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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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二十七、魔王さまのセンス


 その日、魔王さまは本当に私を心配してくださって、やさしく抱きしめたまま、それ以上なにもせずに一緒に寝てくださった。

 私はもう大丈夫だし、心も落ち着いていたから、いつも通りで良かったのに。


 だけど、そういうところよね、と思って、ますます大好きになった。

 本当に大切にしてくれているから、それが嬉しくてむしろ、病み上がりだろうと抱いて欲しい。なんて思ってしまうくらいに。



  **



 次の日は王宮に行かず、魔王さまのお部屋で、魔王さまのにおいがするベッドでごろごろと過ごすことにした。

 というか、外出は控えて休みなさいと言われて。

 ある意味、初めての休日と呼べるかもしれない。

 シェナも疲れているだろうからと、同じように休みをもらって、一人で過ごしているはずだ。


「朝はつい、王都の街の人たちを治癒しに行かなきゃ、なんて思っちゃったけどね」

 聖女と呼ばれるようになって、その気になって仕事にしてるんだもの。

「一日くらいお休みしても、いいわよねぇ」

 ちゃんと休んで、頭の中も、整理し直さないといけないこともあるし。

 昨日、落ち着いてから色々と教わったことも含めて――。



  **



 ――私が病的に凹んだ原因は、主に魔力が暴走しかけていたせいだった。

 それから、大切なママとパパのことを忘れていたのは、自分の心を護るための、防御反応だったらしい。

 思い出を忘れているという状態にして、この異世界での生活に全力で慣れようと、いわば本能的なトリアージ、取捨選択が行われていたのだ。


 そうして数カ月が経ち、転生した新しい体にも馴染みかけていて、異世界にも心が慣れ始めていて、ちょうどその防御反応が薄れかけていたところに――私の願いが叶っていたという事実を知った瞬間に――事故の直前、人の優しさを見抜く力を欲しながら死んだことを思い出して……。

 その時は、ママとパパのことも考えていたものだから、その想いや記憶の全てが、直結して一気に押し寄せ過ぎてしまったのだ。



 本当にタイミングが悪い。

 ある意味、これ以上ないくらいにドンピシャで噛み合ってしまった。

 フラッシュバックのように家族の思い出がよみがえって、ママとパパが恋しくなった。


 そして、二人は私が死んでしまったことを絶対に悲しんでいるのに……自分はのうのうと、何なら楽しく充実した日々を送っていたことが、許せなくなった。

 一体どうして、忘れるなんてことが出来ていたのか。と思って、思いきり憎しみを込めて自分を責めてしまった。


 その上、体は魔力が暴走しかけていて、絶不調に陥っていて――という。

 なんという完璧で、最悪なタイミングだろう。



 あやうく心が死んでしまうところだったのよ、とリズに聞かされて、そのショックで貧血を起こしかけた。

 それとは別に――相手の強さを見抜けると思い込んでいたのに、見えていたのはおそらくは優しさ、だった件について。

 これで強さを見誤ったせいで、勇者に一撃をもらってしまったのだ。


 ……次からは、シェナに聞くことにしよう。

 あの子はどうやら、相手が自分よりも強いかどうか、推し量ることが出来ていそうだから。

 ……まぁ、優しさが見えるというのも、人を見る時の判断材料になるし、信用していいかどうかの見極めも、しやすいかもしれない。



 ――整理するべきことは、このくらいかなぁ。

 だけど……となると、第二王子と陛下は、比較的安心してお付き合いできるのね。

 逆に第一王子はLv.20くらいとか……意味が分かっていたらあの時、生かしておくべきかどうか、もっと悩んでいたと思う。とんでもない要注意人物だ。

 あれだけ酷く脅しておけば、大人しくするはずだけど……。


「ふぅ……。いっぱい考えごとをしたわ。疲れたからもっかい寝ようっと」

 まだお昼にもなっていないし、お休みは半日以上残っているから。

 ……あぁ、そうだ。


 悪い貴族を懲らしめに行くのに、変装用の衣装を考えなきゃ。

 目を隠す仮面と、服は何がいいかなぁ。

 動きやすくて、可愛いのがいい――。



  **



 ――その話は、魔王さまにもしていた。

 とにかく、可愛いのを考え中なのだと。

 そしたらこのお昼過ぎに、食堂で皆と一緒にご飯を食べて、やいのやいのと賑やかな時間を楽しんで部屋に戻ると……。


「お前に似合いそうな服を、イザリスと一緒に考えて、作らせておいた。まだ試作だがな」

 どうやら魔王さま、聖女の衣を見た時から、魔族にも良い仕立て屋が居ることを示したかったらしく……。

 その懲らしめ用の衣装が、ベッドに置かれていた。



「こんなの、いつの間に?」

 試作だというわりには、かなり意匠の凝った金の刺繍が施されている。

「サプライズというやつだ。だが、喜ぶかどうかというよりも、お前は俺のものだという事を示さなくてはならんからな」

 仰っている意味が、サプライズの後から分からなくなってしまいましたけど……。


「は、はい……」

 でも、頷くしかないよね?

 ただ、パッと見ただけで格好いいのは分かった。

 アオザイ――というのが一番近い。


 でも、あれはたしか、長袖だったような。

 真っ黒な生地でノースリリーブの、金の刺繍入り。デザインは何か分からないけど、複雑な模様で衣装を物凄く引き立てている。

 なのに……胸元はざっくりと開いているし、両サイドのスリットがたぶん、胸の辺りまで切れ込んでいる。


 それに……ズボンが……ありません。

 考案者に、リズが含まれているから……もしかするともしかしなくても……下は履かない、ということだろう。


 ――バカなの?

 よく見ると衣装の側に、メモ書きも置かれてある。

『私があげたアレ、履きなさいねぇ?』

 ――バカなの?

 あんな……あんなの履いてこんなの着たら……歩けないじゃない。



「魔王さま。私は痴女じゃないですからね? これじゃあ、丸見えみたいなもんじゃないですか」

「問題ない。これには認識阻害の魔法を織り込んであって、見ようと覗き込んでも見えないように作ってある。それをもう一段強いものにするために、まだ試作の段階、というわけだ」

 そんなに自慢げに言われても……。


 だけど、その丸見えなことを置いておくことが私に出来るならば……着てみたい。

 アオザイぽくて着たら絶対に可愛いし、刺繍とかもう、物凄く格好いいのに――。



「ちなみに、スリットの深さは気にしなくてもいい。帯剣ベルトも別に作らせてあるからな。それで留めれば完成だ」

「あ……はい」

 リズめ――。

 そして魔王さまも、リズと趣味が似ていらっしゃる?


 これもう、今更断れない感じだし。

 露出さえ気にしなければ本当に……。

 ――あぁぁぁ、もういいや。

 見えないというのを信じて、これを着て悪い貴族を懲らしめよう。



「えっと……。魔王さま、仮面はどんな感じですか?」

「ふっ。仮面など付けずとも、と言いたいが……一応、グィルテの許可も取ってあってな」

「竜王さんの許可、ですか?」

「ああ。あいつの本来の姿の、顔をイメージしたイカツイやつを作らせてある」


 かっ……可愛いやつが……。

 ――ああ!

 だから衣装も黒ベースなんだ。かなりの漆黒っぷりなのは、そういうことかぁ。

 って、納得してる場合じゃ、なーーい!


「い、いかつくない方が、うれしいですけど……」

「気にするな。どうせはっきりと見えんように施している」

「あ……はい」


 ――うん。知ってたの。

 こういうので言い出したらきかないタイプだって、知ってたのよね。

 なぜかセンスがいいだけに、拒否する気持ちも強く出てこないし……。



「おもしろい!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの!」

  

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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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