死にたいお話
「……いいなぁ不老不死って」
「いいもんじゃないよ。そっちの方が羨ましい」
──羨ましい?
「羨ましい? 私が?」
「うん」
「……馬鹿なこと言わないでよ。羨ましいなんて……ふざけないでよ!!」
怒鳴ってしまう。
「死にたく……死にたくないよ……。もっと一緒に居たいのに……」
「あぁ……その……ごめん。ごめん」
「……二回も言わなくてもいいっ!」
羨ましいなんて……なんか涙出てきた。
「……ずっとだよね」
「うぇ……?」
「前からずっと……焦ったら同じことを二回も言っちゃう癖」
「そう、だね」
「昔からなの? その……百年とか二百年前から」
「うーーーん……覚えてない」
思っていたよりも適当……。
「百年前なんて覚えてないよ。戦争中だったし」
「戦争?」
「日本史習ってないの?」
「舐めとんのか」
これでも社会の点数は良かったのに!
「戦争でねー。僕も参加してたんだよ。特攻隊でね。神風乗ったんだ」
「……神風?」
「知ってるでしょ。あれが今のところ最初で最後の飛行機操縦体験だったね」
「あ、あれって……」
聞いたこともあるし、習ったこともある。飛行機に乗って敵に突撃するって……あの、あのやつ。ほんとにあったんだ……そして彼氏は乗ったんだ……。
「いやぁ……覚えてるよここら辺は。一緒に特攻しようとしてた潤って奴がいてね。すっげぇ面白いやつでよ。靴磨く時にブリッジしたりな、おにぎりに生の小松菜ぶっ刺したようなのを食べるヤツなんだ」
「そ、そうなんだ……」
変というか……言ったら悪いけど頭おかしい。
「他にも頭がくっそ良かった羽田とか、逆立ちが得意すぎていつも逆立ちで移動してた浜西とか、禿げてるのに桂って名前のやつとか……あはは。思ってるより覚えてたわ」
なんか個性的な人が多い……昔の人ってこんなのばっかりなのかな。
……あれ?でも確か神風特攻隊に入ってたんだよね。だったら……。
「──あはは。まぁ全員死んじゃった」