二話 <視点・エクル>
前書きにて失礼します。
お気に入り登録ありがとうございます!
気づいた瞬間声に出してごめんなさいと言ってしまいました。人間咄嗟のときこそ本音が出るものですね。なんとなく謝りたい気分だったのです…。
サブタイトルの書き方を変えました。
道に迷ったなら迷った時点でそう言ってくれればいいのにと思う。とりあえず行ってみれば何とかなると思ったのだろう。姉さんらしい。
穴を抜けると二メートル四方の空間が広がっていた。
壁にある小さな窪みには蝋燭を使っていた跡があり、天然の机と椅子があって過去に人が使用していた痕跡が残っている。
灯りをつけなくても光苔が壁のあちらこちらに生えていて物の輪郭がぼんやり見えるくらいには明るい。
幾つかある壁の窪みには蝋燭の他にも書物や小箱が置かれていてちょっとした秘密基地みたいで少し心が浮き立つ。
「ねぇ、見て。これかわいいー」
表面に小花があしらわれた宝石箱のような物を指してルゥカが言った。
エクルもパラパラと書物をめくり目を通す。どれも数百年前の物ばかりで二人が探している魔法が存在したとされる一千年前の事は少しも書かれていない。予想はしていたことだけど、こうも外ればかりだと気が萎える。
「エクル、エクル!すごいよ」
ルゥカが屈んで手招きをしている。
「何かあった!?」
「水がしみ出してるの」
どこからか漏っているのだろう。壁を伝いながらわずかな水が流れている。小指ほどの突起から細い糸のように地に落ち、そのために永い時間をかけて削れた小さな窪みに溜まっている。
「自然の神秘だね。何か秘密基地みたいで楽しかったけど探してる物はなかったね」
「うん、書かれてる事は全て紙が使われるようになってからのことだ。目ぼしいものは何もない」
「また外れかぁ~。なんだか萎えるね。気分が」
考える事が同じだ。
「そうだね」
つい笑みがこぼれる。
「秘密基地ならどこかに仕掛けとかないのかな?」
そう言ってルゥカが壁を押してみたり地面を蹴ってみたりする。
秘密基地にそんな物があるとは限らないし、そもそもここが秘密基地だと決まったわけではないのだけど。
「うーん、つまらない」
「姉さん。つまる、つまらないの問題じゃないよ」
姉の観点は時たまずれている。
「ここまで来て手ぶらでは帰れないっ!」
諦めきれずに叫んで壁を叩く。カラカラ、と音がして小石が落ちた。
「潔く引き返そうよ」
「だめよ!諦めたらだめ!諦めなければ必ず道は開けるの!」
「世の中諦めも肝心だよ」
「そんなことはないの!・・・・・・あ、何かこの石外れそう」
何の迷いもなくたまたま目に入った石を壁から抜く。一体何がしたい。姉よ・・・・・・。
「思ったよりあっさり抜けちゃったよ」
「抜けちゃったよ、じゃないよ・・・・・・・・・・・・ねぇ、何か音が聞こえる」
「え・・・・・・?」
二人で耳を澄ませる。
静寂がその場に下りる。水滴の滴る音と・・・・・・何か空気が振動してる?変な緊張感が辺りを漂う。
カラカラ、とまた小石が落ちた。と、嫌な沈黙は唐突に破られた。
「「・・・・・・!?」」
先ほどルゥカが石を引き抜いた穴から水が噴き出してきた。
水は勢いが強く穴がどんどん広がっていき、それに比例して出てくる水の量も増え狭い部屋はすぐに水浸しになる。
「エクル!」
「姉さん!」
とっさに腕を伸ばし離れないように手を握る。
ここに来るときに通ってきた道はすでに水の中で水面はもう胸まできている。
「ど、どうしよ!?」
「とにかくここから出なきゃ窒息するよ!」
「でもどうやっ・・・・・・きゃ!」
「大丈夫・・・・・・わっ!」
引っ張られる感じがして身体が傾き、バランスを崩してそのまま転倒してしまった。
ルゥカがその時何を考えていたか、エクルがその時何を考えていたか。
それぞれの視点を追っていきたいと思います。
閲覧ありがとございました。
亀の歩みで進みます。