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【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


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二十六、ホームシックと、熱病と(一)


 魔王さまの側に居たい。

 たくさん甘えたい。

 でも……こんな私がお側に居て、いいわけがない。


「お姉様。魔王様の元に戻りましょう」

「だめ……お側に、いられないから」

「そんなわけないじゃないですか、何を言っているんですか。それに今の状態は、半分私のせいのようなものですから」

 ――どうして?

 シェナの言葉の意味が、分からない。


「私の強すぎる怒りが、お姉様に伝わり過ぎたからだと思います。逆に私は、心が平穏でした。その分、お姉様の負担になっていたのです」

「そんなわけ、ないじゃない。シェナが居てくれたから、私は安心して過ごせたんだから」

「お姉様……。とにかく戻ります。嫌がらないでくださいね」

 いやだと言っても……そうだった、シェナも転移を使えるから――。



  **



 魔王さまのお城に連れ戻されて、そして魔王さまに引き渡された。

 魔王さまに軽々と抱き上げられて、それが王子にされたのと同じお姫様抱っこだったのが……人間なんかに触れられたことを思い出して、死にたくなった。

 私は魔王さまのものなのに、お詫びしなくては。


「すみません……魔王さま、私――」

「何も気にするな。全て不慮のことだ。お前は悪くないから気に病むんじゃない」

 ――その言葉に甘えても、いいのだろうか。


 それでも許しを請いたくて、突き抜けるような高い天井を仰いだ。

 お城のエントランスと呼んでいいのだろうか、荘厳でとても広いホールは、巨人が造ったかのような大きさと造形物が並んで――今まで見慣れたはずのそれらにさえ、私はやっぱり、相応しくないのだと申し訳なくなる。



「えらく心が弱っているな。ホームシックみたいなものだろうが……」

「魔王様。お姉様は、ご両親のことをしばらくお忘れだったのを酷く苛まれています」

「なるほどな。ご苦労だった。後は俺が見る」

「シェナ……いかないで」

「お姉様、のちほどに。私が居ては負担になりますから、魔王さまに全てを委ねてください」

 その紅い瞳を見るのが、大好きなのに。……行ってしまった。


「サラ。お前は少し熱があるだけだ」

「ねつ……あり、ますか?」

「ああ。そろそろだと思っていた。本来なら、子どものうちにかかるものだが。お前は転生して今の体で生まれて来たからな」

 何かの流感だろうか――。


「でも、私は……自分のことが、ゆるせなくて」

「それは後で聞こう。部屋に行くぞ」



  **



 ……魔王さまは私をベッドに寝かせると、御自身はベッドサイドチェアに腰を掛けられた。  

 そしてしばらく、私の話を聞いてくれた後に、適任者を呼ぶから寝ていろ、と言って部屋を出てしまわれた。

「ひとりに――」

 しないで、なんて言えない。

 こんな薄情者に、そんな大それたことを言う権利などない。


 ……でも、追い出さずにいてくださるのは、ここに居てもいいということかもしれない。

 それに、出て行くにも……他に行くあてなんてない。

 そんな言い訳と、自責の念をぐるぐるとさせながらも、結局私は、都合のいい方になびこうとしているらしい。


 これでは、自分を責めるフリをしているだけだ。

 情けない。

 情けないと思ったら、また涙があふれてくる。これは都合よく自分を慰めるための、いやな涙なのに。

 止められない。

 ここの人たちは、優しいから。甘えてしまう。



 ……思い返せば。

 魔族の皆はとても優しくて、とてもよくしてくれた。

 物珍しいからの最初だけじゃなくて、今でも。


 夜に帰った時に通路で顔を合わせたら、私が人見知りでおずおずとしていても気さくな挨拶をくれる。

 明け方のシャワーでも、夜番明けの皆が覗こうとしつつも、私にあっち行ってと言われるまでの、じゃれ合いを楽しんでいるだけで本気ではなく……。

 とにかく、変な例えだとしても、嫌な人がいないということで。

 そして、いじわるをする人もいない。


 本当に純粋に、人への思いやりや気遣いが皆それぞれの形なのだけど、私にもちゃんと伝わるし、伝えてくれる。

 受け止めやすくて分かりやすい形を、皆が習得しているというか。

 お爺さんも、お城の何かの番の人も、食堂の人も、皆。全員がそう。



 ――それなのに、人間は……。

 軽薄で、裏切っても平気な顔をしていて、民衆をゴミだの何だのという王族もいて、権力をかさに着て悪行三昧の貴族まで揃っている。

 そういえば、ネコを虐殺しようといたぶる人間も潜んでいる。


 嫌なものばかりが目についた。

 まるで、生前の世界みたいに。

 ……だから私は忘れていて、そして今になって思い出したんだ。


 ――忘れたままでいられる方が、良かったかなぁ……。

 でも、ママとパパのことは、忘れたくない。

 それにやっぱり、私は今、幸せだよって……。

 伝えたい――。

 届かないとしても。

 想いだけでいいから、伝わってほしい。

 でないと、ママもパパも、ずっと悲しんでいるだろうから。

 そんなの、報われなさ過ぎる。

 死んでしまった事実の後、私は意外なことに、楽しく暮らしています。って、伝えたい。



 ――手紙を書こうか。

 と、咄嗟に起き上がってベッドの縁から足を下ろそうと、ちょうど座った体勢になったところで気が付いた。

 それをどうやって、異世界から届けるのだろう。

「ばかだなぁ、わたし……」

 本当に熱があるらしい。

 そんな当たり前のことさえ……。

 ――混乱しているのね。


「おひさし~、聖女ちゃん。王国で大人気じゃないのよぉ」

 ――だれ?

 誰も居なかったのに、いつの間にかベッドサイドに……ほとんど目の前に立っていた。


「やだ、泣いてるじゃないのよぉ」

 とろけるような、甘美な声色。ああ、この人は、サキュバスのお姉さん……。

 たしか、イザリスと呼ばれていた人だ。


 輝くような白い肌をこれ見よがしにというほど露出していて、つい体に目が行ってしまう。

 引き締まった足、ヒラヒラと可愛い紺のプリーツミニスカート、細くて綺麗なウエストラインが見えて、カジュアルな白のキャミソール。谷間がしっかりと見える深い切り込みの。


 そして見上げきった後の、どこか淫靡な美人顔。金髪のポニーテールと、青い目にかかる長い前髪がセクシーで……同じ女という生き物だろうかと見惚れてしまう。

 でも今日は、黒い翼と尻尾がない。

 ――隠せるのかな。他はあんまり隠さないのに……。



「ほらぁ、これで涙くらい拭きなさいな。ほれほれ」

 そう言ってふわふわの……くしゅくしゅのやわらかな布で拭ってはくれるのだけど、少し強引な感じが絶妙に、顔を押してくる。

「うっ。じ、自分でします……」


「ふふっ。それ、あーげる」

「いえ、洗ってお返ししま――……ぱんつ?」

 パッと見ただけでは、一体なんの布切れだろうかと悩むくらいに、一部を除いて全体的に細い布。

 真ん中に切れ込みのある、ぱんつ。

 ――なんてもので人の顔を……。



「フフフフフ、楽し~。男の人は皆、それで喜ぶんだけどぉ。やっぱり女の子は喜ばないかぁ。あ、それ脱ぎたてとかじゃないからぁ。たぶん?」

 ――たぶんとは?

 滅茶苦茶気になって、その短いヒラヒラのミニを覗き込んでしまった。


「アハ。見ちゃダメぇ。恥ずかしいのは恥ずかしいんだから。でも……ちゃんと履いてるわよぉ、ほら」

 絶妙にいやらしく、けれど健全でもあるようなないような、とにかく目が釘付けになるようにミニスカの横裾を指でつまんで、ゆっっっくりと上に、腰が見えるまで持ち上げていく。

 ……紐パンの結び目が――意外ときっちりと綺麗な蝶々結びが――骨盤の上辺りに掛かっている。


「めっちゃ見てるぅぅ! ウケる~」

「……もう。だって、そうじゃないですか。ぬ、脱ぎたてとか……や、ヤバいでしょ」

 あやうく反射的に、匂いを嗅ぐところだった。

 変な趣味ではなくて、もしものことなら早く顔を洗いたいから。


「うん。……ふふっ。もう泣かないで。私はこんな風にしか、茶化せないケド」

「あ……」

 イザリスさんは、引き込まれるくらいに優しく微笑んでいた。

 大きな瞳には慈悲と慈愛が込められているような、その目を細めて……まるで女神様みたいに綺麗な人の、やわらかな――。


 ――く、くちびる?


「おもしろい!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの!」

  

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 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



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