の動きで、剣技だけでなく足技なども含めたそれで相手を確実に排除する方法を求めていた。戦野である以上、勝利は必須だが、体力と装備を消耗しては継戦能力に響く。剛剣は消耗が激しい。


「我々、憲兵隊は曲剣(サーベル)から太刀への装備転換を行います」


 フェルゼンの憲兵隊司令部との通信による遣り取りを経ての決定だが、案の定、憲兵将校からは不安と不満の表情が窺える。上官の言葉を遮る者はいないが、近接戦闘、それも咄嗟戦闘で運用する事が多い刀剣を慣れぬものにする事に対する懸念はクレアも理解できた。


 実際、憲兵隊の戦闘は閉所での鎮圧戦主体だが、それでも大部分は銃火器と魔導杖によって行われる。出合い頭の咄嗟的な近接戦闘では刀剣による抜刀が最速で、曲剣(サーベル)より重量のある太刀に対する忌避感は強い。


 しかし、実情として戦闘詳報から近接戦闘の統計を見た限りでは、曲剣(サーベル)が役に立つ事は少なく、寧ろ自動拳銃や戦闘短刀(コンバットナイフ)の戦果が目立つ。逆に曲剣(サーベル)は膂力で押し切られる場面が多々あり、優位性を確保できていない。自動拳銃の連射による魔導障壁を飽和しての射殺や、戦闘短刀(コンバットナイフ)で魔導障壁を避ける形で刺殺するという形での攻撃が有効である事が判明している。


 自動拳銃の威力増大と戦闘短刀(コンバットナイフ)は、曲剣(サーベル)の活躍を奪った。取り回しで及ばず、威力で及ばず、運用実績が低下している。


 クレアは、そう判断した。


「閣下、一層の事、刀剣自体の運用を止めてはどうでしょうか?」


「代わりに短機関銃の採用が望ましいかと」


 憲兵将校達からの指摘に、クレアは鷹揚に頷く。


 それは、クレアも考えた。


 散弾銃の半自動(セミオートマチック)化も設計が完了し、耐久試験を終えれば量産が開始されるが、短機関銃は圧縮(プレス)加工と金属の多用によって量産体制が完成しつつある。順次、歩兵部隊に配備され、突撃兵という名称で呼ばれていた。取り回しに優れ、近接戦闘での制圧能力に秀でる短機関銃は塹壕や市街地で活躍している。


 市街地での近接戦の多い憲兵隊には有用な銃火器と言えた。


「正面戦力への供給が優先との事です。憲兵隊への配備には三年を要するでしょう」


 存外に配備は決定している事を伝えるクレア。


 量産体制が確立しつつあるとはいえ、数十万……今後の軍拡を踏まえれば、数百万の規模となる皇国軍の正面戦力に必要な短機関銃は消耗を鑑みて約百万丁を必要とすると試算されていた。


 無論、産業誘致の一環として生産工場を北部に集中させる為、トウカが遅延已む無しという方針を取っていた事から更なる遅延が予想されている事は伝えない。


「当座は軍刀で凌ぐと? 抜刀隊が必要ですね」アヤヒが肩を竦める。


 漣の様な笑声が室内に響く。


 抜刀隊は初代天帝の御代に在って、親衛隊の性格を持つ部隊の名称であった。無論、警護だけでなく、最前線に頻繁に投入され、無数の戦果と栄光に彩られた部隊である。現在は近衛軍の部隊にその名が見られる程度であるが、創作物には頻繁に名を連ねていた。


 刀剣を力の象徴と、ヒトは理解せずとも本能で認識している。


 無意識の信仰に他ならない。


「調達の都合がつかない以上、我々に選択肢はありません」


 皇州同盟軍憲兵隊は、他の軍事組織の憲兵隊と比して重火器を歩兵師団並みに装備している事で有名である。現状以上の装備を無理に望む事は二心ありと思われかねない。今のクレアは目立つ真似を避けねばならない理由がある。


 落胆の声はない。


 軍人で将校ともなれば、その辺りを弁えてしかるべきであり、憲兵であれば一般将兵よりも堅固な自制心を求められる。


「兎にも角にも、この司令部には武道場もあります。そちらを使用して今から軍刀の受領と基本的な扱いをホーエンシュタイン少佐から学びます」


 皇都憲兵隊司令部からの許可は既に得ていた。


 自宅待機という名目であるが、軍官舎のある地区自体が警備を受けて封鎖されており、その中央……武道場のある公園などは一般人が立ち入れない環境にあって、そちらを利用する事もできる。クレアは自宅待機だからと憲兵将校に怠惰を許す心算はなかった。自宅待機でも給与は発生しているのだ。軍人としての義務は生じる。


 指導の件で初耳のアヤヒが眉を顰めるものの、異論を挟む事はない。質問を問えば、異論が出る事は疑いないが。


 しかし、堂々と宣言する輩も存在する。



「面白そうね。私も参加するわ」



 クレアは鋼鉄の自制心で、愉し気に宣言するリシアを見据える。


 ――面倒な事を……いえ、これを機会に探るとしましょう。


 さしものクレアも、以前からリシアに敵対的な姿勢を取られて腹に据えかねていた。理解も納得もできる意見だが、居丈高であり彼女にも問題点は多い。それを座視した上で批判を受け、隷下将校の前で沈黙しては憲兵総監としての立場が問われる。


「……大佐の軍刀は用意しておりませんが?」


 消耗を想定した予備はあるが、リシアへの配布分は想定していない為、言葉の上では間違いではない。何より管轄違いへの貸与は、脱税の扱いを受けかねなかった。無論、軍閥と化した北部でも、領法が存在し、税務官が目を光らせていた。


「あら、大丈夫よ。何処かの公爵が太刀をくれたのよ。銘は久遠兼定?」


 アヤヒが眉を跳ね上げる。


 相応の名刀なのだろうと、クレアは贈物(プレゼント)したアーダルベルトを恨む。


 名刀は美しさや形状だけで判断されるものではない。材質や付与された術式、そして実績に依る所である。それ故に皇国では名刀が名刀と呼ばれた。魔導国家に在って、刀剣は未だ鑑賞物ではなく、武器としての立場を崩していない。


 故に皇国で謳われる名刀とは、武人の蛮用に耐え得るものに他ならない。


「致し方ありませんね……」


 あくまでも已む無しという姿勢を崩さない。自らが相手の進言によって受け入れたという体裁は、問題が生じた際に極めて有効な手札となる。組織に於ける処世術に他ならない。


 しかし、憲兵総監は腹を括っていた。組織とは威光をも必要とするのだ。(へりくだ)るばかりでは隷下将兵からの信頼を損なう。上位者は己を強く見せねばならないのだ。



「怠惰な情報将校に贅肉が付いて同盟軍の無様を晒す訳にも行きません」



 クレアは吐き捨てる。


 驚きに固まる憲兵将校達。


 軍神の威光なき小娘に対する配慮など一分も必要性を認めないという断固たる意思。嘗てのクレアはリシアに臆するところがあった。何一つ憚るこなく、複雑な立場を踏み越え、好いた者に愛を伝える強さを眩しく思えた故である。それはクレアには成せぬ事であり、ミユキに近しいものを感じていた。一人の男の為、厭離穢土を決め込んだ高位種族を近代史上に連れ出す真似をして見せた狐娘は、ただひたすらに眩しかった。


 だが、その根拠となった人物は総てに背けた。


 今は亡き狐娘からも、紫苑色の髪を持つ情報将校からも。


 最早、躊躇などない。


 ただ思う儘に護るのだ。


 臆する要素など何一つもない。



「私は貴女が嫌いです」



 直截に、残酷に、明確に。


 事実を提示する。


「護れなかった貴女が、さも当然の如く皇都を闊歩するなど虫唾が走る。今更、何を成すというのですか? 北部で出世街道を謳歌すれば良いでしょう?」


 それはクレアの偽らざる本心であった。


 無論、自らが沈黙していたという事実を以て不信感を避けつつも、クレアはリシアを追求する。トウカの存在を気取られる可能性を避けつつも、彼女は紫苑色の髪を持つ憲兵将校を糾弾した。


「死者は何も語らない。(むくろ)に何をさせる心算ですか?」


 喪って尚、その権威に縋って物事を継続するならば、必ず破断点を迎える事になる。本質的に喪われた権威の行使とは、空手形による身の丈以上の振る舞いに他ならない。無理は必ず組織の奈辺に生じる。


 死者は言葉を発する事はない。


 ただ願う者達の背を優しく押すだけである。


 それ故に始末に負えない。


 ただ、都合良く自らの振る舞いを肯定する権威者。


 国家が死せる英雄を尊ぶ理由はそこにある。死せる英雄の言葉は(はか)ること容易く、国家は彼らに思う言葉を添えて操る。故に国家は英雄を国家の専有物と望むのだ。


「死んだという傍証すらない中で、貴女は死を肯定するのかしら?」


 リシアが一心にクレアを見据える。


 教卓の上に立つクレアは、リシアを無表情で見下ろす。


 二人は知っている。トウカが逃げ出したのだと。


 しかし、周囲は知らない。


 戦闘中行方不明(MIA)と判断されているが、公式見解として提示されている情報を俯瞰すれば、それは暗に戦死したものと判断できる様に最大限の偏向(バイアス)が加えられていた。


 限りなく戦死に近い戦闘中行方不明。


 トウカの軍事的権威を最大限に利用する上での政治的判断である。


 戦死の場合、明確に帝国の武勲となり、不明確であれば謀略の一種である警戒させ、安易な政戦の動きを国内外共に掣肘できる利点がある。


 皇州同盟軍参謀本部は、トウカの戦闘中行方不明を最大限に利用する事を選択した。


 クレアは、それを残酷な事だと思いはすれど、組織人として参謀達は最善の判断を下したと称賛を惜しまない。そうした決断のできる人材をトウカは選択し、彼らはその義務を果たしている。誰彼憚る事なき参謀集団の在り様を体現する皇州同盟軍参謀本部は政治にも露骨に足を踏み入れたのだ。それはトウカという武魂烈々の戦争屋が一身に受けていた批判の矢面に立つ立場に進み出たという事に他ならない。


 騎士の気性が抜けぬベルセリカだけで政治はできない。政務卿であるダルヴェティエ侯も北部という地方政治に忙殺されており、エルゼリア侯は元より政治に向かない。


皇州同盟の悲喜交々は、トウカの処遇を残酷な形で決定した。


「では、生存していると?」クレアは問う。


 自宅に居ます、とは口が裂けても言えないが、彼が自らの意思で歩みを止めた以上、皇州同盟が求めて止まない軍神は幻影となったのだ。それでは戦死と変わらない。


「それは……あれが死ぬと思うの?」


「感情論で組織を振り回すのは賢明ではありません」


 ベルセリカはリシアを皇都に派遣しての捜索を許容した。


 リシアの進言と追認の賜物であるが、そこに情報部の気配がない事から、クレアは関わる人員が極少数、或いは皆無であると見ていた。故にリシアの動きは皇州同盟軍参謀本部による一種の政治的演出(パフォーマンス)に過ぎない。


 ――彼の戦死を、或いは予想した者が居るのでしょうね。


 軍閥の枢機を担う稀代の戦争屋。それが失われる事を想定するのは、参謀という生き物にあって然るべき資質である。無論、手際の良さに参謀がトウカの死を画策したという可能性も生じるが、その場合、情報部が沈黙を選択する事はない。


 ヴェルテンベルク領邦軍が前身である皇州同盟軍情報部と領都憲兵隊は、マリアベルとトウカの意向の影響を色濃く受けている。予算増額に前向きなトウカを失う真似も看過できない二つの組織……特に情報部などは参謀本部の周囲を洗い出しているはずであった。


 未だ情報部が声を上げていない事は、参謀本部がトウカの死と関係していない事を示しいている。そもそも、トウカの牙城である参謀本部の防諜は厳しく、裏切りは容易ではない。


「例え生存成ったとしても、閣下が再び戦意を示されるとは限らない……仔狐を失ったのですよ?」


 クレアとしても再び立つというのならば喜ばしい事であるが、そうでないならばそれもまた止むを得ないと考えていた。無理をさせるくらいならば、二人でひっそりと皇国の奈辺で住まうという事も、彼女にとっては悪い選択肢ではない。


 見初めた男の望む儘に振る舞い、そして堕ちて往く。


 天使に育てられた故の在り方が、クレアにトウカのいかなる振る舞いをも赦した。



 ――あれは私のモノだ。



「…………私が居るわ」少しの間を置いてリシアが応じる。


 何時もの自信に満ちた姿ではないそれを、クレアは心底と軽蔑する。


 既に周囲を巻き込み、武断的な姿勢の下で邁進する軍神が喪われた事をクレアは知っている。在りし日のトウカとは違い、脆い硝子細工に成り果てた。リシアに引っ張られては砕け散る事は間違いない。


 己が(よすが)となる自信がないならば、トウカを再び歴史の表舞台に立たせる真似をするべきではない。


 クレアは武道場への集結を憲兵将校達に命令すると歩き出す。


 リシアも寄り添う形で続く。


「可能性があるならば諦めるべきではないわ。戦争も恋愛も……」


 実に歳若い将校な物言いに、クレアは苦笑を零す。


 クレア自身、リシアとは然して変わらぬ年齢の容姿に見えるが、妖精系種族の天命として、些か長くヒトの世を渡り歩いてきた。戦争で低い可能性に縋り付くには、相応の理由が要ると知っている。少なくとも、そうでなくては誰しもが納得しない。己すらも。なれば恋愛もまた同様なのだろうと、クレアはリシアを一瞥した。


「貴女も私も、所詮は替えの利く将校に過ぎないのです」


 私生活に関わる事のなかった二人が、トウカに寄り添う事は難しい。


 ――だからこそ私も……


 距離感を測りかねていた。取り敢えず、酒を与えておけば機嫌は持ち直すが、それでは心身の疲弊を招く。飲酒は代償行為としては余りにも負担が大きい。


 総ての関係が決まりきった後、それを変えるのは容易ではない。死して幻影となった者相手ともなれば尚更である。そうした意味でも先の言葉は、クレア自身に対するものでもあった。


 皇都憲兵隊司令部の裏口を抜け、二人は併設された武道場に足を踏み入れる。


 武道場という名称で呼ばれているが、床はなく地面であり、強固な壁と屋根が用意された。修練を行う施設として扱われているが、同時に有事の際の集結地点や物資集積所としての運用が想定されている修練上は武骨で胃て堅固な造りとなっていた。


 皇都擾乱では憲兵隊や警務官の野戦病院として機能し、その建築当初の本分を果たした武道場だが、今はクレア達以外の姿は窺えない。


 人払いをした訳ではなく、皇都擾乱から続く影響を脱し切れず、皇都に突入する構えを見せる皇州同盟軍への対応を迫られており、人員の大部分が出払っていた。


「閣下、中々良い軍刀を確保されましたね」


「少佐、量産品です。然したる差異はないでしょう」


 検品で不合格とされていないならば、然したる性能差はない。銃火器などは生産工場や製造品番毎の差が目視可能な性能差にまで出る事は珍しくなかった。しかし、構造物としては酷く単純な軍刀に目視可能な性能差が出るとクレアは考えなかった。


 強度不足は製造単位(ロット)毎の検査で選別されて排除される。規定上の数値を満たしているならば、運用の不備はないと見ていた。


「いや、慣れると分かるのですが、重量の兼ね合い辺りも大きいですね。当然、流派と個人で好みも変わりますが」


 アヤヒの指摘に、クレアは眉を顰める。


 トウカが刀剣の配備に関して一切口を挟まなかった理由を察した為である。複雑怪奇な地政学的理由の存在と魔獣の徘徊する厳冬の地であるがゆえ、武芸に通じる者が多い北部。身近な武器である刀剣に拘る姿は容易に想像できた。或いは、トウカ自身、官給品を佩用する事に抵抗があったという可能性もある。彼は個人所有の軍刀を佩用していた。


「そうした部分で揉めるからこそ、刀剣の更新や増強は低調だった訳ですね」


「まぁ、流派が派閥化している部分もありましたので」


 クレアはアヤヒとの遣り取りで、トウカが軍拡の際に刀剣の配備や運用に一切口を挟まなかった理由を思い知る。無論、刀剣よりも銃火器の射程と汎用性に重きを置くべきだという理由が最たるものであるはずであるが、新型刀剣の選定での面倒を厭うたという部分もあったのかも知れない。帰宅後に尋ねる勇気はクレアにもなかったが。


 リシアは、そうした言葉を背に壁に立て掛けられた袋竹刀を手に取り、隙の大動作で一振りする。


「酒の選定で陛下が御言葉を下さる国よ? 何を今更」


 発端となった紫芋の言葉に、クレアは溜息を一つ。


 問題を問題とせず、罪を罪としない姿勢であるからこそリシアは強い。


 自らの負い目や立場から目を背けて尚、胸を張れる狂おしいまでの勇敢さは一つの目標へと進む上では長所となり得る。


 クレアは、アヤヒから袋竹刀を受け取り、中段のリシアとは対照的に下段で構える。


 その構えに心当たりがあるのか、リシアが舌打ちを一つ。


 トウカの流派で多用される構えである。


 皇国だけでなく、下段の構えを多用する流派は世界的に見ても少ない。初手で遅れ、防禦にも難があるとされるからで、どうしても下段からの動きというものは動作時間を要する。


 トウカが多用している理由は、一重に構えの疲労が少なく、同時に軍刀で敵の斬撃を受け止める機会を戦術規模で最小限にするとの割り切りからである。戦場での遭遇戦を重視し、不意を突き、動作後の隙を斬るという至極単純なそれを成す為、トウカの流派は偏執的な姿勢を露わにしていた。


「来ないのですか? 見様見真似など恐るるに足らぬのでは?」


 あからさまな挑発。


 外野の憲兵将校の騒めきを無視し、クレアは摺り足で距離を詰める。


 リシアは動かず、更に腰を落とし、袋竹刀の切っ先を僅かに下げた。


 クレアは近付く事を止める。


 下段は下方の視界外から掬い上げる様に袈裟懸けに斬り上げる事を得意としているが、リシアが腰を落として視線を下げた為、クレアは視界外からの一撃を獲得する為の接近を躊躇する。


 腰を落とせば視界を下げる事ができるものの、踏み込みが一拍遅れる。


「……気に入らないわ」吐き捨てるリシア。


 愛しい人の剣技であれば動揺を誘えるかと踏んだクレアだが、リシアは意外な事に冷静であった。


 クレアは先手を打つ。


 左から右へと救い上げる様な逆袈裟懸け。


 斬撃の角度は浅く、身体を傾いで避け難いそれをリシアは後ろへと跳躍して躱す。


 しかし、クレアは尚も鋭く踏み込む。


 大股で沈み込む様にも見える右足からの踏み込みに、逆袈裟懸けで跳ね上がった刀身を振り下ろす。


 リシアは正面から受け止める。


 鍔迫り合いになる。


 周囲の憲兵将校達がそう考えたが、リシアが弾き飛ばされる様に後退した事で予想は裏切られる。


 片膝を付いたリシア。


 クレアは、リシアの腹部へと膝打ちを放った左足を戻して溜息を一つ。


「御座敷剣術など不要です。我々は戦場の剣を必要としているのです」


 人殺しの剣こそを望んでいる。


 敵を殺せるならばいかなる剣術でも構わない。より効率的に最小限の労力で斬殺できる剣技こそをクレアは求めるのだ。


 屁理屈と自信だけを根拠に押し込まれた過去とは違う。万難を排しても成さねばならぬ事が、今のクレアにはあるのだ。


「さぁ、来なさい」


 クレアは再び下段……右へと傾ける様に袋竹刀を構える。


「上等よ!」


 上段に構えたリシアが飛び掛かった。









 トウカは居間に置かれた白の向日葵を眺めていた。


 植生の違いは大きな変化も小さな変化も多種多様で、理解し難い部分も多い。それでも尚、美しさを損なわないものは多く、気候などの変遷にも類似性があるのだろうと思わせた。無論、そこに魔術的な要素まで加わった事で、トウカには予想もつかぬ生態に転じた動植物も多い。


「なんだかなぁ……」


 御猪口で米酒を啜る様に口に含む。


 濁り酒だけあって濃厚な風味が口内に広がり、米の甘さと豊潤な薫りを酒精(アルコール)が鼻腔へ伝える。裏の表記を見れば、神州国産である事が窺え、クレアの交友関係の広さに、トウカは唸らざるを得ない。偏屈な戦争屋には、遠大なる交友関係など想像の埒外であった。


 憲兵将校の癒着というものに腐臭が漂う気がしたが、生真面目にして情報部は憲兵隊の監視を怠っていない。高位種や中位種は、その起源ゆえか義務に対して酷く忠実である。クレアもまた義務というものに夢を見ていた。


「なんだかなぁ……」


 夢を見た挙句、元より手にしていたものを失う。


 夢の代償が最愛のヒトの生命とは、トウカは予想していなかった。出来の悪い物語の如き結末に、トウカは腹を立てていた。ヒトの感情の段階として、悲哀は憤怒に転じ、今のトウカは夷狄の破滅を望んでいる。


 己への怒りは最早ない。


 元より純軍事的な、戦略次元での失敗をトウカは認めていない。皇国国内への調略や判断は正しいものとは言い難かったものの、情報網に掛からない相手には善戦したと言える。加えて皇国へと侵攻した帝国軍の大部分の捕殺を成し遂げつつあり、匪賊化した一部の残敵掃討が続いている程度に過ぎない。


 軍事的には、トウカは一度たりとも敗北していない。寧ろ、敵の屍山血河を築き上げ、異邦人でありながら国家鎮護の任を存分に果たした。


 しかし、ミユキは喪われた。


 直接的原因は帝国にある。


 トウカは端的に原因を決めていた。


 己に総ての原因があるなどという被害妄想染みた思考は早々に捨てた。精神論や感情論ではなく、客観的に見て直接手を下したのが帝国軍である以上、その点だけは疑いなかった。侵略の意図明確にして、皇国北部占領を明確に宣言する帝国は明確に責任を有する。


 しかし、果たして帝国だけなのだろうか?


 帝国の増長を放置し、戦力集中も行えない政府や貴族にも責任の一端を担う。そして、そうした部分を放置した権力者にも責任はある。


 権力者とは誰か?


 政府閣僚や七武五公に有力貴族。


 そして己でもある。


 トウカは北部で絶大な権力を持つ。


 だが、どうしろというのか?


 権力を得る為に切り捨てた他勢力との信頼が連携を消極的なものと成さしめる。


 トウカの政戦は行き止まりだったのだ。


 巡り巡って自身の振る舞いは、自らの選択肢を無くした。


「これが軍神か。こんなものが軍神だというのか。とんだお笑い種だ」


 政戦両略などと嘯いても、世界の片隅で血涙を撒き散らす程度のものに過ぎなかった。代償は最愛のヒト。


 そうした思いを抱くトウカであるが、それすらも疑わしいとすら考えていた。


 己の判断が正気と正常の産物であると、一体誰が証明するのか?とトウカは自嘲する。


「奈辺の神にでも問うというのか? 馬鹿らしい」


 その神とやらも存外不甲斐ない存在であるとトウカは確信している。


 魔術的に見て存在が確認されているとはいえ。近代に突入してヒトの世に介入す事が無くなったという事は、神々もまた衰退していると推測できる。信仰心の不足か妄言を撒き散らし過ぎたが故に見放されたのかは不明確だが、彼らの不介入は客観的事実であった。


 トウカは徳利から御猪口に米酒を注ごうとするが、手にした徳利は軽い。


 酒瓶を憎々し気に睨む。


 酒瓶から徳利に入れ、御猪口に注ぐ。実に手間であった。


 トウカはがしがしと頭を掻き、立ち上がると台所に足を踏み入れ、戸棚から硝子杯(グラス)を取り出す。本来、茶や水を飲む際に使うものであるが、それなりの量を注げて面倒が少ない。


 椅子に座り直し、硝子杯(グラス)に米酒を注ぐ。


 最近は白米を食うならば、米酒を飲むという日々を過ごしていた。


 酒を飲めば、小難しい事を考えてしまう事もない。


 クレアの居ない昼間は基本的に米酒である。


 米がないなら純米酒を呑めばいいという話に過ぎないのだ。


 原料は同じで、液状化して酒精(アルコール)が入っているかの違いに過ぎない。寧ろ、酒精(アルコール)が入っている分、御買い得な印象すらある。


「つまらん事を考える。これも酒が足りない所為だ」


 トウカは米酒を煽る。


 程よく身体が熱を持ち、トウカは襟元を緩める。


 クレアによるトウカの私服は未だ完成していない。トウカとしては凝らずとも好いのだが、クレアは納得できないのか、強度と象意に酷く拘っていた。外へ出て誰かに御披露目する訳でもなく、屋内で管を巻くには過ぎたる私服となる事は間違いない。


 そうして時間も気にせぬまま居間で酒を煽っていると、玄関扉の開く音がする。規則的な軍靴の音に、短かな帰りを伝える声。


「閣下……」


 居間へと足を踏み入れたクレア。部屋の臭気に眉を跳ね上げて窓へと近づくが、屋外からの視界を気にして断念する。そして、机上に掌を載せて何事かを呟くと臭気は遠退く。


「こんなものもあるのか。大した机だな」


 机の縁の模様だと見ていた部分が魔術刻印であったと知ったトウカは大層と驚く。臭いの生じる料理の際には素晴らしい活躍を見せるだろうと、トウカ米酒を口に含む。


 マイカゼとの焼肉などでは見かけなかったが、客が帰った後、店員が行っていたのだろうか、とトウカの思考は逸れようとするが、クレアが硝子杯(グラス)を奪い取って米酒を一息に煽る。


「お嬢さん、いい飲みっぷりだな」


 言わねばならぬという得体の知れない義務感に突き動かされたトウカの言葉に、クレアは乱暴に椅子へと座り、硝子杯(グラス)を差し出す事で応じる。


 トウカは黙って酒瓶を手にして米酒を注ぐ。


 良く見てみれば、軍装は薄汚れており、軍帽の姿は頭上になかった。


「暴徒鎮圧にでも動員されたのか?」


 トウカの知る限り、周辺に慌ただし気な気配はなかった。


 新聞の内容を信じるならば、皇都での暴動は極めて低調である。航空歩兵の監視と誘導された警務隊や憲兵隊が忽ちに駆け付ける為、大規模なものとなるまでの時間的余裕が暴徒に与えられないのだ。天使系種族の魔導資質を踏まえれば、空飛ぶ魔導砲兵とも言える。ナポレオン曰く、「下層の民衆運動を叩くには、理屈では叶わず、砲兵を用いて潰すに限る」との事であるが、その言葉は正しい。


 響き渡る砲声は戦意を打ち砕き、団結を忽ちに失わせる。


 第一次世界大戦に於いて兵士の精神疲労(ストレス)反応を研究した軍医が、塹壕陣地に対する砲撃により精神疲労が生じると考え、そうした症状をシェルショックと呼称した。


 つまりは訓練を経て戦場に出た正規軍人ですらも、砲声には心胆寒からしめるものがある。


 直撃せずとも、民衆による戦列など容易に壊乱させ得る。


 暴徒の鎮圧でクレアが前面に出なければならない程の騒乱の音は、トウカの耳に届かなかった。無論、砲声も銃声も。


 しかし、暴徒はいた。


「貴方の引き立てた情報大佐が暴徒であるというのならば、恐らくはそうでしょう」


「あ、そう」


 深く訊ねてはならないと察したトウカは、台所へと後退し、幾つかの硝子杯(グラス)と冷蔵庫から水の容器を取り出して居間へと戻る。


 リシアは諦めの悪い将校である。


 対応は常に攻撃的なもので、攻撃こそが本質の野戦将校に適した資質を持つ。些か直線的にして直情的な部分はあるが、情報将校となって以来、そうした点は是正されつつあった。しかし、皇都擾乱時の振る舞いを見れば、未だその闘争心が失われていないと分かる。


 皇都擾乱の際、リシアの〈北方方面軍司令部〉を経由し、陸軍参謀本部に対して要所防衛を提言しだが、その対象に各新聞社はなかった。左右両派は、自らの意見に日頃より敵対的であった新聞社を襲撃。新聞社の社員に多数の死傷者が出る事態となった。


 トウカも新聞社を毀損する命令を非公式に通達したが、それはリシアの命令と重なる部分が多い。


 彼女は、直線的な行動以外で敵を退ける事を成すようになった。


 それでも本質は変わらない。


「詰まらぬ意地を張ってしまいました……後悔はしていませんが」


「まぁ、嗅ぎ回っているのだろう? 叩けば暫くは動きも低調になる」


 トウカとしては、自身を嗅ぎ回る真似を避けて貰いたいところであるが、総司令官を簡単に諦められる程度の指揮をしていなかったとの自負も彼にはある。愛を囁かれた、否、叫ばれたという過去もあり、忘却の縁に追い遣れと吐き捨てるだけの強弁は成せない。


 啜るように米酒を口に含むクレアの横顔は不貞腐れているようにも見えるが、それでも尚、彼女は育ちの良さを節々に窺わせる。


 クレアの手や白皙の横顔に傷がないと見たトウカは、盛大に体重を椅子に預けた。軋む木材達の不協和音。


 既に夜の帳は降り、トウカも程々以上に酒精を腹に詰めている。炭水化物代わりの米酒なのだから酒という水分で腹を満たす事に躊躇はなかった。


「まぁ、飲め飲め。酒で忘れてしまえ。どうせ暫くは休みだろう?」酒瓶を差し出すトウカ。


 場末の居酒屋で夢破れて苦しむ若者を、後戻りできない道に引き摺り込む髭面の中年の如き有り様である。


 しかし、酒という人類最古の友人は確かに己を助けたという実績があり、トウカとしては胸を張って紹介できる自慢の相棒であった。


「……非常呼集が掛かるかも知れません」


「それは面倒が増える悪手だろう。皇都の連中も、そこまで阿呆じゃないだろう」


 皇州同盟軍の軍人が皇都の騒乱に再び顔を出せば、内戦の延長線上として捕らえる者は少なくない筈である。単なる右派と左派の暴力沙汰に留まらない。後背を扼し、〈ヴェルテンベルク統合打撃軍〉に皇都突入の支援を目的としていると誤解されては、国内諸勢力の大部分にとっての不幸である。


 皇都決戦は流石に負担が大きく、周辺諸国に付け入られる隙となりかねない。


 挙句に勝者が得られるのは、戦禍に傷付いた大都市である。


 トウカは、そうした意味でも帝都での戦闘はないと見ていた。


 ――まさか、矜持や遺恨で市街戦をやらかす真似はしないだろう。


 内戦時のフェルゼンは最終決戦であり、当時の北部統合軍にとって軍需産業の中心であった為、尚も決戦を避けるという真似はできなかったが、現状の皇都は当て嵌まらない。兵器と弾火薬の欠乏が加速する前に、強要された結果がシュットガルト湖畔攻防戦の真実である。トウカは尤もらしく理屈を並べたものの、実情は公爵達による絶妙の戦力投射と戦略の前に選択肢を失ったに過ぎない。


「有り得ない可能性を追い掛けるのは疲れるだけだ」


「そうですね……そうかも知れません」


 クレアの硝子杯に、トウカは米酒を注いだ。


 それ以降の記憶は曖昧となる。






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