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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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第二章  五十六、模擬戦



 王都から、北にしばらく向かった荒野。

 そこでは、第一王子率いる二百の兵、そして魔王が対峙していた。

 その距離は一キロほどを空けているが、これは商工会が指定した開始位置だった。


「魔王さま……本当にお一人で……」

 聖女サラが佇むのは、両者を左右に見渡せる丘の上。


 彼女の左手前方に魔王、右手前方に王子の軍。

 流れ弾が来ないであろうその丘は、彼らから均等に一キロ以上離れている。



「聖女よ。今日は我らの観覧のために、結界を張らせてすまぬな。だが、お陰で安心して模擬戦が見られる」

「陛下に同じく、このウレインもあやからせていただき、ありがとうございます」

 聖女は、国王とウレイン、そして第二王子やその護衛達も含めた二十名あまりを、結界で護るという役が与えられていた。


「いえ……些細なことですので、お気になさらず……」

 それは、聖女にとって息をするのと同じくらいの事であるから、ただ事実を述べた。


 そんな事よりも、彼女にとっては、魔王の安全を祈る方がよほど大切だった。

 ゆえに、言い回しの良し悪しなどには気が付かない。

 国王の護衛に、不遜であると受け取られようと。


「お姉様。油断なさいませんよう」

 聖女の隣に立つ銀髪の少女は、紅い瞳で護衛達を一瞥した。


 魔族であると知られた今、サラは、聖女であって聖女ではなくなった。

 少なくとも、過半数の人間はてのひらを返した態度になり、警戒と敵意を混ぜたような目を向けて来る。


「その無礼な視線、お許しになっているのは、お姉様のご慈悲だと理解できないか、クソブタども。怪しい動きをすれば、お前達の命は無いと思え」

 シェナは苛立ちを隠さなかった。

 これまでの治癒の恩を忘れ、種族が違うというだけで態度を変える愚か者を許さない。


「……し、失礼した」

 心当たりのある護衛達は、その覇気に呑まれて詫びた。

 シェナがただ者ではないというのは、後ろに立っているだけで理解してしまうほどで、さっきの一瞥だけで全身から汗が噴き出たのだった。


 とばっちりを受けた他の護衛達も、同じく全身が強張り、嫌な汗が目に入るほどに流れ出ていた。

 少し肌寒い風が、逆に心地良いくらいに。



  **



 第一王子率いる二百の兵の後ろでは、騎士団長の束ねる一万の兵が、デモンストレーションをするための隊列を組んでいるところだった。

 どちらのどの兵も、人の力では持てないような物々しい兵器を携えている。


 筋力や動きをサポートするアーマーが、それを可能にしていた。

 それが、二百と一万。

 その少し上方には、宙に浮く武装車が七十機。大砲の筒先を魔王に向けているように見える。


「そろそろ、デモンストレーションを始めよと伝えろ」

 第一王子は、待たされる事が嫌いだった。

 まだ、整列し始めてから三分も経過していないが、それを指摘する者は誰も居ない。


 石や岩がごろごろと転がっている荒野で、補助アーマーがあるとはいえ高重量の兵器を担ぎ、その上で一万人がそれなりに整列するには時間が掛かるのだとしても。

 それを指摘した事で殴られるだけならまだしも、致命傷にならない程度に剣で刺される事もあるからだ。



「まだか、クソが! 何を手間取っている!」

 これが実戦であるなら、すでに敗色濃厚であるなと、皆思っていた。

 上官が感情的な部隊から死んでいく。


 だが……今日に限っては、かなりの兵器が配備されているので、安心はしているらしい。

 相手はたった一人。ではないが、商工会が準備している玩具とやらが出て来ようと、負けるはずがないと皆、思っていた。


「早く撃たせろというに。愚図どもが」

 彼の作戦は、模擬戦が始まると同時に火力の全てをぶつけるという、単純なもの。

 それゆえに、後ろの一万がデモンストレーションを終えるまでが、じれったいのだ。



  **



「王軍のデモンストレーションか……詳細は聞いちゃいるが、妙なことをせんだろうなぁ」

 レモンドは、大事な玩具の操縦の、指揮を執る席に着いてひとりごちた。


 玩具のお披露目という楽しみと、王子が変な気を起こさないかという心配とが、半々でせめぎ合っているらしい。

 そもそもが、これを見たら皆どんな顔をするだろうか、というのが楽しみで、結局あまり眠れていないようだった。


「このままじゃあ、模擬戦の前に疲れっちまう」

 まるで子供のような興奮の仕方だが、そもそも彼は、子供心のままに玩具を作り続けているのだから、何もおかしな事ではなかった。


 ただ、レモンドが疲れて寝てしまえば、代わりを務めたい者がすぐ側に何人も居る。

 そういう状況であるから、彼はあくびまでは出なかった。

 程よい緊張よりかは、多少は辛い。

 そういう心境だった。


 ――そこに、大きな爆発音と衝撃が腹の底まで響いた。

 ドーン、という重い振動が幾重かに轟く。



「うおっ、いきなり始めやがったかぁ!」

 それは上空に放たれた砲撃で、空砲にしては響き方が、やはり重い。


「実弾でやるなんざぁ、聞いてねぇぞ!」

 ただ、近くには王子が居るわけだから、被害があるようなマネはしないはずだった。

 それでも、万が一を考えれば控えるようなものなのにと、レモンドは不思議に思った。


「無茶しやがる……」

 やがて、上空に向けた砲撃が止むと、「デモンストレーション終了」の電信が騎士団長から届いた。



「ふぅ……。ついに、こいつのお披露目、んでもって、模擬戦だぁ!」

 その玩具を使って、見せる。

 それをしたいがための模擬戦だったとも言える。


 少なくともレモンドは、調印の場で提案した時から、そうだった。

 そのつもりで……その願いは、叶ったのだ。

 レモンドは叫んだ――心のままに。


「空間迷彩解除ぉぉ! 信号弾発射! おめぇら始めっぞぉ! 総門開けぇぇぇ!」




「おもしろい!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの!」

  

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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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