余儀なくされた新天地――そこに待つものとは!?
「ヒロキ……転校をしましょう……」
しばらくして、形の崩れた泥団子のようなヒロキくんのお母さんが泣き崩れながら提案しました。
「転校……引っ越しをするの?」
「そうよ……もうあの学校は嫌でしょう? クラスメイトにも会いたくないでしょ?」
「そんな事ないよ、みんなボクと仲良くしてくれるんだ」
「うっう……」
また顔をぐちゃぐちゃな形をするヒロキくんのお母さんでした。
ヒロキくんがぼんやりしていると、三日月が引っ越しをするとヒロキくんに伝えました。
ヒロキくんは退院と同時に初めて訪れる土地で生活する事になりました。ヒロキくんは車の窓から景色を眺めていましたが、その場所は背中に信号機が生えている老人が歩道を歩いていたり、人間の足が突き刺さったカエルが川に住んでいたりと、君の悪い町でした。ヒロキくんは少し怯えましたが、父や母も時々、人とは思えない化け物に変化するのを思い出すと、怖くなくなりました。
新しく住む家をヒロキくんはよく思っていませんでした。この地に移ることで、前の学校の友達を裏切った自分が、どうしても許せなかったのです。夢を見るといつも、彼らは自分を非難する顔でヒロキくんを見つめ、ヒロキくんの言葉を無視します。便器の水を飲むと、いつもみんなは笑ってくれるのですが、そこにいる友達は動じません。夢は彼らの顔ははっきりと映します。なので、夢から覚めた後もヒロキくんはしっかりとそれを覚えています。
ある時、三日月形の泥の塊の様な顔をした女性が、彼を駄菓子屋に連れて行きました。そこには今にも消えて無くなりそうな蝋燭が肥った老婆の形をしていました三日月形の泥団子が軽く会釈をしました。けれど蝋燭は反応をしません。ただ、ヒロキくんはわかりました。その蝋燭の奥にある目の力は、ヒロキくんをギシギシと鋭く傷つけていました。
ヒロキくんは怖くなって、目に映った駄菓子をすぐに選択すると、三日月形の泥団子にねだりました。すぐにこの場を離れたかったのです。
ヒロキくんはこの地で生活してすぐに、ここが嫌いになりました。