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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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第二章  一、気ままな暮らし


 ここ最近の、いつもと変わらない朝。

 平穏で平和で、隣には旦那さまが居る。


 私が寝顔を見つめたいのに、見つめられているのはいつも私。

 ものすごく恥ずかしいのと、とてもこそばゆくて、嬉しい気持ちが半分ずつある。



「おはようございます。魔王さま」

 どんなに取り繕ってすました顔で言っても、ついほんの今まで、寝顔を見られているというのに。


「おはよう、サラ。と言っても、もう昼前だが」

「ええええええ! どーしていつも起こしてくれないんですか、もう」

 一気に目が覚めた。


 特にやらなくてはいけないことも無いけども。

 一日の何分の一かを、無駄にしたような気になってしまう。



「何度もキスして起こしてみたんだがな。起きないから抱いていた」

「だっ……? だいて?」

 ――どっ……どっちの意味だろう?

 確認のために、こっそりと股の方へと手を伸ばす。


「お前はいつも、そういうことをして欲しいのだろう? 俺を誘うのが上手いじゃないか」

「ちっ、ちちちちちがいますよっ?」

 もう顔まっ赤。


 ただ、今回は何もされていなかったけども、割といい確率で本当に寝ていてもされていることが往々にしてあるから、私の反応は間違っていない。



「それで? いいのか? だめなのか?」

 で、結局はこうなってしまう。

 私は……断れるわけもなく、そして求められたら、うれしくなってしまうから、拒むことはまずない。


「…………ご、ご存知のはずですよね」

 こういう時の魔王さまは、とんでもなくドSでいじわるを言う。

「はて。俺は無理矢理などしないからな。返事を何かでしてもらわねば」



 ニヤといじわるに笑む顔は、それはそれでそそられるものがあるけれど……いつも、目を閉じて私は誤魔化す。

 自分から求めるなんて、恥ずかしくて死ぬ。


「まぁ、今日もそれで許してやるが……その分、手加減せんぞ」

 いつでもそんなのしないくせに――。



  **



 くらくらしている頭で、シェナが運んでくれた遅めのお昼ごはんを、ベッドで食べる。


 病院のようだな、なんて思ったけれど、それとは違って優雅な雰囲気のこの部屋では、ホテル暮らしのようだと思うのが自然かもしれない。

 巨人が造ったような、とても高い天井は寝室に不向きではと思っていたのに、慣れたせいか、むしろその方が開放的かつ、落ち着ける。


 そして、少しのお昼寝をして午後を大きく回った頃に、私の一日が始まる。



「……私って、魔王妃的な仕事って、何もないのかしら」

 たまには、そういう真面目なことを考えたりもする。

 まだ一歩も、ベッドから出ていないけれど。


 するとシェナが、「ここに在られるだけで、皆が満足しておりますので」と答えた。

「どゆこと?」

 このまま行けば、私はベッドでほとんどを過ごして、シャワーくらいしかベッドから出ない人生に終わってしまいそうだよ?



「皆さんが有能なので、もう一人でも有能な人が増えると、皆の仕事が減ってしまいますから」

「……意味わかんない」

 でも、本当のところは、私は魔王さまに抱かれるのが仕事なのかなと、そう思うことがある。



 私がここに来てから、魔王さまの機嫌がすこぶる良いのだとか。

 女神の封印から、復活出来た嬉しさからではないかと聞いてみたのだけど、どうも、そういうわけではないらしい。


 なぜなら、私が王都で帰りが遅い時に限って、魔王さまの機嫌がそれはもう、ピリついていて話かけるのが不可能なほど、らしかったから。

 私を王都に放り込んだのは、魔王さまだった気がするけど……。


 最近になって、その話をお爺さんからも、他のお城勤めの人たちからも聞いた。

 そうなると、私もそれなりに責任重大だ。


 といっても……こんなに怠惰な生活をして、大好きな人に抱かれるだけで良いなんて。

 ――天国?

 ここは、天国だったのかもしれない。



「お姉様、お顔がふにゃふにゃになっていますよ」

 とろけた顔をしていたらしい。


「え~っと、うん……そうね。気の抜けた顔してたかも」

 どうということのない会話。


 危険を知らせる言葉でもなければ、重い命令でもない。

 シェナも真顔ではあるけど、どちらかと言うと気の抜けた微笑みに近い。

 そんなシェナが可愛くって、抱きしめたくなって両手を広げた。



「……お姉様、うれしいのですが」

 そう言いながら顔を少しだけ背けて、その小ぶりな鼻をつまむ。


「あ……くちゃい?」

 遠慮気味に頷くシェナは、少し顔を赤らめている。


 ――あれ、もしかして……色々と知識が増えた?

 イチャイチャという言葉に、キスと頬ずりの意味しか知らなかったシェナが……。

「ご、ごめん……すぐシャワー浴びてくるね」



  **



 シェナは一体、そういう情報を誰に教わったのか。

 いや、もしかしてタイミング悪く見てしまった?

 でも、さすがに扉が開いたら私か魔王さまが気付く……はず。


 もしかしてもしかすると、ニオイに違和感を覚えてて、お爺さん辺りに質問したのかもしれない。

 ……あぁ、どちらにしても、配慮が足りなかった。


 でも、死んだ時の年齢はともかく、黄泉で過ごした時間も合わせれば私よりも年上ではあるだろうし……。



 駄目だ。言い訳考えてちゃダメだ。

 あとでシェナに謝ろう。


 でも――。

 何て言って謝ろう?

 とりあえず、色々と知ってしまったのかどうかを、聞いてから考えるか……。




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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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