最終話! 受け継がれる冒険――!
ヒロキくんは石でした。
何かを考えたり、思ったりすることはありませんが、何か衝撃や刺激があれば、削れることもあるし、吹き飛ばされて転がっていきます。石は動かず、なにもせず、ずっと固まっています。
石が生まれて、少し経ったころでしょうか? 彼は沢山の人間に囲まれました。たくさんの人間のうち、石に話しかける大人の警官もいました。
君は――くんだね――
お父さんもお母さんも心配しているよ――
歩けるかい――
警官がその石を持ち上げると、どこかへ連れて行きました。大人たちは深刻そうに話し合い、石を病院に連れて行く事が決まりました。意識が戻るまで、それを置いておくつもりです。
石が病院に置かれてから、多くの時間が経ちました。ヒロキくんのお父さんやお母さんはもう、彼が回復するのを諦めています。二人には幼い娘が誕生していて、もう8歳になります。
その娘は、両親に愛されていて、そして、両親を愛していました。
だから、娘は邪魔なその石を食い殺しました。両親を困らせる石を恨んでいたのです。娘の倍くらいある大きい石を、何のためらいもなく、ガブガブと齧りつくと、彼女に異変が起こります。見えるものすべてが一変したのです。
その一変した見える物の中で、特に気味が悪いのが、キャベツの葉でした。その緑色の葉っぱはA3の原稿用紙の様で、小説の一部に思われました。それが足跡の様に、道に置かれています。
それを辿っていくと、図書館、さびれた商店街、嗤う花、浮遊する唇、腐った牛の死体を経て、キャベツの葉っぱだらけの村に到着しました。
目玉の飛び出たキャベツの迎えが来ました。
ありがとうございました。