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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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第二章  八


   **



「お帰りなさいませ。お姉様」

 部屋に戻ると、シェナは駆け寄るように私の前まで来て、そして一歩退いた。


「……お茶をお淹れしますね」

 沈んだ私の顔を見て、察されてしまったらしい。


 取り繕えなかった。

 ショックが、この部屋に戻るまでの一歩ごとに膨らんで、胸が張り裂けそうだった。


 私が思っていた以上に、何か深刻なことがあったのだろう。

 そう易々と、人に語れないような出来事が。



 蒸し返さない方がいいことだってある。

 私だって、いじめられていた時のことを語ってくれと言われても、気が乗らない。

 乗らないどころではなくて、私にとっては思い出したくもないことだ。


 ああ、そうだった、そんなことがあったんだった。

 それを思い出すだけで、未だに涙も零れる。

 悔しいし、色んなことが連なって思い出されて、あの頃の感情が蘇ってしまう。



 ……それでも平気で居られるのは、今が幸せだからだけど、すぐには立ち直れない。

 少しは時間が必要だし、落ち込んでいる間は今みたいに、シェナに気遣わせてしまう。


 さっきのショックだった反動と、今は自分の過去を思い出したフラッシュバックで、もうしばらく、さらに時間が必要になってしまった。



「シェナ……」

 弱々しく呼ぶと、お湯を沸かすのを止めて私の側に来てくれた。

 呼んだだけで何も言わないでいると、私の手を引いてベッドの縁に座らせてくれて、それから抱きしめてくれた。


 言葉はない。


 けれど、その温もりが全てだった。

 全力で私を支えてくれるシェナの、精一杯の愛情と優しさ。


「ありがとう……」

 魔王さまを支えて差し上げたいのに、この体たらくだけど。

 甘えさせてくれる人に、目一杯頼って……そうしたらまた頑張るから。



 ――そう思っていると、少し元気になった気がして顔を上げた。

 私の取り柄は、わりと現金なところだ。

 魔族に転生してから、切り替えだけは早くなったと思う。


「……本当に、お姉様はお強いですね。では、さすがにお洋服にお着替えください」

 心が繋がっているからか、シェナの対応の切り替えの早さは、私譲りなのかもしれない。


「もう。もうちょっとくらい甘えさせてよ」

「ダメです。いつもそんな格好でウロウロなさって。は、破廉恥です」



 恥じらいは、持っているつもりだけど……。

 シェナにそう言われると、もしかすると、だんだん薄れてはいないだろうかと不安になる。


 だから一応、黒のマントを羽織って出て行ったのにと確認すると、やっぱりちゃんと全部覆っていたから安心した。

「ちゃんと見えてないから、大丈夫よ」


「いいえ。お手を取った時、スケスケのネグリジェが丸見えでした」

「えっ……?」

 ということは、マントから手を出した時は大体見えていた、ということかしら。



 大至急、記憶を総動員して部屋を出てからのことを思い出す。

 管理室の扉を開いた時は……マント越しだった。


 オレンジジュースを飲んだ時は……気を付けていてもう片方の手で纏わせていた。

 肩口まで腕は見えただろうけど。

 じゃあ、もう大丈夫――。



 けれどはたと、ファル爺が目を逸らした時のことを思い出した。

 机を、叩いた時……。

 私はマントから、両手を出していたような気がする。



「――シェナぁ」

「ほら言った側から、丸見せで歩いてらしたんでしょう」


「ちがくてぇ。でも、爺に見られたかもぉ……」

「はぁ。次からは、起きたらすぐにお着替えください。いつも着せようとすると、まだ眠りたいからとお聞きにならないから……」

「う~……だってぇ」

「言い訳ご無用です――」



 ――このあと、珍しくシェナのお説教がしばらく続いた。

 


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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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