事件
20XX年、1月31日・・・高校1年の冬
僕はいつものように本を読んでいた、ページを一枚一枚ゆっくりと丁寧にめくる。
文字が奇麗な列を作っていてその文字たちは素晴らしい物語を僕に語ってくれるんだ
読書をしている時が一番好き、誰にも邪魔されたく・・・
「ゆーうーじ!!」
・・・邪魔されたくないんだ。
「・・・・何?」
目の前で腰に手を当て、満足そうな顔をしている僕の幼馴染川村夢見 、家が隣同士で親も非常に仲がいいのだ。そのせいだろうか、何するにも夢見は僕の隣にいた
どの写真を見ても、必ず夢見がいる、なんだか呪のろわれているみたいに
「な!なによ!その冷たい眼は!優次の馬鹿!」
僕から本を取り上げて、その本で僕の頭をたたいた。
「いってー・・・で、何の用だよ」
このまま話を聞かなかったらなんだか殺されそうな気がして、僕はしょうがなく夢見の話を聞くことにした。どうせ、くだらない話だろうけど・・
「今夜さ!オリオン座見に行こうよ!!」
・・・僕は数秒黙りこんだ
夢見の目はきらきら光っていて、僕は夢見の目をひたすら逸らす
「は・・?何を言ってんの?」
呆れた顔をして、また本を読み始めた。夢見もいい年して星を見に行こうなんて・・・
「あぁ!もうすぐ部活始まっちゃう!とにかく今夜8時に屋上にね!!それじゃっ」
スキップをしながら教室を出ていく夢見の背中を、僕・・・いやクラス中の人間が見つめていた。
夢見は学校の人気者で、高校に入ってからいろいろと変わった。
中学の頃は、髪も短くて、まるで男みたいな感じだったが今はもうすっかり変わってしまった
ため息をついて、僕はまた本を広げる
すると後ろから頭をすごい勢いで叩かれた。その衝撃で僕は机におでこをぶつける
「おーまーえは!俺のアイドル夢見ちゃんに!」
「そう!五木はほんとに憎い男だ」
「あー羨ましいぜ」
後ろを振り返ると、僕の友人たち。中島浩二 田中宗 安部太郎 らがいた
三人とも飢えた子犬のような目をしている
「な、なんだよ!いてーな」
後ろを振り返って三人の頭を本で順番に叩いた、確かにこいつらは夢見をアイドルだとか天使だとか言っている、
「いいか?夢見ちゃんは俺らの天使だ!俺らがどんなに頑張っても触れられない夢見ちゃんにおまえときたら・・・オリオン座を一緒に見に行くだと!?」
頭をかかえ絶叫する中島。
さすがにここまで来ると気持ち悪い、僕は苦笑いしかできなかった
田中は中島の背中をさすり、安部はかわいそうにと言いながら中島を慰める。
「あーもう、やめろって・・・みんなへんな目で見てるから・・」
そう、クラス中の人間がこいつら三人をジーっと白い目で見る
「へっ?っ!」
中島が言葉を漏らした瞬間、中島の後ろから足が振り下ろされる。
その足は、このクラスで一番最強の女・・・委員長、有明 香
白い肌に腰まである長い髪。それを一つに束ねているのが彼女の証拠。
目は大きく鋭い眼をしている、まぁ一言で言うと・・・美女、だ
「気持ち悪いのよさっきから・・このストーカーが」
中島の体はボールのようにはずみ、飛ばされた。
委員長の顔は完璧怒りにあふれていた、みんなこれはヤバいと感じたらしく教室からみんなは出てった
僕もヤバいと思い2、3歩後ろに下がった
田中と安部も自分の身に危険を感じたらしく、ガタガタと震えながら後ろに下がる。
「・・・川村さん如きで何言ってんのよ。馬鹿じゃない」
くるっと後ろを向いて教室から出ていく
委員長が歩けば皆道をあける、それぐらい恐れられているのだ
そんな奴に蹴り飛ばされた田中はまだ起き上がれず、ぴくぴくしている
僕はそばに駆け寄り肩をさすった。
「おーい・・・だ、大丈夫か?」
仰向けにしてみると、田中の口からはかすかに血が出ていた
「ぃ・・・、五木・・・今まで・・ありがとうな・・ははっ・・」