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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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第二章  三十四、支えたい気持ち


「お姉様、歩けますか……?」

 ホテルの入り口前で立ち尽くす私を、シェナはそっと支えてくれた。

 ガラス扉に、私とシェナの寄り添う姿が映っている。


「うん。大丈夫……」

 ただ歩を進めることさえ、気力が必要だった。

 シェナが居なければ、その場にへたり込んでいる。


 でも、早く部屋に戻らないと、ウレインが気をかけてくるに違いない。

 そうでなくても、他のスタッフが。


「お戻りですか聖女様――大丈夫ですか?」

 案の定だった。


 ウレインは自動のガラス扉を開かせて、出迎えてくれた。

 だけど、今は答えることさえ、いちいち気を張らなくては出来ない。



「寄るな。問題ない」

 私が口を開く前に、シェナが制してくれた。


「さ、左様ですか。では、何かありましたらお声を――」

 全てを言い切る前に、察したウレインは下がってくれた。


 ……エレベーターまで、もう少し歩かなくては。

 何という体たらくだろう。

 魔王さまがお辛いのであって、私なんか関係ないのに。


 ――私なんか。

 私はお側に居ても、過去の魔王さまをお支えすることが出来ない。

 過ぎてしまったことに、私は手を差し伸べられない。


「もう少しです。お姉様」

 その声に、いつの間にかエレベーターで部屋に戻りつつあることを知った。


 とりあえず、ソファかベッドに倒れ込みたい。

 足に、力が入ってくれない。



   **



 部屋に入るなり全身の力が抜けた私を、シェナは読みきっていたかのように抱き上げてくれた。

 そのまま寝室に移ると、ベッドにそっと寝かせてくれて。


「お水をお持ちします」

 そして水を飲ませてくれて、そのまま寝かしつけられた。

 あまり考え過ぎないようにと。



 だけど、魔王さまのことを考えずにはいられない。

 私には想像も出来ないような、過酷な目に遭われていたこと。

 それでも這い上がり、魔族を率いるお立場にまでなられたこと。


 そんな過去を、微塵も感じさせないこと。

 でもやっぱり、夢にうなされておられること。

 眠れていないかもしれないこと。


 ――私には、何ひとつおっしゃってはくれないこと。

 それは、私に負担をかけないためだろうか?

 それとも、もうほとんどをご自分で乗り越えられたから?

 でも、うなされていた。


 ――こんな小娘では、何の役にも立たないと。

 そう思われているのではないかと、それについても考えてしまう。


 ――それじゃあ、商工会ギルドの会長に言われた通りだ。

 ただの愛人。

 捌け口に抱くだけの情婦。


 ――だって、それしかお役に立てていないのだから。




 そんなことをぐるぐると考え続けていると、いつの間にか眠ってしまったらしい。

 意識が戻ってきたのを感じて目を開こうかと思った時に、くちびるに柔らかいものが触れた。

 温かくて、心地良くて、甘い香りがする。


「あ。起きたぁ? あんまり寝苦しそうな顔してるからぁ、チューしちゃったぁ」

「は?」

 リズが顔を離していくところからぼんやりと見えていて、焦点が合ったころには、その言葉が聞こえた。


「こ……この人は! 人が思い悩んでるときに、何すんのよ!」

 だけどくちびるの余韻がこそばゆくて、ぺろりと舐めた。

「ふふ~ん?」

 勝った。という顔をするから腹立たしいのに、余韻のせいで怒る気になれない。


「もう。リズはそういうの、ズルいんだからね」

「でもぉ。ちょっとは元気になったでしょぉ?」

 さらに、白くて綺麗な指先で私の頬を、ぷにぷにと指す。

「…………」


「それでぇ? 魔王様のカコ、聞いちゃったんだ?」

 そのへ文字になった眉は、どういう気持ちの表れなんだろうか。


「リズは知ってたの?」

「まさかぁ? 私もシェナに初めて聞いたのよぉ」


「悲しくならない? 魔王さまが、どれだけお辛い思いをされたのかって」

「そりゃあ、ちょっとくらいはねぇ。でもぉ、今は、あなたが居るからいいんじゃない?」

 その存在意義を、悩んでいるのに。


「わかんないのぉ?」

「わかんない」

 だと思って、キスしたのに。と言う。



「意味わかんないんだけど」

「えっ? 元気になったじゃない」


「……キスしろって、こと?」

 リズは大きく息を吸ったかと思うと、大きなため息で落胆した。


「ほんとおバカさんよねぇ……。愛情を捧げなさい、って言ってるのよ。私たちにはそれしか出来ないし……昔のことなんて誰にも、どうにも出来ないでしょうが」

 それに――、と。



「愛情を一番近くで捧げられるのは、あなただけなのよ? サラ」

 そう言われると、なんだか急に、自分がトクベツなもののように思えた。


「私だけ……」

「分かったら、今夜もい~っぱい、抱かれてくるのねぇ」


 さっきまで、自分はただの情婦のようだと思っていたのに。

 妻として、誰にも負けない愛情を注げばいいのかなと、そう思えるようになった。




「おもしろい!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの!」

  

 と思ったら

  

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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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