表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】聖女級の治癒力でも、魔族だとバレるのはよくないようです ~その聖女、魔族で魔王の嫁につき~  作者: 稲山 裕


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/108

二十三、安らぎ


 一旦、王宮の部屋に戻った。

 本当はすぐ魔王城に帰ろうと思ったのだけど、シェナが「お姉様だけでどうぞ」と言われたから。


「二人で、嫌な気持ちを魔王さまに聞いてもらおうよ」

 私は、イケナイことをしたのが、どうにも落ち着かなかったから。

 でも、シェナは違ったらしい。


「私はお姉様のお陰で、胸がスッとしました。またやりたいです」

 口調はいつも通り静かな物言いなのに、目はキラキラとしていた。

 お肌も、なんだかツヤツヤしている気がする。

 本当に平気そう、というよりも、ご機嫌で送り出そうとしてくれている。


「そう? 一人で寂しくない?」

「いつもみたいに明け方頃、戻ってきてくださるなら」

 アップにしていた真っ白でふわふわの銀髪を下ろして、すでに寝間着に着替えようとしながらの言葉だった。


 私に気を遣って無理をしているのでは……と、勘ぐったものの、全くそんなことではなく、普通に一人で寝ようとしている。

 いつもよりもホクホクとした雰囲気で。

「じゃ、じゃあ……行ってくるね」

「はい。おやすみなさい、お姉様」

「うん。おやすみ、シェナ」



  **



 魔王さまの寝室に転移すると、旦那さまはベッドの上で座って、窓の向こうを眺めていた。

 さっきまで遠くにいた私を、待っていたかのように見える。

 いつもより遅いから、心配をかけたのかもしれない。


「あ、あの、魔王さま。遅くなりました」

「おかえり、サラ。かまわん。……何を突っ立っている。さぁ、こっちに来い」

 そう言われると嬉しくて、その胸に飛び込みたくなった。

 ――けど、今日は色々あったのにシャワーをまだ浴びていない。


「い、いえ。先にシャワーを」

 あまり汗はかいていないと思うけど……荒野で倒されたせいで、土埃まみれだ。

「かまわんと言っている。来い」

 その口調は命令だというのに、私にとっては甘いささやきに聞こえてしまう。

 もう、頭も心も、この人によってどうにかされてしまったのだと思う。


「に、におうとか……言わないでくださいよ?」

 良いと言われても、自分自身で後ろめたくはある。

 やっぱり、ベッドには綺麗な体で入りたいから。

 そこは私にとって一番の、いわば戦場。

 いつの間にか大好きになってしまった、愛しい人に愛されるための。


 ……おずおずと聖女の衣を脱ぎ、何も纏わない姿でベッドに入る。

 魔王さまに寄り添うように座り、今日あったことを聞いてほしくて、話をしたいのですが、と許しを請う。

「そうか。聞こう」

 燭台の火が照らす魔王さまの御顔は、いつも通り彫りが深くて精悍で、灰色の髪が褐色の肌にとても似合っている。

 同じ灰の瞳に、蝋燭の光が映って揺らめいているのを見ていると、話したかったことを忘れて眺めていたくなる。



「えっと……」

 本当は、もっとたくさん、細やかに全てを聞いてほしかったのに、どうでもよくなってしまった。

 かいつまんで、勇者に裏切られたけれど撃退したことと、それを指示していた第一王子を痛めつけたことを、さっと話した。


「ふっ。また面倒なことをして、遊んでいるのだな」

 屈託のない笑顔は、私がそれなりに気構えてしたことも、些事であるように思えた。

 悪い意味ではなくて、そんなに気負わなくてもいいのだと。


「笑い事じゃなかったんですよ? でも、そうですよね。私は魔族で、人間のすることに、いちいち目くじらを立てる必要……ないんですよね」

「そういうことだ。治癒魔法を学び終えたなら、もう行かなくて良いのだしな」

 そう言われてみれば……学びたかっただけだった。

 聖女という言葉に、私も踊らされていたのかもしれない。



「……はい。でも、もう少しだけ。悪い人をこらしめるのは、クセになったかもしれません」

 考えてみれば、結局は完全に治癒するのだから、そこまで残酷なことはしていない気がする。

「そうか。ただ、転生者どもには気をつけておけ。女神の力を借り受けたやつが、まだ居るかもしれんからな」

「はい。気をつけます」

 そうだ。竜王の加護を貫通させる攻撃力を、あんなに弱そうな勇者でさえ持っていたのだから。


「……あまり理解していないようだが、まあ、いいだろう」

 ――俺がついている。

 そう言ってくれたのだと、すぐに分かった。

 くちびるを奪いに来たのは、もうその話は、俺が居るからいいだろう? という合図だから。


 この夜は、いつもより短い。

 だから後は、私もめいっぱい甘える。

 たくさん甘やかしてもらって、明日からの糧に――。



  **



 明け方、シャワーを浴びて王宮に戻ると、部屋ではまだ、気持ちよさそうにシェナが眠っていた。

 この子をずっと撫でていても元気がもらえるけど、魔王さまとの後では、少し気が引ける。

 純粋なシェナに、あれやこれやと甘えてきたこの手で、触れても良いものかと。

 それから、時折、私に近付いてくんくんと匂いを嗅いでいるから、それも気になっている。

 シャワーでは落ちない匂いでも、ついているのかしらと。


「スー」

 と、手の平を鼻に近付けて匂いを嗅いでみる。

「わからないわね……」

 石鹸の香り。

 それしかしないと思うのだけど。

 本人に聞いてみるのが一番早いのに、それはそれで、聞きづらい。


 ――そんなことを毎朝のように悩みながら、シェナの隣に潜り込んで、二度寝をする。

 これがまた、とても心地良くて。

 私にとってはこの夜と朝が、最高に贅沢な時間で、一番の安らぎを覚える。



「……おねえさま、おかえりなさい」

 いつも必ず、寝ぼけたままの微かな声で、ささやくように迎えてくれる可愛い子。

 うっすらとだけ開いて見える赤い瞳もうつろで、もう少し眺めていたいのに、すぐに閉じてしまう。


「ただいま、シェナ」

 そうして二人で、もうひと時を眠る。

 ――最高の時間だ。



「おもしろい!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの!」

  

 と思ったら

  

 下にある☆☆☆☆☆から、作品を応援していただけると嬉しいです。

 面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直な感想で大丈夫です!


<ブックマーク>も頂けるとさらに喜びます。


 何卒よろしくお願い致します。  作者: 稲山 裕



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ