結界に阻まれて。
阻んでいるものは。
奥深い山のふもとに今回の目的地はある。
ただ、そこは亡くなった存在の強い意思で、入ることを阻まれている。
それらの対策をしなければ、学院の生徒は入れないし、3つ目の依頼を行うことができない。
ゆえに、先行して通れるようにしておく必要があった。
「私は、何人目かの、咲宮綾乃。交渉を願うわ、代表に、【翡翠】」
とある場所を通り抜けようとすると必ずはじかれる。そこが、結界の淵だと言われている。
びりっとした、静電気のような感覚が、結界に触れている最中ずっと続く。
結界に手を当てて魔力を通す。
穴をあけるわけではないので、結界の表面に魔力をうっすらと広げる要領で。
はるか頭上に、うっすらとした人影が現れる。
灰色の濁った水で人型をとっている。くぼんだ目がこちらを見、口元が動く。決して音として伝達されることのない向こうの発言は、
頭の中に直接響く。
―何をしに来た?
「かの王に逢いに来たの。私は、33人目の人形。3つくらい要件があるんだけれど、通してもらえないかしら?」
声を張り上げながら頭上の存在を見る。
人通りのない所で、かの存在が表面に出てきたということは、うっかり無関係の人がここを通ろうとした所でまったく見えないし認識しないという、ある種の
洗脳が働いていることだろう。
だからこそ安全に危うい話ができるようになる。
―契約の証は?