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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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三十四、ほんとの休養(一)


 魔族領――。

 これは元々、新しい神々の造った人間が暮らしていた。

 けれど、扱いきれない力で人が住めない地へと変貌させ、放棄した土地。

 それを見かねた原初の女神が、眷属に命じて浄化させている。


 その眷属というのが、人々に魔族と呼ばれている種族。

 瘴気満ちる大地に街を築き、国を造った。


 それらはすべて、人の数倍はあろう巨人が造ったかのような、大きな建造物ばかりが並ぶ。

 城壁もまさしく、強大で強固な厚みを持ち、その中に築いた城もまた、巨大で頑強。

 街の外縁の、転移用に開いた大広場から、城壁と城まで一直線に伸びる街道も広い。


 ただし、一応は城に近付くほど狭くなっており、攻め込まれた時に詰まるように出来ている。

 ――魔族に勝てる人間が、居るならば。

 という前提を覆せる者達がいないため、ただ圧巻の展望というだけではあるけれど。




 ……その街並みを、改めて自分の足で歩いて、ゆっくりと眺めながら、大広場からお城へと進む。

 建物たちは、白を基調にしているけれど、光の加減で虹色に映る。

 まるで、街全体に虹が溶け込んだみたいに綺麗で、ずっと眺めていられる。


 大通りを境に、二つの虹が伸びる景観は、大広場からずっと続く。

 それが夕方になると、ほとんどが赤色になる中でうっすらと他の七色が合わさってまた、胸をくすぐるのだ。

 この一日が熱を帯びた情景で映え渡って、そしてまた明日に、七色で迎えてくれるのだと期待が膨らむから。


 そんな夕焼け空と赤虹の広がる街を、シェナと二人分のお小遣いをポケットに、二人して町娘の格好で色々なお店を見て回っている。

 夕食の買い出しをする人たち、仕事上がりの人たちで賑やかな、とても温かい街並みの中を。




 ――騎士団長と勇者たちに挑まれてから、数日が過ぎていた。

 ようやく、もやもやとした気持ちも治まって、彼らの話も聞いて、つくづく人間と関わるのは最小限にしようと、そう思った。


「ねぇ、シェナ。私の治癒の力は、何のためにあるんだと思う?」

 魔族には、再生という能力があるのでケガとは無縁だから。

 腕を落とされようと、瞬く間に再生する。


 魔力の少ない人なんて、魔族には居ないから。

 そもそも、魔族というのは人間が付けた呼び名であって、原初の神々の眷属だから、神族とかそういう呼び名の方が正しいはずだし。


「神々の御威光を、愚かな人間どもに示すためではないですか?」

 シェナは平気で、愚かな人間ども、と言う。

 元人間の私としては、少しばかり心苦しいのだけど。



「御威光……示したあとは、どうしたらいいのかな」

 導く、なんてまっぴらごめんだ。

 王政でさえ、権謀渦巻く気持ちの悪い世界なのに。


 民主主義も、王政も、優れた人格者かつ有能な為政者が揃っていないと、滅茶苦茶になる。

 それは前世のニュースで見てきたから。

 正直に言えば、ほんとはよく分かっていないのだけど……あまり幸せなニュースを見たことがない。


 でも、この魔族領は違う。

 皆たくましくて、皆が大人だ。

 人が嫌がることをしない。

 妬みもなければ、誤解もないようにきちんと話をする。



 魔王さまがどんな政治をしているのかは知らないけど……きっと、一人負担のかかるようなものではないのだと思う。

 実際、三十年の間を封印されて行方不明でも、この国はしっかりと安定していたみたいだし、魔王さまが復活したことを心から祝っていた。


「はぁ……まるで天国みたい」

「天国、ですか?」

 シェナは周りの大きな建物を見上げて、そしてまた私を見た。

 住まう人々は普通のサイズだから、違和感をそうだと言ったように聞いたのだろうか。


「そう。だって、皆いい人だし。ここなら悩みごとも……なくはないけど、前向きに考えられる雰囲気だもの」

「フフッ。そうですね。お姉様のおっしゃる通りです」

 私の言っていることは、本当に通じたのかな?


 もしかしたら……この可愛い妹は、恨みを晴らす相手がいなくて、むしろ辛いだろうか。

「ね。正直に答えて? シェナは、人間を懲らしめる方が楽しい?」

 もしもそうだと言ったら、やっぱり少しは、人間の国に顔を出そう。

 私の都合で黄泉の国から召喚したのだから、シェナの気持ちにも応えたい。



「そうですね……。最初は、それが一番楽しいのだと思いました。けど……」

「けど?」

 もしかして、もっと戦いたいとか?

 大山脈の主、白天の王でもあるものね。


「今は、こうしてお姉様と、穏やかに過ごすのも好きです。醜い人間を見ていると、潰してやりたくなりますが……たしかにこの国は、ずっと心が穏やかでいられますね」

「そうなんだ! そっか。そっかぁ……」


 よかった。

 シェナにとっても、ここは幸せを感じられる場所なんだ。

 そう思うと、もっと幸せな気持ちになった。

 この平穏に、私だけが舞い上がっているわけじゃなかったから。


 途中で串肉を買ってベンチで食べたり、肉包みのもちもちパンを二人で分けたりしながら、お腹いっぱいになってお城に帰った。

 日が落ちてしまったので、星々のきらめきを眺めながら。






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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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