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我が事務所の(恐らく)平凡な朝 その1

バンバンバン!バンバンバン!


 特区ゼロエリアにある、玖ノ木(くのぎ)警備事務所兼自宅の一室のドアが乱暴に叩かれ、大きな音を立てる。

 ベッドで惰眠を貪っていた俺は、布団の中でもぞもぞと体を動かし、眉間にしわを寄せた。うるさいなぁ、まだ超絶眠たいんだが…。

 自己の激烈な睡眠欲に従いベッドの中に籠城していると、ドアの外から声。

秋悟(しゅうご)さーん?詩織(しおり)さんが朝食もうできるってさ。だからさっさと下の店まで降りてきてー」

 むう、(みお)か。起こしに来てくれたのはありがたいが…流石にうるさいぞ…。

 ずるずるとベッドからはい出つつ、ドアの向こうに声をかける。

「ん、分かった分かった、分かったって。もう少ししたら下行くから先にいって待っててくれ」

 はいはーい、そう答えたミオはパタパタと下の階へ降りていった。

 はあ、しゃあない…起きるか。

 部屋の中にある洗面台へと向かい、蛇口から出る冷たい水で顔を洗い眠気を覚ます。ぼさぼさの黒髪、少々(・・)ひねくれた性格が滲み出たけだるげな眼という、二十五年間拝み続けている見慣れた自分の顔が鏡に映った。うむ、当たり前だがいつもと変わらん朝だ。

 クローゼットから普段着のシャツとズボンを探し当て、机上の端末画面に表示させたニュース画面を見つつそれに着替える。一面の新東京市の議員汚職、スポーツ記事、芸能ニュースなどに適当に目を通していると、ゼロエリアで起きた事件についての記事が目に留まった。はぁ、また殺人か…。

 昨日の午前5時過ぎ、ゼロエリアの西にある三原(みはら)通りの路地裏で、エルドナ・エレクトロニクス勤務の会社員藤木義道(ふじきよしみち)が惨殺死体で発見されたそうだ。何者かに腹部をめった刺しにされ、血だらけで倒れていたところを近隣住民が発見し、通報したということらしい。財布が抜かれていたことと悲惨な殺害方法から、警察は強盗または怨恨目的の殺人として犯人を目下捜索中とのこと。

 今月でゼロエリアでの殺人・傷害事件二十件越えか…まだ月半ばだぞ…。ごろつきの街は今月も絶好調だな、まったく。お隣の本土とはえらい違いだ。

 …でもまあ、こんな物騒なとこだからこそうちみたいな警備事務所に仕事が来て、飯を食えるわけなんだがな。というわけでごろつきの街万歳、主にお金的な意味限定で。しかしできれば平和でかつ警備事務所になぜか仕事が来る素敵社会構造を切に希望したいところではあるけれども。そういや、この事件にビビったエルドナ社がうちに警備たのみに来ないかなぁ。うん、無いだろうな。

 利己的な自分の考え方に苦笑しつつ、着替えた俺は朝飯を食べに事務所を後にした

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