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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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第二章  四十七



 快諾されたと、ウレインに伝えたその日にはもう、日程を伺う返事をもらった。

 国王よりも魔王さまの返答を優先してくれて、話が決まるまですぐだった。


 ――その当日。

 商工会の拠点、工業区。三階建ての、前の会長の屋敷――ここは、歴々の会長が使うという意味の建物らしい。



「ようこそお越しくださいました。魔王様、聖女様」

 ウレインが深くお辞儀をして、出迎えてくれた。


「本来、国賓をもてなすような場所ではありませんが……ここが最も、スパイなどが入り込めない所でございますので。どうかご容赦ください」

 彼はそう言い終わると、やっと頭を上げた。


 そして、「こちらに」と言われて通された応接室には、すでに国王が待っていた。

 王城以外で、しかも手狭な部屋のソファに座る国王も、やっぱりその威厳は損なわれていない。

 王冠とマントを着ているとはいえ、コスプレなんかとは違う、王の雰囲気らしいものが漂って見える。


「おお、聖女サラ。久しいな。二番目のアラビスが悲しんでおるから、また顔を見せてやってくれんか」

「え、ええ……。いえ。私は王宮に戻るつもりはありません。何かと巻き込まれるじゃありませんか」


 とりあえずの返事で誤魔化そうと思ったけれど、やっぱり、きっちりと断ることにした。

 ……魔王さまが隣に居るから、いつもなら言えないこともハッキリと言葉に出来た気がする。



「そして……そなたが魔王か。……前王を含め、歴々のしでかした事、ここに深くお詫び申し上げる」

 国王は、仕草こそゆっくりではあるものの、いや、むしろその静かな動きだからこそ、誠心誠意で詫びているのが伝わるような気がした。


 きちんと立ち上がり、王冠を片手に押さえながら、本当に深く謝意を示した。

 ――でも! それはずるいやり方だ!



「……良い。そなたがした事ではないのだろう。むしろ、王国の民をこの手で葬ってきた我をこそ、憎んでいように」

「魔王さまっ――」

 ――それを言うなら、そうさせたのは王国なのに!


「良い。サラ、和平のために来たのは、つまりはお互い様にしようという事だ」

「ですが……」


 そもそもが、まだ、そういう協議を始める前のはずなのに。

 先制攻撃よろしく、仰々しいお詫びひとつで、これまでの虐殺戦争を許せだなどと――。

 私は、ここで少しでも魔王さまの溜飲を下げていただけるように、国王を問い詰めようと思っていたのに。



「国王、勝手な真似をなさっては困りますな。まだこれは、顔を合わせただけにございますぞ」

 そこにウレインがすかさず、私の気持ちを代弁するように言ってくれた。


「そっ、そうです! お優しい方だと思っていたのに、そのやり方は卑怯なのでは!」

「サラ。やめるんだ」

 魔王さまは左腕で、前に出かねない勢いだった私を制した。


「聖女様の仰る通りです、国王。和平のためにと赴いてくださった魔王様に、恐れるあまりとはいえ、それでは話がこじれましょう」

 ウレインはあくまで、中立の立場を示しているように見えるけれど……。


「すまぬ。確かに、魔王を見てその覇気に、命が惜しいと思ってしまった。失礼をした。今のは忘れて頂きたい」

 それならば、一応は魔王さまの言も無かったことになるから、構わないけれど。


 どこか、芝居でも見ているかのような、そんな疑いを持ってしまう。

 ウレインは転生者とはいえ、人間だから、国王を庇うために予めそうしようと、二人で決めていたのではないかと。


「構わん。どうせ許す事にせねば、和平にはならんのだからな」

 その言葉を聞いて、私は魔王さまの腕に寄り添った。

 その深い慈悲に――それでも痛むはずの心を、少しでもお支えしたくて。

 


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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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