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五話 <視点・ルゥカ>

三日間連続投稿企画(?)第三弾。

最後です。

これより後は、また日曜日の投稿で進めていきます。

 少女が訳の分からないこと言ったすぐ後に今度は人相の悪い男がぞろぞろと現れた。ドスのきいた声で怒鳴る(かしら)、と呼ばれた男に少女は反論する。正直怖すぎる。何で普通に反論できるのか分からない。

 痺れを切らした男が一人ナイフを持って少女に迫る。

 考えるよりも先に身体が動いた。もうほとんど条件反射だ。

 やはり力では敵わなくて一旦距離をとったが、腕も向こうの方が上で避けようとしたがナイフが肩を掠ってしまった。

 そしてルゥカが一人を相手している間に他の男達が少女に襲いかかろうとした。次の瞬間、ルゥカは信じられないものを見た。

 少女を中心に突風が巻き起こり、迫っていた男達を吹き飛ばしたのだ。さらに滑らかな動作で濡れた地面を撫でるとその手で頭を指差した。

「ちゃんと手加減してね」

 およそ呪文とは思えない、むしろ誰かに注意を促すような物言いだ。

 少女が撫でた地面にはガラスで造ったような滑らかな表面をした明らかに生物とは思えない蛇がとぐろを巻いており少女の指した方へ跳んだ、いや翔んだ。

 翔んだ蛇は頭が投げた刃物を丸呑みにし、頭に届く直前に刹那の間空中で静止したあと、刃物共々まるで氷が砕けるように四散した。

「う、うわぁ!?・・・・・・撤退、撤退だ!てめぇらいつまでのびてんだ。退くぞ・・・・・・この化け物め!!」

 頭は両腕で己を庇いながら叫び、すぐさま踵を返し最後の一言を殊更大声で叫び手下を連れて去っていった。

 今のは一体何だったのだろう?わずか数分の間に驚くべきことが起こった。

「夢・・・・・・?」

 頬をつねってみる。痛い。夢じゃない。

 肩の傷を押さえながらエクルの傍まで行く。

 エクルも一連の出来事に呆けた顔をしている。

「エクル・・・・・・今の・・・・・・エクルと同じ・・・・・・」

 魔法、と掠れてしまってそこだけ音にならなかった。

「分からないけど近いものだとは思う」

 エクルもどう受け止めればいいのか分からないのだ。

 この世界でたった独りだけの魔法使いだと思っていたのがいきなり仲間かもしれない者に会ったのだから。しかも相手はまだ幼い少女で、彼女は魔法の扱いに慣れている。代償があるようにも見えない。

「あの・・・・・・巻き込んじゃってごめんなさい。わたしのせいでケガまでさせちゃって」

 おずおずと少女が近づいてきて、被っていたフードをするりと下ろす。

 まだあどけなさの残る顔は整っていてエクルと同じくらいかもう少し幼く見える。

「気にしないで、私が勝手に飛び込んだだけだから」

 ルゥカは軽い口調で返す。条件反射で意識すらしていない。

「傷口見せて。・・・・・・浅いけど広いね。女の子だもん痕が残ったら嫌だよね。君は・・・・・・もしかしてわたしが気づかないうちに何かされた!?」

 顔色の悪いエクルを覗き込んで慌てる。

「あ、いや・・・・・・違う、これは別に・・・・・・」

「そう?ホントに?なら、いいけど。・・・・・・ちょっと待ってて」

 曖昧に答えるエクルを気にするふうでもなくガサガサと自分の荷物から布を取り出してルゥカの傷の止血を始めた。

「ホントにさっきの人達人の話を聞かないんだから。鍾乳洞を探索してたらすごい音がしていきなり水が流流れてきて、あっという間に流されて気がついたら外に放りだされてたの」

あ、それって・・・・・・。

「ちゃんと説明したのに。君達も流されたの?」

 それってもしかして私が抜いちゃった石に関係することだよね?

 エクルも同じ考えに至ったのかルゥカを見たが、罪悪感を覚えて目を逸らしてしまった。ごめんなさーい、と心の中で謝る。

 そんなルゥカの心情を知るよしもない少女は一人憤慨する。

 後先考えすにすぐに行動してしまうのはルゥカの悪い癖だ。それに比べ、エクルは良く考えてから冷静に判断する。

「人の話はちゃんと聞きなさいって教わらなかったのかな?」

 完全に少女のペースに呑まれている。

 聞いたことのない言葉で歌を口ずさみ始めた少女はきれいな澄んだ声で、聴いていると肩の痛みや疲れがとれていくようだ。

「よし、もう大丈夫かな?」

 押さえていた布をめくり傷口を確認したあと新しい布でまた巻き直す。

「巻き込んじゃってホントごめんね?それじゃ・・・・・・あ、近くに人が住んでるトコってある?」

「え?それなら南に二時間行った所に町があるけど」

 エクルが答える。

「南ね?ありがと」

 礼を言い、手を振って何もかもが謎な少女は去って行った。

――――しばらく少女の後姿を見送っていた二人だが、休んだせいか軽くなった身体で一度町に戻りとってあった宿に戻った。

「姉さん」

「なに?」

 ずっと黙ったままだったエクルが口を開いた。

「あの女の子に訊きたい事がある。あの子の使ったあれが魔法にしても相でないにしても」

「・・・・・・」

 無言で先を促す。

「もしかしたら一千年前の魔法使いについて知ってるかもしれない。何か手がかりが見つかるかもしれない」

「うん、わかった。あの子を探そう」

 迷うことなく二つ返事で良いと言う。自分の弟の事だもんそうくると思ってた。もしエクルが言い出さなくても私が言ってたけど・・・・・・。

「よし、まずはどこにいるかだよね。町の場所を訊いたんだからこの町のどこかにいるよね?私達みたいに宿とったのかな?」

「手分けして町の中を探そう」

「そうだね」

 日が落ちるまでにはまだ時間がある。二人は湿った服を着替えると町にくり出した。

 たくさんの人で賑わうこの町で一度会ったきりの人物を探すのはかなり難しそうだ。

 あの少女の言動や出で立ちから推測して町の人間でないことは分かっている。

 近くに人がいなかった事と、他に仲間がいるようなことは言ってなかったことからして少女は一人だと思われる。女の子が一人で旅をするのはずいぶんと無用心だ。あれを見た後ではそうとも言い切れないが。

 そして何より珍しい。珍しい分目立つのではないかと、というのがルゥカとエクルが出した結論だ。

 まず、宿屋を手当たり次第に回り旅人が寄りそうな店にもそういう女の子が来なかったと尋ねて回った。しかし、予想通り少女の捜索は難航しなかなか見つからない。

 日が沈み、辺りが暗くなり日中とは違った賑やかさに変わる頃、一度落ち合った二人はとりあえず食事をしながら考え直そうと飲み屋を兼ねた食堂で夕食をとることにした。

 酒を飲み盛り上がる客を背に、空いていたカウンター席で二人分の食事を注文する。

「もう町には居ないのかな?」

「可能性がないこともないけど、そしたら今頃の野宿してるはずだよ。そうするとやっぱり町で保存食とかを買っていくと思うんだ」

「まだ町の半分しか回れてないもんね。諦めるのははやいよね。明日の午前中にもう半分回って何とか追いつけるかな?」

「あまり遅くなると追いつくのが難しくなるからゆっくりもしていられないしね」

「あーもぉー。一人くらい見かけた人が居てもいいと思うんだけど――あ、ありがとう」

 注文した料理が届いた。具がたっぷり入ったスープとふわふわのパンが本日の夕食。

「ねぇ、おばちゃん。十五・六歳かもう少し幼い女の子見なかった?」

「そんなに簡単に見つからないって」

「人探し?うーん、そのくらいの女の子はよく来るからね。他に特徴はなかったのかい?」

 恰幅がよく愛嬌のある店のおばちゃんが記憶を探るように腕を組む。

「特徴?連れがいなくて一人だった。あとは・・・・・・あっ、両方に耳飾してた!」

 髪に隠れてたけど隙間からチラチラと覗いていた。

「あー、それならうちに来たよ」

「ホント!?」

「ウソ・・・・・・」

 エクルの口に運ぼうとしていた手が止まる。

「ちょうどあんたが座ってる席に座ってパンケーキを食べてったよ」

「この席?それっていつ頃?」

「えーと・・・・・・三時か四時頃かねぇ。おばちゃん甘い物ちょうだい、って言いうからパンケーキを出してやったんだよ」

「他に何か言ってた?どこに行くかとか」

「うーーん・・・・・・あ、そうそう。西の方に町はないかって訊かれたね。だから西に二週間行った所にゴードっていう町があるって教えてやったんだよ。あそこは物も人も集まる大きな町だからね」

「西のゴード?」

「なんだい、あんたらも行くのかい?それならゴードまでの道を半分くらい行った所で見えてくる森には入らないことだね」

「どうして?」

「さあ、理由は分からないけどずっと昔から言われてるんだよ。もっとも、最近じゃあ野生の動物の動きが活発だって聞くし。あーそうそう、それに加えて盗賊まで出るらしいからどちらにしろ入らないにこしたことはないけどね。まぁ、盗賊なら町から二時間行った所にある森でも出るけどね」

「そうなんだ、気をつけるね。色々聞けてよかったね、エクル。おばちゃんありがと!パンケーキひとつ追加!!」

「あいよ。待ってな、すぐに作ってくるよ」

「まだ食べるんだ・・・・・」

 ボソリと呟いたエクルの声はしかし華麗にスルーされた。

 ルゥカがパンケーキを食べ終わるのを待って二人は宿に戻り地図を広げてゴードまでの道筋を確認した。

 ここ、パロの町からゴードまでは店のおばちゃんの言ったとおり二週間かかる。

 パロから見て南に行けば海があり、東には王都に繋がる街道がある。北には大小さまざまな山が連なる山脈、通称『子守唄(ララバイ)』。

まるでこちら側とあちら側を隔て、区切るように鎮座する山脈。豪雪地帯の北方はとても人が住める土地ではなく、その手前に位置する山脈も万年雪が降り積もり、荒れ狂う吹雪の音が名の由来だと言われている。死という永遠の眠りに誘う子守唄のようだと。

「出発は明日の早朝。少しでもあの子との距離を縮めたいから早く出る。いいかな?」

「問題なし!おばちゃんの話によれば、あの子今日中にここを発ったんでしょ?野宿の道まっしぐらだね」

帰りしなに、もう一つ思い出したと言って店のおばちゃんがそう教えてくれた。

「明日は朝が早いから準備したらもう寝よう」

「準備って言ってもそう荷物があるわけじゃないけどねぇ。と、その前にケガしたとこの布交換しとこっと」

 布をほどいくといたいたしい傷があらわに・・・・・・

「あれ?・・・・・・ちょっ、エクル、エクル!」

「何?どうしたの?」

「これ見て!」

「ん?・・・・・・え?どうして?」

 今日できたばかりの傷が何の痕跡も残さずきれいに消えていた。かさぶたの痕すらなくて、もうどこをケガしたのか本当にケガをしたのかすら分からない。なにか確信めいたものを感じ二人は顔を見合わせた。


内容が重複しているので進まない、進まない。…仕方ないですね。

盗賊を撃退した時のこと、ルゥカのキズ。少女の謎が深まります。彼女でもう少し引っ張ります。



閲覧ありがとございました。

では、また日曜日に。

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