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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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二十九、夜風に吹かれたかったのに


 醜く太った貴族の目から、反抗的な野心が消えた。

 喉を潰していたけれど、本気で降参すれば目で分かる。

 私をいじめていた同級生は、それでもいじめを止めなかったけれどね。

 ――あぁ、また嫌なことを思い出してしまった。


「ど……ドラゴンフェイス。きさま……この治癒の力、聖女だろう。いやいや、まままままて! 誰にも言わん! その力でバレるだろうと、教えてやろうと思っただけだ! こ、こんな目にあわされて……誰が歯向かおうなどと思うものか……」

 彼を壁際まで追い詰めた後、心が折れるまでそこで時間を費やしていた。


「あら。少しは改心したの? 今だけ、というのもよくある話だけど。正体については、そう思ってくれている方がありがたいわね。聖女ちゃん可愛いしねぇ?」

 やっぱり、剣では気付かれていないから、認識阻害はかなり優秀らしい。

 パンツが見えやすいとか、お胸が見えやすいとか、そういうのはたぶんこれなら……大丈夫だと思う。


「と、とぼけているつもりか? 転生者にはいまいちわからんかもしれんが、聖女の力を持つ者が、同じ時代に二人現れることはないのだ。だから、我々には絶対と言い切れる。いずれその正体、出回ることになるぞ」

「ふふ。それで全然構わないわ。私はね? でも、聖女ちゃんに恨みはないから正直に言うけど、私が使っているのは幻覚魔法よ。痛めつけて治した、という幻覚なの。ま、信じる信じないはどちらでもいい。私に害がないからね~」


 リズの魔法の話を聞いていなかったら、このウソは思いつかなかったかもしれない。

 最初に懲らしめた悪い貴族に、そこを指摘された時は焦ったけれど。咄嗟にこの言い訳を思い付いた私はかしこいと思う。



「何? これが……幻覚だと? そ、そんなもので……。いや、だが、あの痛みと恐怖は……」

「幻覚だからってバカにしないでよ。それで殺してしまうことさえ可能なんだから」


「……転生者というのは、おそろしいな。我々人間など殺し尽くすなり、支配するなり、好きにすればよかろうに」

「それで?」


「……それで、とは」

 欲にまみれた人には、そんなことも分からないのか。

 もしくは、この世界で生きる、本来の住人だからこそなのか。



「殺し尽くしたら、結局自分たちで生活しなきゃだめじゃない。だからしない。支配も同じ。こちらが国を動かすという仕事が増えるじゃない? 他の転生者は知らないけど、私はどっちもイヤ。自由に気楽に生きていたいもの。ただ、不条理なことを許せないだけ。それさえしなければ、私はもう懲らしめに来ない。約束するわ」


「……そうか。……儂も、約束する。償うために生きる。これまで酷いことをした者達には……出来得る限りの賠償も行う。だから、どうか許してくれ。もう……あれは嫌だ。あ、あれが幻覚だと? う、うそだ。いや、どちらにしても耐えられない。あれだけは……」


 解放されてホッとしていたっぽいのに、またはっきりと思い出してしまったらしい。

 酷く怯えて、手がこれでもかというくらいに震えているし……ちょっと、気が変になっているかもしれない。

 だからといって、容赦していい人ではない。



「許しはしないって言ったでしょ。ま、分かってもらえたみたいだし、今日は帰るわね」

 もしまた、誰かに酷いことをしたら……自分も残酷なことをされる側に居るのだと、もっと深く刻み込んでやる。


 ――って、まるで私が悪人みたい。

 あんまり、連続でこういうことをするのは……私も疲れるのね。

 正直に言って、向いていない。

 魔族だから、人よりも強いというだけで。

 治癒を使えるから、殺さなくて済むというだけで。



  **



 いつも通り転移で帰ろうと思ったけれど、気分が晴れないので、少し歩くことにした。

 シェナは、私と違ってそれが本願のようなものだから、嬉々としているのが私には救いかもしれない。

 今歩いている商業区から、中央区の城壁まで行ったら、適当に転移で帰ろう。


 そう思って人気のない、細い路地に入ったところだった。

 聞き覚えのある声で、呼び止められたのは。



「ドラゴンフェイス。そこで止まれ」

 低い声が路地で声が響いたからか、後ろから聞こえた声の主は、前の角から現れた。

 全身に、ゴテゴテとした鎧のようなものが装着されている。


「あなたを戒めた記憶は、ないのだけれど」

 あれは騎士団長だ。

 シェナが名付けた『クソブタ一号』だ。

 でも……うっかり、聖女の私として接するわけにはいかない。



「いいや? 聖女サラ。私には貴様が聖女だと分かっている。バラされたくなければついて来い」

 ――おかしい。

 こんなに早く?

 でも、バレるバレないは、ぶっちゃけるとどうでも良かった。


 何だかんだ言っても、ドラゴンフェイスの噂も、街の人たちには義賊的に受け入れられているから。

 ただ、今のところはまだとぼけようかと迷っているうちに、相手をするのが面倒になってきた。



「今、気分が悪いから。帰りたいから通してくれる?」

 待ち伏せされている時点で、何かおかしい。

 今日の貴族を狙うと知っているのは、情報をくれた勇者くらいだから。

 ――あいつ、また裏切ったの?


「ついて来なければ、ここで始めるだけだが? お前が傷や病を癒している民どもが、巻き込まれて死にゆくだけだ」

 ……ドラゴンフェイスが私だと、本当に確信を持っているらしい。

 ――勇者め、あとで覚えてなさい。


「ふぅ……。広いところにでも行くの? 時間がかかりそうね」

 諦めてついて行くしかない。街の人たちのことを、あいつは何とも思っていないだろうから。


「貴様も飛べるらしいじゃないか。鉱山手前の荒野で、再戦といこう。分かっているだろうが、そのクソガキも連れてこい」

「この子はクソガキじゃありませーん」

 シェナのことを悪く言われると、めちゃくちゃ腹が立つのだと、今知った。

 ――許さないポイント、加算したから。


「ちっ。どうでもいいから、さっさと来い!」

 そう言うとクソブタ一号は、ゴテゴテした装備の背中部分が翼状に広がって、空へと飛んで行った。

「えー?」

 ……いや、驚くことでもなかったけれど、間近で見るとやっぱり、中世風の街並みがほとんどだから違和感しかない。


 でも、この商業区では飛ぶ車も船もあるし、かなりのハイテク世界だったのは確かだ。

 あまり来ないから、忘れていたけど……。

 そういえば、科学と魔法を融合させた科学者が……という話をしていた。


 ……他の転生者たちは、ほんとに何でもありね。

 もしも、クソブタ一号が強力な兵器を装備しているのだとしたら。

 いや、あれだけの実力差を見せつけられての再戦希望だから、何か切り札を持っているに違いない。

 ――対、転生者用の。



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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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