そして、永遠で短いお話
「……私の寿命はあと二年」
「……?」
「あなたの寿命は永遠なんでしょ?」
「うん……」
「なら……その永遠を私の二年にちょうだい」
私は起き上がる。ベットの上で体育座りをする。
「……」
ポカンとする彼を私は見つめた。
「永遠に寿命はあるんでしょ。なら全部くれても永遠にある。あなたが渡せるだけ全ての永遠。いつまで経っても忘れられないような思い出。それを私の二年に詰め込んで。あなたがこれから生きるであろう数千年の……永遠の思い出を」
「……」
「ぐにゃぐにゃの線だって、見方を変えれば直線の道だよ。あなたがどんなに経っても人を愛しているのは……真っ直ぐの道を歩いてるって証拠だと、私は思う」
カーテンから差し込む光に私は照らされた。それは神様から来た贈り物。彼は電球の光に包まれていた。それは人間からの贈り物。
「……私の事、愛してくれてる?」
「あ、ああ、愛してる……」
「あなたが歩んできた何百年。私はあと二年しか生きられないけど……それでも愛してくれる?」
「愛してる。愛する。忘れないよ」
「ならよし。私の分……あなたを愛してくれていたみんなの分も……しっかり生きてね」
* * *
少女は笑った。僕の彼女は笑ってくれた。そうだ、それでいい。君のためならなんでもするよ。
不老不死って話は嘘だ。ボールペンも事前に仕込んだマジック。上手かったでしょ。一発勝負だから友達と猛練習したんだよ。口調もリアルにするために変えてみたんだ。
戦争の話はおじいちゃんから聞いたのをそのまま話しただけ。潤さんやおじいちゃんには悪いけど……好きな人のためだ。
君がずっと悲観的になってるから。僕は励ましたかったんだ。なんか僕の方が励まされちゃったな。君はいつもそうだ。僕がいいことしようとしたら、先にやってしまう。だから老い先短いくせにみんなに好かれるんだよ。
どうせすぐに死んじゃうんでしょ。僕は後追い自殺なんてできない。君が思ってるよりもビビリだから。
……幻滅なんてしないだろうね。君は僕のこと愛してくれてるのは知ってるから。だから君のことを僕も愛してるんだよ。
君の言った通り、僕は生きるよ。そして君に愛を伝えるよ。
人生百年ともいう。僕の年齢を引けば、だいたい八十年くらいかな。だから君の残りの二年に僕の八十年を詰め込むよ。
君の人生に幸があるように……違う。
──君の人生を幸あるようにするからね。
ご愛読ありがとうございました。ガバガバな終わり方でしたが、楽しみいただけたのなら幸いです