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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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七、召喚憑依術


 私には才能があったんだと思う。転移も保護膜も飛翔も、ブレスさえ習得するのは早かった。

 …………思い出したくもないような、訓練や修行というよりは、ただの暴力によって。

 それは竜王さんにとっては普通のことでも、私にはひとつひとつが致命的な出来事ばかりだから。


 どの竜魔法も、先ず見せてくれるまでは良かったのに……飛翔を覚えさせるために、お手本を見せたその次は私を遥か上空まで投げ飛ばす、というものだった。

 竜王の加護があるから、落ちた程度では死なんだろと言って。


 そう、受け止めてなんてくれないし、初日から魔王さまがすぐに居なくなっちゃったからかな、恐怖でひきつって固まってるのに、ほんとに投げられたの。

 何度か落下させられた後、無事に飛翔を使えるようになったけど――。

 この、物凄く納得いかない感じ、分かるかな……。



 保護膜も同じように、「再生の加減を知る、良い機会とも言えよう?」と、竜王の加護を超える力での攻撃で何度、この手足が飛散したことか。

 とんでもない力の打撃を受けると、人の体ってバクハツするんだよ? 知ってた人いるかな?

 血しぶきが破裂したみたいな感じで、小さい肉片なのか血なのか、分からないレベルで霧散しちゃうんだ。

 これもね、たったの一日で保護膜を習得できたよ。


 ドラゴンの鱗って、確かに頑丈なんだけど、やっぱり魔法の保護膜で覆われてるんだってさ。だから岩を殴って破壊出来たりするんだって。そんなの私には、どうでもいい知識なのにね。

 転移を覚えたのは、どうしても逃げたかったから。

 あの黒いモヤと電流をイメージして、どこでもいいから遠くに行きたいっていう願望っていうか……とにかく必死で切実なのは分かるよね? 

 死に物狂いの精神状態のお陰か、すぐに使えるようになった。



 ……使えたのはいいけど、こんどは鬼ごっこが始まったのよ。


 捕まったら、飛翔ではどうにもならない勢いで地面に投げられる。

 捕まったら、保護膜でも竜王の加護でも防ぎきれないような攻撃を受ける。

 捕まったら、体が半分城壁の中に埋まるように転移させられる。

 捕まったら、ブレスで生きたまま焼かれる。


 泣いても、叫んでも、震えていても、何も抵抗しなければ悲惨さが増すだけ。

 だからいつの間にか、捕まる瞬間に反撃するようになった。

 ブレスも自然と放てるようになった。

 魔法のひとつだから、口から吐かなくてもどこからでも出せるようになった。



 そんなこんなで、数日の間でいつの間にか私は――。

 三割くらいまで手加減をした竜王さんと、戦えるくらいに成長した。

 再生ありきでの、手足を犠牲にするようなエグい戦い方も体で覚えた。

 自分の防御性能をあてにして、超近接状態でブレスを使うようなえげつない戦法も。


 ドラゴンがなりふり構わず本気で暴れたら、こういう感じなんだというモノが、体に染み込んでしまった。

 一応の理由が竜王さんにもあって、私の心が優し過ぎるから、荒療治をしたのだと言う。


 ……どういうこと?

 お陰で、竜王さんを見る時の私は感情が死んでる。

 言われたことに対して、コクリと頷くだけの生きた人形みたいに。



「次は召喚でも教えてやろう」

 また、新しく怖いことをされるんだ。

 そう思いつつも、無感情で小さく頷いた。


 でも、新しいことなのにお手本を見せる素振りが無い。

 いつもと違うと思って、改めて頭に残っている言葉をリプレイしたら……。

 召喚と言っていた。

 竜王さんと最初に会った時に使われた、灼熱地獄が脳裏をよぎる。


「……あ、あれですか? でもサウザンドブレスは、私は絶対使わないですからいいですっ」

 竜たちが空を覆い尽くすほど召喚されて、一気にブレスを吐きつける。

 あんな広域殲滅魔法? 絶対に使いたくない……。


「あれは貴様には無理だ。我の魔力と、同胞との絆なくしてはな。そうではなくて、貴様に本来の従者を付けてやろうと言っている。魔王にもらったこの石をやろう。それで黄泉から未練ある魂を呼び出し、魔獣に定着させるというものだ。どういう存在になるかは、貴様次第だがな」

 いつの間にか彼女が手に持っていたのは、虹色に輝く手のひら大の、透明な丸い宝石だった。


「綺麗な宝石……虹色に光ってる。こんな綺麗な宝石、貰ってもいいんですか?」

「まぁ、出会った当初、きつく当たっていた詫びだ。魔王からの横流しだが。あやつ、竜族は光物が好きだと決めつけてくれたのだろうが、我はそこまで執着せんからな。友好の証に、貴様にやる」


「わぁ……ありがとうございます! この宝石ももちろん嬉しいんですけど、竜王さんのお気持ちが、すごくうれしいです!」

 久しぶりに、竜王さんに対して感情が戻った。

 そんな風に、きつく当たっていたことを気にしてくれていて、しかも絶対に貴重なものなのに……それを私に対して、友好の証とまで言ってくれた。

 遥かに格上の存在で、私なんか本当に羽虫程度の認識だっただろうに。



「ほんとに、ありがとうございます」

 これまでのキツイ修行もあってか、つい、涙がこぼれてしまった。

「ふっ……。そうか。貴様はそういう娘なのだな」

 その言葉の意味は、よく分からなかったけど……魔王さまみたいに、優しく頭を撫でてくれたのがまた、私の心を震わせた。


「さて、それではサラ。黄泉からどんな死者を呼び寄せたいのかを、しっかりイメージせい」

「えっと……たとえばどんな、ですか?」

「我ならば、無念に散った同胞だ。転生者や人間どもに対する強い憎しみと復讐を、黄泉に居てもずっと胸に秘めておる奴らよ」


 ……黄泉って、死者の国みたいな認識でいいのかな。

 私なら、何だろう。いや、ひとつすぐに浮かんだものがある。

「じゃあ、私なら……強い憤りです。私みたいな死に方をした人。不条理な事故や事件で、大好きな人にお別れも言えずに殺された人です」


「ほぅ……。サラもなかなかに、よい目をするものだな。その想いを胸に、その石の中に呼び寄せるのだ。――祈るように」

 祈り……。

 私は、私と一緒に、同じように誰かに祈れる人がいい。

 許せないだけの気持ちじゃなくて、会えなくなった大切な人のために、祈れる人。



「我に続いて、心で祝詞を詠め」

 心で……。

 私は「はい」と返事をして、目を閉じた。


「――無下に討たれし同胞よ」

 ――無下に討たれし同胞よ。

「怒り半ばの同胞よ」

 ――怒り半ばの同胞よ。


「その無念、我に集わせ我を支えよ」

 ――その無念、我に集わせ我を支えよ。

「魂持ちて力を成せ」

 ――魂持ちて力を成せ。


(なんじ)、黄泉より()ずり()よ」

 ――汝、黄泉より出ずり入よ。

 ……そこまでを詠み終えると……いつのまにか胸が、熱くなっていた。



「良い出来だ。もう、石の中に来ておるぞ」

「えっ」

 目を開けると、虹色に輝いていた宝石が、その光を中に閉じ込めたかのように、虹色を石の中心へと集束させている。

 煌きが、透明な宝石の中へと差し込んでいるみたいに見える。


「サラの魂に呼応しておるようだな。相性も良いと見える」

「こ、これ、これをどうすれば……」

 貴重な魂入りの虹石を、落としてしまわないか急に不安になった。


「慌てずとも、そこに定着しているから大丈夫だ。次は魔獣探しと行こう。好みの獣はおるか?」

「好みと言ったら……雀! あのおっきな雀ちゃんがいいです!」

 あの子を側に置けるなら、私は毎日幸せに違いない。

 きっと今、私は期待で目がキラキラしていると思う。


「雀か……あれは弱すぎる。もっと勇ましいものにせい。猫科の獣はどうだ。サラは人懐っこいものが良いのだろう?」

 心を読まれたみたいなドンピシャの指摘――。

「はい! ネコも大好きです!」

 ……そう言ったことを、少し後悔している。



 なぜなら、私が想像していた百倍は大きいし、ネコっていうか、魔猫だったから。

 すぐさま竜王さんと一緒に転移して、どこかの山脈のとんでもなく険しい場所に来たと思ったら……アレにしようと指差す方を見たらネコが居たんだけど……。


 その子が真っ白な長毛で物凄くかっこ可愛いと思ったのは遠くから見たせいであって、近くで見ると見上げるほどの、巨大なケダモノだったのよ。

「……ねこ?」


「あぁ。とびきりの上物だ。こやつを仕留めてやるから、我にしたように契約しろ。その時に石を手に持ち介すれば、憑依に至る」

 ……あ、はい。



 またもや私は、竜王さんのなさっていることを無感情の目で眺めて、ただただ言われた通りに、石を手に契約のための魔力を込めた。

 そうしたら、虹石の煌きが魔猫の遺骸に吸い込まれて、宝石が砕け散って……。


 魔猫が虹色の光の渦に包まれたと思ったら、小さく小さく集束した。

 そして、その光が人の姿っぽい感じに納まったと思ったら、光が消えた。

 かなり眩しかったので、それがちゃんと見えるまで数十秒かかったんだけど……。


「おぉ、どうだ。サラの側に置くのに、相応しい成りをしておるではないか」

 その言葉に、目が慣れてきた私もゆっくりと頷いた。

 なぜならそれは――。


 その子は、まごうことなき、とんでもなく可愛い女の子だったから。

 年は……少し発育のいい中学生か、そのくらいで。

 ぱっちりとした大きな目は、綺麗な赤色をしている。

 長くてふわふわのネコっ毛は、さっきの魔猫とおなじ真っ白。お肌も真っ白。


 ――もしかして、妖精か何かかな?

「名を付けてやれ。それでサラの従者となる」



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