付き進め! 冒険がある限り、ヒロキくんの足は止まらない!
※ 縦書き表示の方がいらっしゃいましたら、お手数ですが、横書きにしてもらえると、ありがたいです。
キャベツの女の人に気付かれないようにヒロキくんは後を付けましたが、不思議な事に、キャベツの女の人が目的の場所まで進むにつれ、道路や人工の建物から離れて、禍々しくて空気を汚すような自然の世界に近づいていました。
ヒロキくんも図書館まで帰る道がわからなくなり、不安になりました。地面に生えた人間の髪の毛が靴に絡まって、それをしっしと払うと、体勢を崩したヒロキくんはその場で転んでしまい、捨てられたチラシのゴミがその姿を嗤います。
それでもキャベツの女の人を追いました。キャベツの女の人が、が図書館までの戻り道を知っている事も理由です。
でも、嗤い声へ不審を思ったキャベツの女の人はヒロキくんがいる方向をふり向きました。
「君は、」
ヒロキくんは怯えましたが、キャベツの女の人から悪意や嫌悪が無い様子に安心しました。
「ここまでついてきたの?」
ヒロキくんは頷きました。
「……。しょうがないわ。おいで、村まで案内してあげる」
キャベツの女の人の隣にヒロキくんは並びました。そこで、キャベツの女の人はヘドロ道にうんざりするように、
「この辺りは危ないから、あんまり子供は来ない方がいいのよ」
と言いました。ヒロキくんも肝に命じました。
「何歳?」
ヒロキくんは11と答えました。
「11才、なら小学生なのね。私は高校生よ。南原北高校に通っているわ」
ヒロキくんは南原北高校を知りませんでしたが、高校生はヒロキくんにとって大人の様な存在で、だからキャベツの女の人はとても強くて、物知りで、立派な人だと勘違いをしました。
「この牛の変死した死体を登れば、村に到着よ」
キャベツの女の人が示す所には、たしかにぐにょぐにょしていて、臭い有機物がありました。あまりに臭いので、ヒロキくんだけでなく、キャベツの女の人も鼻をつまんでいました。
「ここよ、ここが村だわ」
その場所は人間の感情をミキサーにかけたような黒い粉が降っている村でした。そしてとても人が住めるような施設は見当たりません。ヒロキくんは少し疑いましたが、村の入り口にはこんな歓迎の言葉がありました。
『ここの誰もが護っているルールがある
いくつかあるけれど、この村では原則だ
私達は助け合うし、護り合う。ただ、ルールを優先する
者にだけにだ。どんな理由をあなたが言い
訳をしても、私たちは罰に躊躇しない
心の、悪魔を殺してほしい この村に襲いかかる、女の悪魔を』
それはどこか違和感のある文章で、まともには読み取れない、作成者の別の訴えがあったように思える。ただ、ヒロキくんはルールを護る事以外の意図を、察する事が出来たのかは、本人さえも知らなかった。