童話:この世で一番のタカラもの、シアワセもの。 作者:――――
『或る所に、海老オヤジが名前の、奇妙で奇妙な、海老と加齢臭の融合生物が人気のな所に住んでいました。
海老オヤジと言うからには、もちろん、『きりゅりょ! きじゅるる!』と奇声を発し、好物のアルコールを人間の貯蔵庫から盗み出す毎日を送っています。この生物に恥とか、プライドとかはなく、ただ下劣な品性しかありません。
海老オヤジの半身がもげました。
それは突然な出来事でした。
神さえ怒りを忘れ、呆れと同情する彼の醜い姿に、誰が憤慨し、蹂躙したのでしょうか――? この汚物に何らかの攻撃をすれば、醜い臓物が吹き出す光景は必至です。それを知った上でか、それとも、それを予想していなかった阿呆の所業でしょうか――? 汚らしい海老オヤジはそれを知る事なく、昇天をしました。
或る所に、奇形のカエルがいました。それは人間の足や手の指が無数に突起物として生えている造形で、その芸術的な生き物は、たくさんの人を魅了してきました。
彼は高い値札をはられて、貴族に売られました。時々大勢の前に姿を晒しては、皆が皆決まって、美しいとか、神秘的とか、安い美辞麗句を並べます。籠の外から出られない生活に、飽き飽きしているカエルでしたが、外の世界への憧れはありませんでした。籠の外の世界にあるのは、安い人間ばかりの世界と、偏見があったからです。
籠の外から、妙なものが侵入してきました。
それを見たカエルは、驚きました。
液体が降ってきたからです。
カエルは湿った環境が大好きです。渇きに敏感なのです。丁度、乾いていた所だと喜んでいました。歓喜した途端に、カエルは死にました。
或る所に、猫がいました。美しい猫です。醜くも無く、芸術品の様な個性もありませんが、すらっとスリムな体型に、整った毛並みは確かに、美しさがあります。
そんな猫もどこかの芸術的なカエルと同じく、動物好きの貴族に買われ、広い豪邸の中を自由気ままに、猫らしく風の様に、豪奢な部屋に訪れ昼寝すれば、輝きがうっとおしいと言いたげな顔であくびをして、部屋を抜け出し、人気のない物置で少し探検したりしていました。
猫はやはり自由なので、主人の部屋へと風に吹かれていきます。主人の部屋は生き物が多くて、猫はすぐにでも退こうかと思案しましたが、主人の部屋にあるお酒が運ばれているのを発見しました。猫は動いているものにとても敏感です。姿も見せないそれにすぐさま飛びついては、ターゲットを破壊しました。しかし、それが支えていたお酒はどこかの籠の中へと注がれました。
ぱちん、
指が鳴る音です。
そうわかった瞬間、アルコールは発火して、そこいらに危険なオレンジ色が支配しました。そこの籠にいた生物だけでなく、そこらじゅうにいた生物はオレンジの魔の手によって、死に絶えていきました。
しかし猫は生き残りました。
猫は美しいから、全てのものに優遇されるのは当然であり、それはどんな生物をも殺しつくす力を持つオレンジも例外ではないのです。例えどんな芸術が、醜悪が、そこにあろうと、猫に及びません。
猫の気ままは野良でこそ楽しめましたが、餌には苦労をしました。なので今は、私が毎日毎日、決まった時間に餌を与えています。 美しき白猫はこうして、完璧な自由と、安定した餌の供給と、私という幸せを得る事が出来ました。
幸せになるべき私と猫は、一生、幸せです。
めでたしめでたし』